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16 絶望

 アルシア国大統領とのホットライン会見を終え、部屋から出てきた日本国首相の顔は、青さを通り越してまっ白に変わっている。

「だめだ! 彼らは受け入れてくれなかった。すでに核ミサイルは発射されてしまった。数分後にはトキオに核ミサイルの雨が降るぞ!」

 やっとのことで、それだけを呟くと首相が秘書の身体に倒れかかる。

「警報を発令している暇がない。住民たちを避難させる術がない。むろん、われわれだって逃げることができない!」

 絶望的に、そうつけ加える。

 首相のその言葉に、それまで彼を支えていた秘書の顔がまっ青に変わる。とたんに膝がガクガクしはじめる。おもむろに家にいる幼い息子の顔を思いだす。妻を娘を家族全員の顔と言葉が順に頭の中に浮かび上がる。

「そ、そんな!」

 とついに泣き叫ぶ。

「だが、それが事実なのだよ」

 なんとか姿勢を立て直すと威厳のある声で首相が言う。

「たぶん彼らは自分たちのレーザー兵器が役に立たなかったことに腹を立てているんだろう。たぶん、たぶんな……」

「しかし、それにしても……」

 秘書の後の言葉が鳴咽の中に飲み込まれる。

「もう、われわれにできることは何もない。運を天に任せて祈るのみだ!」

 最後に首相がそう呟く。


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