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真実の宣告

【章のあらすじ:ミライ・アルタイルに関する最終決定が下される。】


皇帝はそこに立ち、一点の曇りもない絶対の決断を下した。


「余自ら、奴の言葉の真偽を確かめる」


アルタイルは再び地下牢へと送り返された。だが今回は罪人としてではなく、その証言の真実性を検証される『証人』として。


「我が子たちを裏切るとおっしゃるのですか、我が君? 彼らは貴方様の実の息子ですわ!」


レイラが怒りを露わにして叫んだ。己の息子への完璧な計画が、未来から来たなどという不確かな仮説によって崩れ去ることを、彼女は断固として拒絶していた。


「あぁ……わたしは、あの人を信じます……」


セリーヌが、恐怖に震える手で胸元を強く抱きしめながら、か細く震える声で呟いた。


「でも……わたしのシラスが、あんな恐ろしいことをするなんて、どうしても想像できませんの……。大陸を丸ごと滅ぼすなんて? そんなの不可能です……あの子は、わたしに似てとても優しい子ですのに……」


だが、皇帝の決定が覆ることは二度とない。


ここにおいて、後宮(ハレム)は明確に二つの陣営へと引き裂かれた。

オリアがふらつく足取りで進み出て、セリーヌの傍らに立った。その瞳には、今も母性の涙が光っている。


「私も、セリーヌに同意しますわ……! 私の心は、アルタイルの言葉が真実だと告げています。彼は未来から来た私の息子ですわ! でも……兄弟たちが? 彼ら全員が明日、父親に牙を剥くだなんて……そんなこと受け入れられませんわ! きっと、何かの誤解ですのよ!」


「誤解、ですって?」


ヴェロニカの氷のように冷たい声が、オリアの悲痛な叫びを断ち切った。彼女は怒りを滲ませながら、冷徹に眼鏡の位置を直す。


「感情は真実の視界を歪めます、オリア。もし私の息子であるシーザが、至高の秩序(ルール)に背き、玉座に対する反逆を企てたというのなら……。その大逆罪は、まず絶対的な証拠によって証明されなければなりません。……そして事実であると確定した暁には、無慈悲に根絶やしにするまでです」


「科学は嘘をつきません」


顔の前で両手を組み、イヴが淡々と割り込んだ。


「DNA解析のデータは完全に一致しています。あの謎の男は、間違いなく陛下とオリアの息子です。しかし、未来の子供たちの犯罪行為は、現時点ではいかなる証拠も伴わない『仮説』に過ぎません。我々には、物理的なデータと証拠が必要不可欠です。ゆえに、私は監視計画に賛同します」


「監視だと? ハッ!」


バキィィッ!


ロキシーが両拳を激しく打ち鳴らし、獰猛な笑みを顔いっぱいに裂かせた。


「もしアタシの息子、エリスの野郎が『退屈だから』なんて理由で何百万人も殺して遊んでるって言うんなら……それは、アタシのシゴキが全然足りなかったって証拠じゃねえか! アタシが直々に地球へ降りて、アイツの全身の骨をへし折ってやるよ!」


「裏切りの恥辱は、血を以てでしか濯げぬ」


チャキッ……。


カオリが怒気を孕んだ所作で、愛刀の柄に手を置きながら静かに呟く。


「もしリュウが、侍の誉れを泥で汚したというのであれば……拙者自らの手で、奴の首を胴体から切り離す。だが、もし無実であるならば……虚偽の罪をでっち上げたアルタイルの処遇について、真剣に議論せねばなるまいな」


部屋の片隅では、カミーユが夢見るような、そして狂気を孕んだ瞳で天井を見つめていた。


「何百万もの死体……流れる血の河……。あぁ、なんて美しく悲劇的なキャンバスなのかしら! 私たちの子供たちは、地球の血の絵の具を使って、彼ら自身の最高傑作を描き上げているのね……!」


「最悪! 最悪! 最悪よ!!」


イザベラが両手で頭を抱え、ヒステリックに金切り声を上げた。


「ダンテが地球のメディアを完全に支配しているのは、最高に素晴らしいわ。さすがはアタシの息子よね! でも、公然と売春や腐敗の帝国を運営するですって!? そんなの、アタシがこの帝国のために築き上げてきた完璧な『視覚的同一性(ビジュアルアイデンティティ)』を、根底から破壊する行為じゃないの!!」


そう叫びながら、彼女は大理石の床に崩れ落ち、再び大声で泣き喚き始めた。


騒音、非難、激怒、そして拒絶。


妻たちは皆、己の欲望と感情のままに声を荒げていた。セリーヌとオリアは恐怖と衝撃の塹壕に身を潜め、我が子がもたらす絶対的な悪意を信じまいと拒絶している。一方、残りの妻たちは、自らの尊厳を傷つけられたことへの怒りと、他の妻たちの子供が失墜することに対する隠微な嘲笑の間で完全に分裂していた。


ドゴォォォォンッ!!


玉座の肘掛けを打ち砕くほどの、凄まじい衝突音が響き渡った。

皇帝が、拳を振り下ろしたのだ。


「——女ども。静まれ」


皇帝は、赤と黒の業火が渦巻く双眸で彼女たちを睨みつけた。


「余は、推測のみで裁きを下すつもりはない。確固たる証拠なき告発で、無意味な内乱を引き起こす気もない。ゆえに、奴らの元へ余の『眼』を放つ……極小の無人機(ナノ・ドローン)部隊だ」


恐怖に支配され、完全に静まり返った空間で、皇帝が冷酷に言葉を紡ぐ。


「わずか六ナノメートルの群れ。いかなる探知網もすり抜け、奴らの静脈の中に潜り込もうとも決して気付かれることはない。七百万ゼタバイトの容量と、超高解像度の記録性能を持つ」


バサァッ……!


皇帝が立ち上がると、漆黒の王衣が絶対的な威厳と共に翻った。


「一ヶ月間、奴らの全行動を監視する。もしアルタイルの言葉が虚構であったなら、奴を余の戦艦の帆柱に吊るし上げる。……だが、もし我が息子たちの裏切りと暴政が真実であったならば——」


ニチャァ……。


皇帝の口元が歪み、妻たちの血さえも凍りつくような、極めてサディスティックな笑みが浮かび上がった。


「——『海神の槍(ポセイドン・スピア)作戦』を発動する。余は貴様らと共に地球へ降下し、奴らを『躾(しつ)』けてやる……。余なりの、やり方でな。それで満足か?」


妻たちは無言のまま、互いの顔を見合わせた。


知りたくもない残酷な真実が暴かれることへの根源的な恐怖が、彼女たちの心臓を鷲掴みにしている。だがそれでも、我が子の無実を証明したいという欲望が、その恐怖を上回った。


全会一致。


大広間に、九つの声が同時に響き渡る。


「「「御意(ぎょい)」」」




【作者ノート】

シリーズを継続していくため、皆様からの高評価によるサポートを心よりお願い申し上げます。現在少し体調を崩しておりますが、皆様のために夜を徹して執筆を続けております。何卒よろしくお願いいたします!

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