第十七話:『風の四天王と人工ガーネットの要求』
第十七話:『風の四天王と人工ガーネットの要求』
白銀の甲冑をまとった一人の魔族が、静かに海岸へと舞い降りた。
魔王軍最後の四天王――風のゼファー。
「……なんだ。……なんなんだ、これは」
東の重要拠点が、四天王ブルーの気配ごと突如として消失した。
慌てて現地へ急行したゼファーだったが、視界に飛び込んできた光景に絶句するししか記述を持たなかった。
海岸には、何もなかった。
かつて誇り高くそびえ立っていた軍事拠点の姿はなく、爆心地にはガラス状に融解して焦げ付いた砂浜が広がっているだけだ。
わずかに転がる焼け焦げた鉄屑の破片以外、文字通りの更地と化していた。
「……ブルー。お前の言っていたことは本当だったのか。本当に、神々が人類に味方したというのか……」
跡形もなく消滅した巨大拠点を前に、ゼファーはただ唖然と棒立ちするしかなかった。
一方、拠点の宿屋。即席のラボでは、マッドが計器を片手に指示を出していた。
「ベータ、まずお前にはレーザー装置を最低限実装する必要がある。前世のような高出力レーザー兵器も、レーザー誘導のミサイル兵器も、照射用の光学素子(素材)がないと始まらんからな」
「レーザー。……マスターにとって、そんなに大切なものなのですね」
水色の髪を揺らし、ベータは真剣な表情でメモリーに記録する。
「そうだ、極めて重要だ。特に固体レーザーの媒体となる人工ガーネットのためのイットリウムや、光を収束させるサファイア結晶がないと、満足な出力調整すらできん。確か……事前に略奪した過去の鉱脈データよれば、東の海岸の洞窟にまだ未採取の鉱脈が残っていたはずだな」
マッドはそう言って宿屋の窓を乱暴に開け放ち、外の足場へと足を踏み出した。
開いた窓から、ベータもぴょこんと可愛らしく顔を覗かせる。
「ベータ、俺の軌道についてこい。今から東へ向かう。お前の飛行ユニットの適合試験も兼ねる。飛び方はインストールしたな?」
「はい、マスター」
ベータが小さく頷いた瞬間、二人の足元から爆発的な推進炎が吹き出す。
失格勇者と水色の鉄の少女は、衝撃波を残して、一気に東の空へと飛び立った。




