第六話:『作業妨害、および不快な汚染の排除』
第六話:『作業妨害、および不快な汚染の排除』
「山賊が来たぞーーっ!」
マッドが涼しい顔で作業している宿屋の一室へ、窓の外から騒がしい絶叫が飛び込んできた。
やがて、男性の助けを乞う声や、女性の悲鳴がごうごうと響く熱風に混ざって聞こえ始める。
だが、マッドは意に介さず、最近集めた素材の成果物を記録したメモの整理を淡々と続けていた。
――バンッ!
突如、部屋のドアが乱暴に蹴り開けられた。
入ってきたのは、薄汚れた服をまとった野蛮な男だ。その手には、やはり手入れの行き届いていない汚れたサーベルが握られていた。
「おい、お前! この村の奴らは全員広場に集まれ! 逆らう奴はぶった切ってやるからな!」
マッドは手元のメモに視線を落としたまま、相手の顔を見ることすらせずに言い放った。
「おい、外でやれ。俺を巻き込むな」
「この野郎! 生意気なことを言ってんじゃねえぞ!」
完全に無視された山賊は激昂し、サーベルを大きく振りかざしてマッドの脳天めがけて斬りかかってきた。
――ギィンッ!!
鋭い金属音が室内に響き渡る。
しかし、切り裂かれたのは空気だけだった。
マッドが咄嗟に突き出した左腕に触れた瞬間、山賊のサーベルは根本から無惨にへし折れていた。
「なっ……!?」
呆然と立ち尽くす山賊に対し、マッドは静かに自分の腕を一瞥する。
「左手はとっくの昔に義手だ。そんななまくらでは切れぬよ」
マッドはそのまま、折れた刃を見つめて硬直している山賊の顔面へ左手を向けた。
――バスッ!
低い空気の発射音が鳴り響く。
システムから供給される電力を利用し、左手の義手内部の圧縮空気ギミックが完璧に作動した。
超音速で放たれたエアライフルの鉛玉は、一瞬にして山賊の頭部を正確に撃ち抜いた。
どさりと床に倒れ込み、動かなくなる男。
「電力があれば義手のギミックは問題なく動かせそうだな。……チッ」
マッドは手元のメモからようやく目を離し、床を見て不快そうに眉をひそめた。
「こいつの血で部屋が汚れてしまった。これでは作業効率が落ちる。死体に文句を言うか……いや、時間の無駄だな。さっさと掃除をするように店主に頼みに行くか」
マッドはペンを置くと、足元の死体を踏み越えるようにして、静かに席を立ち上がった。




