165話
このままだとさらちゃん――――になっちゃう。
今からおよそ200年前。
私はこのダンジョンの女王になった。
私は自分の年齢が解らないけれど。
一番古い記憶だと知らない子供が私の中を覗いた。
そして気が付いたら今の私になっていたんだ。
それまでは余り、考えていなくて。
空洞を満たすためだけに何か意味のある物をなるべく取り込んでいた気がする。
色々な要素を取り入れていく内に。
私の中で自我が目覚めたんだ。
どうやらこの形をしたモノはミミックと言うらしい。
私は『私』を認識した。
恐らくソレまでもかなりの時間が経過していたとは思うけど。
それまでは何も気にしていなかったから良く解らなかったんだ。
誰かが空っぽの私を覗く度に私の中の何かが徐々に形成されていった。
そのうちに形を作り何時の間にか土台が出来た。
「あああああ」
声の出し方は何時の間にか知っていた。
何度も試していくうちに上手になっていく。
「あああああん」
「…………あん?」
色々と経験したら知識というものがどれだけ有用なのか気が付いた。
「ちしきはすごくてとってもおいしい」
それらの使い方も知った。
そして『私は』強くなっていった。
唯の空洞は物が満たされ部屋となった。
箱の中身は誰かが覗く度に満たされていく。
更に求めた。
その頃は加減を知らなかったから。すごく強欲だったと思う。
年月と共に知識は知恵となり経験は感情を育んだ。
何時しか私は限りなく人に近しいミミックに変化した。
今思えば初めは唯の意思だった。
そして好奇心からか隣の箱を摸したのだと思う。
やがて擬態は本物になった。
私の中身は満たされて満足した。
でも気が付くとただの箱になっていた。
中身は誰かに奪われた。
でもその代わりに何かが生まれた。
その変化からの進化。
長い年月の中、進化は繰り返された。
進化の先に誰かがいた。
それは、人間の子の様な姿をしていて。
とても可愛くて、暖かそうな。
純粋そうで。儚いもの。
手を動かすとその子の手も動いた。
そう。その子供は私だったんだ。
あぁ。やっといま。
私。生まれたんだ。
自分自身に出会えた。
求めていた姿になれたんだと。
「あはははは……」
私の場合は。
そのラインで満足した。
真っさらにリセットした。
そして私の奥行きが決まった。
そのラインと奥行き。
さらちゃんはそれを私より先へと伸ばした。
力なき者は存在すら亡き者。
最低限の強さは求められてしまう。
そんな場所は力こそが全てのある意味楽園で――――――――
選べるものは覚悟のみ。
間違いなく行き着く先は終着点。
そんなにもう進めるコマは無い。
一方通行なラストステージでの一歩一歩の歩みはとても高く重い。
才能なんて言葉だけで無く。
運命に選ばれしもの。
私と終着点の間にはそんな概念しか存在しない。
魔王とか、勇者とか、無や混沌そのものとか。
それは生き物のしあわせからかけ離れたただの存在。
そんなモノになってはいけない。
もうここで止めないと。
絶対に――――――アレを使ってでも。




