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地獄の前の静寂

【本章のあらすじ】

オリオン星における大砲と兵器の戦争は終結し、より恐ろしく致命的な戦争、すなわち「精神と信仰の戦争」が幕を開けた。かつて平和だった惑星は急速にその姿を変え、帝国の巨大な軍事機構を構成する灰色の歯車の一つと化していく。帝国の絶対支配によってもたらされたこの歪んだ「静けさ」の中、愛妃たちは文明の廃墟の上で独自の儀式を執り行い、次世代の精神に新たな概念ルールを植え付けていく。一方、惑星の最深部では、暗闇の中に立つ暴君が星々を見据えていた……。現在のオリオンの沈黙は、これから訪れる地獄の嵐を前にした、不気味な静けさに過ぎないのだ。

巨大な灰色の軍事工場と化したオリオンの街路に、もはや安息の時間は存在しなかった。

労働者たちは完全に統率された軍隊の歩調で歩き、暗い街路には彼らの虚ろな声がこだましている。

「労働は国庫へ! 鮮血は我が君へ!」

街角にそびえ立つ巨大なホログラム・スクリーンから、第七夫人イザベラが狂気めいた熱を帯びた瞳と、エネルギー全開のアイドルスマイルで叫んでいた。

「勝利の朝だよ、偉大なるオリオンのみんな! くだらない昔の弱さから、キミたちを解放してくれたのは誰かなーっ!?」

街路を埋め尽くす何百万という民衆が、一切の意志を剥奪された虚ろな瞳で、一斉に叫びを上げる。

「大いなる暴君、皇帝陛下ァァァ!」


巨大な教育施設の一室。

教師は痩せこけた生徒たちの前に立ち、その生命力の一切を失ったガラス玉のような瞳を見つめながら、震える手を必死に抑え込んでいた。

「き、起立!」

教師が震える声で命じると、生徒たちはまるで一つの肉塊のように立ち上がった。

「我らの第一の誓いは?」

「皇帝陛下、万歳!」

生徒たちは、完全に同調した野太い声で叫んだ。


教師は生唾を飲み込み、未知のプログラム・コードが乱舞するホログラム黒板を起動させた。

「着席なさい……。そして、あなたたちが今まで学んできた物理学の知識は、すべて忘れなさい」彼女は額の汗を拭いながら告げた。「今日から私たちは『アカシャ』――すなわち、この宇宙の絶対法則について学びます。そして、あなたたちの血管を流れる『エーテル』こそが、その法則を書き換えるためのインクなのです」


痩せ細った一人の生徒が、おずおずと弱々しい声で尋ねた。

「先生……そのインクは、どうやって使うんですか?」

教師は教室の隅にある重い鉄の塊を指差した。

「あれを持ち上げてみなさい」

生徒は全身の力を振り絞ったが、鉄の塊はピクリとも動かなかった。

教師はスッと手を伸ばし、乱暴な動作でホログラムのコードを一部「抹消」した。

「これが『アクシオム』です」

次の瞬間、その重々しい鉄の塊がフワリと宙に浮き上がった。

「重力のような宇宙の基本法則を黒塗りし、己の絶対的な意志を世界に強制するのです」


教師はその鉄の塊を、別の生徒に向かって猛烈な勢いで突き飛ばした。

しかし、その生徒は防御しようとはせず、極めて滑らかな動きで上体を逸らしながら鉄の塊に触れ、その運動エネルギーの軌道を誘導して壁へと激突・粉砕させた。

「見事です」教師は頷いた。「これが『レゾナンス』……。宇宙の力に逆らうのではなく、完璧に調和し、その流れを導くのです」


突然、教室の後方からテクノロジー・グラスをかけた生徒が怒り狂ったように立ち上がった。

「ふざけるな! 俺たちのコンピューターの方が、そんなアカシャなんかよりずっと強力だ!」

彼はホログラム黒板をハッキングすべく、自身のスマートデバイスを黒板へと突きつけた。

「やめなさい!」

教師が叫んだが、遅すぎた。

デバイスが目も眩むような閃光を放ち、生徒の手の中で爆発した。

「ギャアアアッ! 手が、手が燃えるッ!」

生徒は床に転げ回り、激痛に悲鳴を上げた。

教師は極めて冷酷な目で彼を見下ろした。

「これが『エコー』です。テクノロジーはアカシャをシミュレートしようと試みますが、自身の許容量を超える演算を実行しようとすれば、システムは『概念のメルトダウン』を起こし、プロセッサを焼き尽くすのです」


この光景に耐えきれなくなった別の生徒が、ホログラム黒板へと駆け寄り、それを引き裂こうと全力で殴りつけた。

「こんなクソ忌々しいアカシャなんて、俺がぶっ壊してやる!」

ホログラムのスクリーンはわずかに引き裂かれたが、直後、その生徒は床に膝から崩れ落ちた。彼の目と鼻から青い血が噴き出し、頭蓋骨を抱えながら絶叫する。

「頭が……頭が割れるゥゥッ!」

「それが『パラドックス』です」教師は淡々と解説した。「法則に矛盾を生み出し、宇宙の理に混沌をもたらす。本来ならこのスクリーンは裂けませんが、あなたの一撃に込められた過剰なエーテルが宇宙の法則と矛盾し、それを引き裂いたのです。しかし、パラドックスの濫用は『宇宙の反動コズミック・リコイル』を引き起こし、あなた自身の肉体を内部から引き裂きます。二度と繰り返さないことです」


