17 テレポーテーション
「なんだって! なんでもたべちゃうゴンのお腹の中に入るだって?」
弘左衛門が大声で叫ぶ。
「そ、そんな、むちゃくちゃじゃよ!」
「ふーむ、それも一考かもしれんな」
シュレーディンガーが悠然と答える。次の瞬間、自在猫の姿がチカチカと瞬く。
「で、どうやって中に入ろうっていうんだい?」
「キミのテレポーテーション能力を使おうと思うんだ」
小さな男の子が答える。
「キミがテレポーテーションをするときの存在確率波の幅を少し広げてもらい、そこにボクたちの存在確率を重ね合わせるのさ」
シュレーディンガーのテレポーテーション能力は、男の子の言葉通り、自分が存在する、つまり、そこにあるという確率を量子論的にマクロに反映させたものだ。たとえば、原子のように極めて小さい領域に押し込められた電子は、ある一定の場所に留まっていることができない。少し難しい言葉で言えば、それではハイゼンベルグの不確定性関係に違反してしまうからだ。だから電子は――もちろん電子にとって非常に居心地のよい部分はあるのだが――原子のまわりに、まるで雲のように広がって存在することになる。そして、その雲の形=エネルギー分布は外から何らかのエネルギーが加えられると変形する。それを、電子のような小さいものではなく、もっと大きなもの、たとえば猫の大きさに応用した技術が、一言で説明したシュレーディンガーのテレポーテーション能力なのだ。
「よし、キミのいうことはわかった」
と、ついにシュレーディンガーが男の子に答える。
けれども男の子たち一行が、なんでもたべちゃうゴンのお腹の中に入るその前に想像することさえも恐ろしい光景が展開される。




