第十一話:『知性を持つ鉱石と設計図の上書き』
第十一話:『知性を持つ鉱石と設計図の上書き』
洞窟の最奥には、周囲の岩肌とは明らかに一線を画す、豪奢な石造りの台座が鎮座していた。
その中央に飾られていたのは、淡い燐光を放つ小さな宝石。
マッドが近づき、その組成をスキャンしようと手を伸ばした瞬間――彼の脳内へ、直接奇妙な感覚が流れ込んできた。
『あなたは、だれ……?』
鈴を転がすような、酷く幼い少女の声だった。
マッドの端正な顔立ちが、驚愕と、それを遥かに上回る狂気的な歓喜によって歪む。
「鉱物生命体か! 炭素ベースのタンパク質ではなく、本当に固体結晶を基盤とした鉱物生命体なのか!?」
『あなたは……だれ……?』
宝石はそれ以上の言葉を持たないのか、同じ問いかけを繰り返すだけだ。
しかし、マッドにとってはそれだけで十分すぎるほどの証明だった。
「素晴らしい……! しかも、わずかだが明確な自律知性があるのか! これならば、二号機の核となる自律制御システムを、初期予定よりも大幅にコンバートできるかもしれん!」
前世の機械工学では成し得なかった、完全なる『自律思考プログラム』の代替パーツ。
マッドは愛おしそうにその宝石を掴むと、躊躇なく白衣のポケットの中へとねじ込んだ。
目的の最優先オブジェクトは確保した。
マッドはすぐさま次の行動に移り、洞窟内に点在するめぼしい希少鉱石の数々を、【分解】スキルによって次々と純粋な材料データへと還元し、ストレージへ回収していく。
より人間に近いアンドロイドの皮膚を形成するための、耐熱性に優れたフッ素樹脂が豊富にあるこの環境。
そして、今回この洞窟で手に入れた、超高融点を誇る希少なタングステンの山。
何より、知性を持った未知の鉱物生命体。
極上の収穫物の数々と、それによって脳内で目まぐるしく上書きされていく、より完璧な最高傑作二号の設計図。
四天王が倒され、魔族たちが完全に撤退して静まり返った小さな村の入り口。
眩い太陽の下へ這い出てきたマッドは、溢れ出る全能感に喉を鳴らし、不気味にグフフと一人で笑い声を上げるのだった。




