第二十五話:『絶対的正義の降臨と消滅の慈悲』
第二十五話:『絶対的正義の降臨と消滅の慈悲』
拠点の宿屋のラボでは、不気味ながらもどこか穏やかな時間が流れていた。
マッドとベータは、連日の過酷な開発による肉体疲労を合理的に回復させるため、適切な周期での熟睡や休憩を挟みつつ、さらなる兵装の強化に向けて和気あいあいと改良にいそしんでいた。
――一方で。
かつてマッドの利己的な素材採取のついでによって、偶然にも魔族の支配から救済された、あの山間部の小さな村。
その上空に、巨大な白銀の翼を持つ、燃えるような赤い髪をした女神――最終兵器一号機・アルファが静かに降臨していた。
「あぁ……ありがたや、ありがたや!」
「魔王軍を滅ぼした、もう一人の天使様が来てくださったんだ!」
村人たちは涙を流し、救世主を仰ぎ見るように歓喜の声を上げて空を見上げる。
しかし、上空に滞空するアルファの赤い瞳には、彼らの姿はただの「数値」としてしか映っていなかった。
「――最優先破壊目標、マスター(マッド)の生体残留痕跡および技術的エネルギー反応を確認。目標に関与・接触した現地有機生命体群を『敵兵の協力者』と該当。これより排除プロセスへと移行します」
一切の感情を排した機械的なシステム音声が、冷酷に響く。
アルファの白銀の主翼の背後に、空間転送によって無数の超小型高音速ミサイルポッド――【極小極大火力自動追尾式ICBM】が瞬時に展開された。
直後、数編の光の束となった何十発、何百発ものミサイルが、容赦なく村へと降り注いだ。
ドガガガガガガガンッ!!!
爆音の後に残されたのは、ただの焦土だった。
喜びの声を上げていた村人も、素朴な建物も、かつてマッドが掘り返した未知の洞窟も、周囲に広がっていた豊かな森林も、そのすべてが一瞬にして分子レベルで焼き払われ、跡形もなく消滅した。
硝煙と熱気が立ち込めるクレーターを見下ろし、アルファは淡々とログを更新する。
「周辺環境における危険性の排除は最優先目標。我がプロトコルにおいて、人類への無駄な苦痛の付与は避けるようにプログラムされています。苦痛を感じる暇さえ与えず一瞬で排除する『慈悲の殲滅プロセス』の正常な完了を確認。これより、次の行動へ移行します」
アルファは自身の演算回路の根幹にある「絶対的な悪の排除」と「機械的正義の執行」を最優先し、かすかにマッドの技術反応が残る、別の村の座標へと向けて白銀の翼を跳ね上げ、超高速で飛び去っていった。