教室は完全な死の沈黙に包まれた。

教師はポケットから黒い石を取り出し、ホログラム黒板へと投げつけた。石は何の干渉も受けず、スクリーンをすり抜けていった。

「な……何なんですか、それは……?」震える声で生徒が問う。

「『アノマリー』」教師は本物の恐怖を込めて囁いた。「この黒板の法則にすら一切従わない、銀河外の宇宙的突然変異……。そして、我々の星に極めて多く存在しているがゆえに、この星を特徴づけている力です」


教師は机の上に一本の折れたペンを置き、重い溜息をついた。

「さあ……最後の道です。『ドグマ』」

彼女は生徒たちを厳格な目で見据えた。

「そのペンを見つめなさい……。そして、完全なる信仰をもって私に続きなさい。――『ペンは空を飛ぶ』」

生徒たちは力なく呟き始めた。

「ペンは空を飛ぶ……」

「もっと声を張り上げなさい! 一滴の疑念も持たずに!」教師が怒号を飛ばす。

「ペンは空を飛ぶ! ペンは空を飛ぶ! ペンは空を飛ぶッ!」

教室全体が、盲目的な狂信的熱狂とともに叫び始めた。

彼らの集合的信仰ドグマの力の下で、折れたペンがカタカタと震え始め――やがて、フワリと宙に浮き上がった。


こうして、完全なる洗脳は成功したのである。

その頃、帝国の王宮内部では。


「九千九百九十九!」


鋼鉄のサンドバッグを最後の一撃で粉砕し、ロキシーが上を向いて叫んだ。


「オイ! セリーヌ! そんな木の上で寝てて退屈しないのかい?」


宮殿の中央にそびえ立つ巨大な樹木の枝の上から、セリーヌが柔らかい声で欠伸をした。


「ここはとっても静かで、穏やかなの……。ロキシーも一緒にお昼寝してみない? 筋肉がほぐれて、気持ちいいですよ」


隣の回廊では、カミールが奇怪で血生臭い彫刻を壁に飾りながらクスクスと笑っていた。


「お昼寝なんて弱い子たちのすることよ。見て、この鋭い角……反逆者の死体を吊るすのに、とっても完璧だと思わないかしら?」


巨大な執務机の奥で、ヴェロニカが分厚い書類に強く判子を叩きつけ、冷ややかにため息をついた。


「無駄口を叩くのはやめなさい。夕方までに、三百万部もの徴兵志願書のスケジュールを組まなければならないのですから」


その傍らでは、レイラが毒のある悪女の微笑みを浮かべたまま、宙に新しい香水を吹きかけていた。


「ふふふ……オリオンの毒花ですわ。その香りは心を虜にし、たった五秒で完全に心臓を止めてしまいますの。どう思われます、カオリ?」


侍のように結跏趺坐で目を閉じていたカオリが、片目だけを開いて厳格に答えた。


「剣は香水よりも速く、そして何よりも誉れ高いものでござる」


そして宮殿の片隅では、オリオンの新たなる総督となった『マディ・ロール将軍』と娘の『オリア』が、皇帝の黄金の彫像の前に跪いていた。二人は恍惚とした盲目的な忠誠心に浸り、呪文のように呟き続けている。


「すべては我が君への供物……我らの血など、陛下のために流すなら安いものだ……」


妻たちの姦しいおしゃべりから遠く離れた、地下の最深部に位置する極秘研究室。


皇帝は威風堂々と立ち尽くし、緑色の猫の姿をした『ニクシア』が彼の軍靴の周りに怠惰にすり寄っていた。彼の眼前には、暗闇の中で巨大な金属の骨組みを誇る秘密兵器がそびえ立っている。


「……プラズマコアの消費率が八十九パーセントを超過。これにより、隔離チャンバー内での中性子の反跳が引き起こす可能性のある事象は……」


アイヴィーは物理学の専門用語の海に溺れながら、機械的で退屈な声で報告を続けていた。


「アイヴィー」


皇帝の深く冷酷な声が、彼女の言葉を遮った。

アイヴィーは即座に口を閉ざす。


「はい、陛下?」


皇帝は彼女を見ようともしなかった。そのギラギラと輝く黄金の瞳は研究室を通り抜け、頭上の開口部から見える星々と深淵の虚空へと向けられていた。


「その退屈極まりない科学の長広舌は、お前の実験の犠牲者どものために取っておくのだな」


口角が吊り上がり、野蛮な笑みが形作られる。暗闇の中で、その獰猛な牙が白く覗いた。


「……アンドロメダのクズども、『ザイロス』が到着するまであと何日だ? 余は飢えている……奴らの骨が砕ける音を、早く聞きたくて堪らんのだ」

【読者の皆様へ:今話のクエスチョン】

第九章へようこそ。時に、戦いの後に訪れる静寂は、戦闘の喧騒よりも残酷で恐ろしいものです。このパートでは「勝利」のもう一つの暗い側面を描きたいと思いました。敗北とは単に死体が転がるだけではなく、意志を完全に奪われ、アイデンティティを消し去られ、敵の単なる「駒」へと成り下がることをも意味するのです。今日の街路で流れる血はありませんが、魂は音もなく抜き取られています。


質問:戦闘後の「静寂」の期間における妻たちの儀式や振る舞いを垣間見ていただきましたが、戦争から離れた日常パートで、どの妻のキャラクターが一番お気に入りですか? また、血に飢えた我が皇帝とザイロスの前衛部隊との「最初の接触」はどのようなものになると思いますか? ぜひコメント欄で皆さんの考察セオリーをシェアしてください!


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