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シーザの法則、最後の三日間

【章のあらすじ】

バルト虐殺の末路。そして、息子たちの所業を前に、ついに皇帝が下す決断とは。


——ドガァァン!


村を封鎖して五日目。

「黄金の精鋭」による、残された家屋への苛烈な強制捜査が開始された。


それは単なる家宅捜索や略奪ではない。

徹底的な「人間の尊厳の破壊」だった。


閉じられた扉はすべて、住人の頭上へと容赦なく蹴り破られた。


渇きに衰弱し、立ち上がることすらできない老人や病人たち。

彼らはベッドに寝かされたまま、呻き声を上げる間もなく、生きたまま火を放たれた。


兵士たちは、泣き崩れる妻を庇おうとする夫の頭蓋を、ゲラゲラと下品な笑い声を上げながら軍靴で踏み砕いた。

わずかな食糧、衣服、そして……家族の思い出が詰まった写真すらも奪い取り、泥まみれのブーツでズタズタに踏みにじったのだ。


シーザの「法則」は、彼らから人間性を完全に剥奪し、死を懇願するほどの絶望を与えた。


——キャァァァ!


暗闇の静寂を切り裂くような悲鳴。


六日目。

大規模な拉致作戦が開始された。

だが、それは無作為なものではない。シーザの将校たちによる、人種的かつ冷酷な「生体分類」であった。


死体が転がる道路を、装甲輸送トラックが我が物顔で這い進む。


若く美しい娘たちは、泣き叫ぶ母親の目の前で髪の毛を掴んで引きずり出された。

闇の奴隷市場で「商品」として売り捌かれるために。


一方、健康な肉体を持つ若者や男たちは、家畜のように野戦医療テントへと連行された。

麻酔など存在しない。

彼らの胸は生きたまま切り開かれ、シーザの戦争機構の資金源とするため、心臓や臓器が次々と摘出されていく。

そして、無残に切り刻まれた残骸は、価値のないゴミとして村の路地裏へと投棄された。


そして……七日目の朝日が昇る前。


シーザ自身の名による、最終軍事勅令が下された。


「完全なる浄化を行え。命の鼓動を、一つたりとも残すな」


渇きを生き延びた者も、拉致を免れた者も、学校前での処刑を生き残った者も……。

等しく、この最後の審判を迎えることとなった。


「黄金の精鋭」は、想像を絶する殺戮の手法で村を更地へと変えていく。

生き残った者たちは中央広場に集められ、太い鎖で互いに繋がれた。


上から煮えたぎる油が浴びせられ、火が放たれる。


バルトの空を照らすのは、狂気に満ちた炎と、心臓を鷲掴みにするような断末魔の絶叫が交じり合う、巨大な人間篝火だった。


炎から逃れようと、毒に汚染された川へと駆け込んだ者たちもいた。

しかし、彼らもまた、故意に毒水の中へと沈められた。

苦し紛れに水面に顔を出そうとする頭を、軍靴が容赦なく踏みつけ、肺が毒に侵され、四肢が溶け落ちて絶命するまで押さえつけ続けた。


七日目の終わり。

村から、永遠に悲鳴が消え去った。


圧倒的な沈黙。

まるで、最初からそこに何も存在しなかったかのように。


こうしてシーザは、見事にバルトから「悪の根源」を摘出してみせたのだ。


——ピッ。


ホログラムスクリーンの映像が切り替わる。


しかし、この地獄のすべてが……。

流れた血の一滴、響いた悲鳴のすべてが、全世界へ向けて「放送」されていたのだ!


シーザは、単独で狂っていたわけではない。


画面には、最高級のスーツを着こなしたダンテの姿が映し出された。

彼は狂気的な笑い声を上げながら、視聴率の稼げない女性たちを、煮えたぎる巨大な油鍋の中へと次々に蹴り落としていた。

人間の命が失われる瞬間を、ただの「視聴率稼ぎのエンターテインメント」として消費し、悦に浸っている。


続いて、映像は南極の白銀の世界へと切り替わった。


そこにいたのはヴィクター。

彼は生きたペンギンやホッキョクグマに対し、麻酔なしで内臓を切り刻むという、吐き気を催すような凄惨な実験を淡々と繰り返していた。


さらに、リュウ。

名誉を重んじるはずのサムライ。

彼は、部下がほんの些細な言葉の言い淀みをしたというだけで、最も忠誠心の高かったはずのその男の首を刎ね、血塗られた刀を冷徹に拭っていた。


帝国の大円卓会議室。


皇妃たちは、あまりの衝撃に床へと崩れ落ちた。


彼女たちの生涯で初めてだった。

己の腹を痛めて産んだ息子たちを、心の底から「憎悪」したのは。


蹂躙、暴虐、そして完全なる無慈悲。

息子たちは皆、もはや地球(ちきゅう)という星が耐え切れないほどの、絶対的な悪へと堕ちていた。


サディズムの化身として知られる皇帝(こうてい)でさえ……。

己の目の前に広がる光景が、帝国の野望を逸脱し、ただの盲目的な暴君の泥沼に成り果てていると判断せざるを得なかった。


——ゴゴゴゴゴ。


漆黒の玉座から、空間を圧し潰すほどの覇気が膨れ上がる。


皇帝(こうてい)は玉座に座ったまま、その絶対的な意志を固めた。


(旧式な育成法は……完全に失敗したというわけだ)


彼は、まだ赤子だった八人の息子たちを地球(ちきゅう)へと投げ捨てた。

目的はただ一つ。


『不毛の地で足掻け。そして……絶大な力を持つ皇帝となって余の元へ帰還せよ。それが出来ぬ無能は、月に追放する』


だが、その手法は今日、明確な破綻を迎えた。

彼らは王にはならなかった。

放置すれば、いずれ銀河そのものを喰らい尽くすであろう、制御不能な狂王(バケモノ)へと変貌してしまったのだ。


皇帝(こうてい)がゆっくりと立ち上がる。

絶対零度の冷気が会議室全体を包み込み、皇妃たちの血を凍りつかせた。


「直ちに、回収作戦を開始する」


その深く掠れた声は、星々をも粉砕しそうなほどの重圧を伴っていた。


「ミライ・アルタイルを牢から引きずり出せ……。あの狂犬どもを一人ずつ引きずり戻し、その後どう処置するかを決定する」


皇帝(こうてい)は片手を高く掲げた。

その瞳には、荒れ狂う青き炎が宿っている。

太陽軌道帝国(たいようきどうていこく)の、ひいては太陽系全土の力関係を根底から覆す、絶対的な勅命が下された。


「太陽軌道帝国(たいようきどうていこく)艦隊へ通達しろ……。これより、作戦名『海神の槍(ポセイドンズ・スピア)』を発動する……ッ!」





【作者ノート】

非常に重く、ダークな展開の章となりました。しかし、皇帝の八人の息子たちがどれほどの暴虐と悪意に染まりきっているかを示すためには、どうしても避けては通れない描写でした。


皇帝はついに己の育成計画の失敗を悟り、彼らを力でねじ伏せる決断を下しました!

太陽軌道艦隊が実行する恐怖の作戦『海神の槍(ポセイドンズ・スピア)』。果たして、八人の息子たちの中で、最初にその標的となるのは誰なのでしょうか?


もしこの章をお楽しみいただき、いよいよ始まる真の激突への期待が高まりましたら、ぜひページ下部から星五つ の評価と、お気に入り(ブックマーク)への追加をお願いいたします!

皆様からの応援こそが、この壮大な狂詩曲を書き続けるための「エーテル」となります!

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