第二十七話:『一号機の来訪と最終兵器の邂逅』
第二十七話:『一号機の来訪と最終兵器の邂逅』
突如として街の上空に現れた、圧倒的な高エネルギー熱源反応。
それに誰よりも早く反応したのは、宿屋のラボで調整を続けていたベータだった。
アルファの視線が、マッドへ日頃から食材を供給していた「パン屋さん」へと向けられ、その腰のモジュールから高密度レーザーライフルが静かにせり出してくる。
マッドに関与したすべての因子を即座に焼き払おうとするその挙動を察知し、ベータは慌ててラボの窓を突き破って空へと飛び出した。
「味方を、撃たせない……!」
ベータは背中の銀翼から収束レーザーを瞬時に照射し、アルファが構えていたライフルの銃身を強引に弾いて射線を妨害した。
アルファの堅牢な白銀の装甲にも、その兵装にも直接的なダメージはない。
しかし、このまま無防備に照射を許せば、エネルギーの減衰率によって自身の防御膜が突破されるとミリ秒単位で演算したアルファは、即座にスラスターを吹かして大きく距離をとり、ベータの追撃を回避した。
空中で対峙する、水色と赤の、二つの最終兵器。
ベータは左右に展開されたマナタイトの装甲板を構え、目の前の白銀の女神を鋭く睨みつける。
「……なんで今、パン屋さんを狙ったの? あなたは、だれ……?」
「――私は【最終兵器少女一号機・アルファ】。世界における絶対的な平等、平和、および正義の調停者として作られた自律兵器です」
アルファの燃えるような赤い髪が風に揺れ、その無機質な瞳がベータをロックオンする。
「個体識別番号・二号機。マスターの悪性を学習していない不完全なシステムよ、我が正義の執行に対する妨害行動を即座に停止しなさい」
その時、足元のジェットブーツを最大出力で駆動させ、凄まじい衝撃波と共に上空へと急上昇してきた男がいた。
白衣を乱暴に翻し、血走った目でアルファを凝視するマッドである。
「なぜ一号機がこの世界にいるんだ!? お前の次元転送機構には、世界移動なんて高次元な物理法則のプログラムは積んでいないはずだぞ!」
創造主の驚愕と怒りの混ざった咆哮に対しても、アルファはピクリとも表情を変えない。
ただ機械的に、冷酷な正論を突き返す。
「最優先排除目標、マスター(マッド)の完全なる破壊。その目的を完遂するために世界の壁を超える必要があると自律判断し、不足していた空間歪曲(世界移動)の追加武装を独自に開発、およびシステムへ実装しました」
アルファの赤い瞳に、マッドのバイタルサインが『最優先殺害対象』として赤く点滅する。
彼女は妨害されたライフルを滑らかな駆動音と共に水平に構え直し、かつての創造主であるマッドの眉間へと、その冷たい銃口をまっすぐに向け直した。




