153話
何かが臭った気がした。
「くま…………まさかキミなの?」
「……………………いえいえ」
えも言われぬ臭い。
あの卵の腐った奴ー。
って例えで言うけど腐った卵の臭いなんて知らないにも程があるわたくし。
まぁ場所が場所だからそういうのも有るだろうね。
ねぇー「くm…………」
ザワッとした。
先程までくまが居た所に別の何者かがいる。
そして審判であるくまはいない。
しかも私は視られていた。
見えない筈なのに。
しかし数秒。
私を視ているだけで何もしてこないと思ったのもつかの間…………
……黒い唯の靄なんだけど中から手がニュッって伸びてきた。
掴まれた。
わ。って思ったときにはもう遅かった。
私は掴まれた腕を引っ張られ腕力が強い敵にブンブンと廻して投げられた。
遠心力とか平衡感覚とかの影響で私は目を回しながら「ふへぇ」という声と共に岩壁に投げつけられる。
受け身が上手く取れなかった私は頭を触るとダラダラに血が出ていた。
その血を見た瞬間私の中で何かが繋がった。
『パチン…………ザーザー。ピコン……………………』
平衡感覚とは何だろう?
とかフラフラな私は考える―――――――
――あれ?
実況編集。
ボタンが押されている?
『おわわわわわわー』『うは久々…………』『ほへぇー此処何処だぁー』『みんなみてるー?』『マジかよ。どれ位振りだ』
『拡散拡散。。』『さらっちどこだー』『何あの黒っぽいの……』『此処何処の火山ステージだよ』
ありゃりゃ?
ええと、平衡感覚とはなんだっけ?
フラフラする私は現状を理解出来ていなかった。
『何コノ地獄……』『溶岩見えるんすケド触ってみたい』『絵面凄いなー』『これがトミエクマ?』
『俺の知っているトミーじゃない』『オープンからしてるけどこんな場所知らないゾ?』
『別ゲーじゃない?』『さらっちどこー』『ままー』
……不味っ。
何時の間にか実況になってる!
っじゃ無くて敵っ!
黒い靄を探す私。
うん、距離ある。大丈夫っ!
って思っていたら移動は瞬間移動のような感じで近づいて来た。
と、兎に角! 魔法。うし。
「根源より生まれた唯一の始まりセフィロトから重ね合う創造四原種の理よ、今此処に姿を形成し表現せよ。エアカッター」
久々に魔法を唱える私。
上級までは習得したけど応用を利かせられる程に使い慣れていない。
とりあえず私の放つ魔法エアカッターは黒い靄へと向かう。
透明色のこの魔法。避けるのは多分無理。
魔法を唱えた私はすかさず距離を詰めるべく前へステップからのダッシュを織り交ぜて進んだ。
そしてエアカッターは無残にも対象を切り刻む。
獲物を見つけたエアカッターは幾度となく執拗に薙ぎ払われた。
……数秒後、黒い靄は消え去った。
「よしっ!」
私は腕を少し上げてグーで握った。
しかしその腕を再び誰かに掴まれてまた誰かに廻されている。
……そして二度目の…………とはいかない。
私の平衡さん舐めるなああああ!
「根源より生まれた唯一の始まりセフィロトから重ね合う創造四原種の理よ、今此処に姿を形成し表現せよ。ファイアボール」
振り投げられながら高火力のファイアボールを詠唱即時発動!
反動により敵へと突っ込む私。
……腕が見えた。
でも腕しか見えない。そんなら良いよ!
腰に差していたメインウエポンの木刀での突き。
勢い任せの攻撃で見えている腕に身体の重心ごとぶつかった。




