第5話 快適すぎる自動運転と、怒涛の帰り便3積載!
差し込む朝日と、24℃に保たれた快適なエアコンの風で心地よく目覚めたワタル。
システムキッチンの魔法の蛇口で顔を洗い、車内自販機で買ったアツアツの緑茶を飲んで一息つくと、グラン・キャビンを走らせて交易都市オアシスの冒険者ギルド支部へと向かった。
ギルドの駐車場に巨大な純白の車体を停め、石造りのギルド建物内へ。
朝の清々しい空気の中、受付窓口へ向かったワタルは、受付員へ爽やかに声をかけた。
「おはよう、受付さん! 昨日はありがとな。……ところで、俺はこれから拠点のある『港町ファルム』へ帰るんだが、あっち方面への『帰り便』の荷物、何か出てなか?」
「えっ……!? か、帰り便ですか!?」
受付員は驚いたように目を丸くした。
「物流の基本だからな。行きに荷物を運んで、復路を空荷で走らせるなんて一番もったいないだろ?
なんか運んでほしい物があれば、まとめて引き受けるぜ」
「あ、ありがとうございます!実はファルム宛ての配送依頼が溜まっていて、運び手がなくて本当に困っていたところなんです……!依頼は全部で3件あるんですが.....」
受付員は急いで手元の書類をめくり、カウンターの上に3枚の依頼書を並べた。
「1つ目は、昨日納品していただいた件でオアシス領主様から届いた『ファルムギルド幹部宛てのお礼の特産酒と親書』!
2つ目は、ファルムの高級料亭宛ての『極上ドライフルーツとスパイス』!
非常に湿気に弱く、砂漠の熱気で傷みやすい品です。
そして3つ目が、ファルムの大型武具工房宛ての『重量級・熱帯魔石』!
かなり重く、衝撃を与えると割れてしまう可能性があるため誰も引き受け手がいなかったのです……!」
「重さと繊細さなら、俺の『ウーバー・コンテナ』の独壇場だ。よし、その3件、まとめて全部俺が引き受けるぜ!」
「えぇぇっ!? 3件まとめて混載(積み合わせ)ですか!?」
ギルドの保管庫から運び出された大量の荷物を前に、ワタルはグラン・キャビンの側面ハッチを開いた。
『絶対空間の配達鞄 ウーバー・コンテナ』の操作パネルで、手際よく区画ごとに温度と防振を設定していく。
・区画①(特産酒&親書): 常温・防振モード
・区画②(ドライフルーツ&スパイス): 低湿度・15℃保持モード
・区画③(重量級・熱帯魔石): 超強力防振バリア(衝撃吸収率99.8%)モード
手際よく3つの荷物を格納し、ガチリとハッチをロックするワタル。
居合わせた冒険者や職員たちは、「あんな大荷物を一瞬で積み込んだぞ……」「酒と魔石を一緒に積んで大
丈夫なのか!?」と呆気にとられて見送るのだった。
オアシスの街を出発したグラン・キャビン。
ワタルは運転席のコントロールパネルに指を滑らせた。
『目的地:港町ファルム・冒険者ギルド前』
『ナビゲーション:自動運転モードON』
――ウィーン。
重厚なシステム音が響き、ステアリングが自動でスムーズに回転を始める。
車体が砂漠の街道を滑らかに走り出したのを確認すると、ワタルは満足げにうなずいた。
「よしっ!行きは憧れの手動運転をたっぷり満喫したからな。帰りは楽しみにしていた全自動運転に任せるとするか!」
ワタルはハンドルから手を離し、後部の広々とした居住スペースへ。
前世の狭いボロアパートや過酷なバイク配送では考えられない「走る高級ホテル」での移動時間を満喫し始めた。
まずは、ガラス張りの専用シャワーブースへ入り、温かいお湯をたっぷり浴びて汗を流した。
「ふぅ〜〜〜っ! 移動しながら温水シャワーを浴びられるなんて、マジで天国だな……!」
さっぱりしたスウェット姿に着替えると、車内自販機で100G硬貨を放り込み、冷えた『缶コーヒーBOZZ』を取り出した。
ふかふかの高級革張りソファに深く腰掛け、プルタブを開けてコーヒーを口に含む。
窓の外は、相変わらず40度を超える狂乱の灼熱とゴツゴツした砂漠の悪路。
しかし、24℃に保たれた車内には微振動すら伝わらず、ワタルはゆったりと異世界の地図やギルド資料を読み進めるのだった。
グラン・キャビンが、岩山に囲まれた砂漠の危険地帯へと差し掛かった時のことだった。
前方の街道を埋め尽くすように、巨大な砂漠の魔物――『サンド・ワーム』や、甲殻をギラつかせた『大サソリ』の群れ数十体がのたうち回り、立ち塞がっていた。普通のアタッチメント馬車なら一瞬で噛み砕かれる地獄絵図だ。
だが、グラン・キャビンの自動運転システムは動じない。
『前方障害物(魔物群)を検知。回避不能と判断――自動防護障壁(突撃モード)を展開します』
――ボォォォンッ!!
