第十二話:『天使様の残量と新たな標的』
第十二話:『天使様の残量と新たな標的』
四天王の支配から解放され、わずかに生き残っていた村人たちは、涙を流して互いに抱き合い、歓喜に沸いていた。
そんな中、マッドは喜びを分かち合う輪に加わることもなく、一人の少女の前へと無造作に歩み寄った。
白衣のポケットから先ほどの宝石を取り出し、その端正な顔を近づけて問いかける。
「おい。この鉱物生命体は、ここにあるこれだけしかないのか?」
「あぁ……! 天使様! 魔王軍から取り返してくださったんですね!」
少女はマッドを救世主と誤認し、目を輝かせて両手を合わせた。
だが、マッドにとって彼女の感謝などどうでもよかった。
「そんなことはどうでもいい。この宝石は、他にはないのかと聞いている。このサイズでは、二号機のメインシステムに最低限必要な処理容量の、半分しか満たせないじゃないか!」
「……え? えっと……その、天使様がおられる場所は、大体どこも魔王軍が支配してしまっていて……」
「なるほど、まだ存在するんだな!」
マッドの目がギラリと狂気に染まる。
彼は少女の近くで怯えていた中年男性の肩を、その左手の義手でガシリと掴んだ。
「おい、そこの大人。こいつの親か? 『天使様』とやらが他に眠っている場所をすべて吐け!」
「え、えぇっと、勇者様……? 天使様なら、ここから南東に何十キロも先にある別の村にも祀られています。ですが、あそこは……!」
「南東だな」
マッドは男の言葉を遮り、すぐに南東の空へと視線を向けた。
「あの、まだお礼が!」
「うちの村の天使様を返してください!」
「南東の村には、さらに強力な魔王軍の部隊が――!」
すがるような村人たちの懇願も、魔王軍の警告も、マッドの耳には一切届かない。
ガシャリ、と足元のジェットブーツが激しい駆動音を立てる。
マッドは彼らを一瞥もせず、爆発的な推進炎を吹き上げると、新たな素材が眠る南東の空へと一直線に飛び立った。




