第十三話:『最重量の四天王と産業用掘削兵器』
第十三話:『最重量の四天王と産業用掘削兵器』
南東の空を飛び回り、魔王軍に支配されたいくつかの村を点検したマッドは、そのたびに「間違えた」「ここじゃない」と吐き捨てていた。
進路を阻もうとする邪魔な魔族兵たちには、挨拶代わりに【希硫酸風船】をぶっかけ、融解していく彼らの悲鳴を聞き流しながら移動を続けた。
そうしてようやく辿り着いたのは、やはり不自然な鉱脈が奥へと続く、洞窟を抱えた山間部の村だった。
マッドはこの構造に確信を持ち、迷わず洞窟内へと足を踏み入れる。
道中、襲いかかってくる魔族兵たちも、もれなく顔面に硫酸の弾を叩き込まれ、皮膚を剥がされて悶絶していった。
しかし、洞窟の通路を進むマッドの背後から、これまでとは明らかに格の違う重圧を放つ影が迫る。
「お前がイグニスを倒した勇者か? 奴は我ら四天王の中でも最弱。この最重量の四天王・ガイア様には、あのような小細工は通用せんぞ!」
地響きのような声と共に、巨漢の魔族が力を込めて踏ん張った。
瞬間、周囲の岩盤がバキバキと剥がれ落ちて彼の肉体に集束していく。
またたく間に、男は巨大な岩石の甲冑を全身にまとった、ゴーレムさながらの圧倒的な質量兵器へと変貌を遂げた。
並の攻撃では傷一つ付かないであろう絶対的な防御力を前に、マッドはただ機械的に左腕のコンソールを操作した。
「空間転送――座標指定、拠点の宿屋」
ガシャリ、と空間が歪み、マッドの肩の上に長い筒状の銃器が出現する。
それは魔法の武器などではない。
底部の撃針がトリガーと連動するだけの、きわめて原始的かつ堅牢な構造を持った、安全に十メートル以上の岩盤を破砕するための産業用『採取用グレネードランチャー』だ。
マッドは無感情にレンズの焦点を合わせた。
「スケジュールが詰まっている。邪魔をするな」
無慈悲にトリガーが引かれ、金属の爆鳴と共にグレネード弾が射出される。
弾頭はガイアの巨大な片足の岩盤へと正確に突き刺さった。
「ぬははは! その程度の弓矢で、我が誇る大地の装甲が破れると――」
――ズガァァァァンッ!!
男の言葉は、洞窟全体を激しく震わせる爆縮の衝撃波によって完全に掻き消された。
超高圧の爆薬が岩石の隙間で全エネルギーを解放し、最重量の四天王は、その誇り高き装甲ごと木っ端微塵に爆散して消し飛んだ。
硝煙が漂う中、マッドは左手のデジタル時計の画面に目を落とした。
「……三分ものロスだ。不便な生物め」
苛立ちを隠さずにそう吐き捨てると、マッドはすぐに気を取り直し、未知の処理容量を秘めた二つ目の『天使様』が眠る洞窟の奥へと、何事もなかったかのように歩いて行った。