純白の車体表面に、青く輝く重厚な魔導バリアがオーバーレイされる。
グラン・キャビンは減速するどころか、超重量ボディの重厚なトルクを響かせ、まっすぐに魔物の群れへと加速突進した!
――ドゴォォォォン!!!
――バキバキバキッ! ガシャーンッ!!
猛スピードで突っ込んだグラン・キャビンは、巨体のサンド・ワームも大サソリも、まるで大型ダンプカーが熟したトマトを踏み潰すかのように、一瞬で弾き飛ばし、叩き潰し、粉砕破砕していった!
そして、強力な防振魔法バリアに守られた車内――
。
ソファで缶コーヒーを飲んでいたワタルは、外で何かが弾けたような微かな音を感じて、チラリと窓の外を見た。
「ん……? 今、外でなんか『プチッ』て弾けたか……? まあ、跳ね石でも当たったか」
コーヒーをもう一口コクりと飲んだ、その瞬間。
ワタルの視界の端で、システム画面がピコンピコンと派手に黄金色の光を放ち始めた!
『警告:多数の危険魔物群を撃破・破砕しました』
『大量の戦闘経験値を獲得――』
『ドライバーレベルが上がりました! 【Driver Lv.10 → Lv.12】』
『ステータス上昇:最大魔導ストレージ容量拡大、車両装甲強化』
「ぐはっ!? げほっ、げほっ……!!」
ワタルは思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
「えぇぇぇ――っ!? 俺、ただソファで冷たい缶コーヒー飲んでただけだぞ!?なんで魔物を壊滅させてレベル上がってんだよ!!? 自動防護突撃、恐ろしすぎるだろ……!!
何もしなくても車が勝手に敵を蹴散らし、勝手に経験値が入ってくるあまりの超展開に、ワタルは車内で大爆笑するのだった。
夕焼けの赤と紫が美しく混ざり合う頃。
グラン・キャビンは一の狂いもなく、目的地の『港町ファルム・冒険者ギルド前』へと滑り込むように到着した。
スライドドアが開き、スウェットからいつものプロテクター姿に着替えたワタルが降り立つ。
ギルドの入口にいた受付のエレナや冒険者たちが、驚愕の声を上げた。
「えええっ!? ワタルさん!? 昨日オアシスへ向けて出発したばかりですよね!? もう戻ってきたんですか!?」
「おう、エレナさん!
帰り便の荷物を届けてきたぜ。……ほら、料亭の店主さんも武具工房の親方も呼んであるからな!」
ワタルは『ウーバー・コンテナ』から、3件の荷物を手際よく取り出した。
1つ目:『特産酒&親書』
オアシス領主からの感謝の言葉が綴られた親書と上質な特産酒を、ギルド幹部へ恭しく手渡す。
2つ目:『極上ドライフルーツ&スパイス』
箱を開けると、砂漠の熱気や湿気による湿気りを一切吸わず、本場の天日干し立てのような芳醇な香りとパリッとし
た極上の乾燥状態が保たれている!
料亭の店主「おおお……!
砂漠の極上品が、作り立てのまま香りを閉じ込めて届いている!!」と大感動。
3つ目:『重量級・熱帯魔石』
傷一つない完璧な状態で受け取った武具工房の親方が、ワタルの肩を激しく叩く!
「この重くてデリケートな魔石を、傷一つなく半日で運ぶとは……! お前さん、本物のプロだ!!」
「素晴らしいです、ワタルさん!
帰り便3件の同時完了を確認しました。報酬は合計で100,000G(10万G)になります!」
ずっしりとした10万Gの袋を受け取り、ワタルは満足げに笑った。
行きの20万Gと合わせて、今回のオアシス往復だけでなんと30万G(金貨30枚)の売り上げだ。
さらに、視界のシステム画面で実績ログが更新される。
『帰り便混載実績+3、魔物撃破実績完了』
『通算配送完了数:6件』
『ドライバーレベル:Driver Lv.12』
そして、車両ツリーに、一際明るく青い光が点灯した。
『次回解放可能車両条件クリア間近:【マリン・キャリバー(魔導クルーザー)】』
『解放条件:Driver Lv.20 & 配達通算100件完了』
『特徴:水上・水中航行可能、水産業・離島配送特化型』
「早くマリン・キャリバーも乗ってみたいぜ!海や離島への水上配送か……!ふっ、どんな悪条件でも、俺のデリバリー魂で完璧に届けてやる!」
夕陽に照らされる純白のグラン・キャビンの横で、ワタルは力強く拳を握りしめるのだった。
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