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芸術と炎

【章のあらすじ:第三の戦いが火蓋を切る。相反する哲学と芸術が激突する、狂気の劇場が今、幕を開ける。】


ザイロスの星の、忘れ去られた片隅。

第六、第七の哲学者たちの戦いが終焉を迎えようとしていた頃、第三の死闘が同時に繰り広げられていた。


彼らを取り巻く環境は、いかなる自然の天体とも異なっていた。

足元の「大地」は土や岩ではなく、一歩踏み出すごとに虚ろで鈍い金属音を響かせる。

無限のスクラップと廃棄物の堆積が、この世界のすべての景色を色褪せ、死に絶えたものにしていた。


まるで、この世界全体が超巨大な古代の宇宙船の残骸であり、何億トンもの宇宙のゴミを呑み込み続け、星のふりをしているだけのようだった。


その荒廃の中心で、カミーユは評議会の第五の哲学者、ヘラクレイトスと対峙していた。

奴の目からは、煮えたぎる溶岩のような涙が溢れ落ちている。


ポタッ……ジュゥゥゥッ……!


漆黒の熱湯のごときオイルの滴が、赤錆びた床に落ちるたび、小さな穴を穿っていく。


対するカミーユは、いつものように優雅なバレリーナの姿勢で立っていた。

彼女の柔らかい微笑みと夢見るような眼差しは、彼女の象徴であり、周囲のおぞましい光景と絶望的に矛盾している。


「泣きながら……笑うというのか」

ヘラクレイトスの、筆舌に尽くしがたい悲哀に満ちた深い声が響いた。

「なんと哀れなことよ。絵を描き、彫像を造り、踊る……過ぎ行く一瞬を凍らせようと、必死にもがいておる」


ヘラクレイトスは重々しい機械の腕を、汚染された空へと掲げた。

「万物は流転する。すべては変わるのだ。貴様が求め、芸術の中に見出すものなど無に過ぎず、消滅こそが必然である」


カミーユは小首を傾げ、地雷原を舞う蝶のように、ふわりと身体を揺らした。


「あなたの沸騰する涙……とても粘り気があって、艶やかな質感ね……」

詩を詠むような、甘く細い声で囁く。

「そして、あなたの悲しみはとても美しい色をしているわ。私のコレクションの一部にしてあげる」


二人の対話には、一切の論理も噛み合いも存在しない。

まるで夢想家の劇作家が、現実から完全に乖離した象徴世界で書き上げた狂気の演劇のようだった。


カミーユは、ゆっくりと両手を胸の前で合わせた。

「芸術は死なないわ、ヘラクレイトス。芸術は時間と戦い、人間の魂のために勝利するもの。時代が朽ち果てようとも、精神の行く末を見届ける永遠の証人となるのよ」


そして、高らかに謳い上げる。


「パラドックス:白装の画廊ハクソウノガロウ!」


カッ……!


一瞬にして、純白の閃光がすべてのクズ鉄と有毒の空を塗り潰した。

壁も地平線すらも存在しない、完全なる白紙の異次元へと二人は転移する。


ヘラクレイトスの両眼が驚愕に見開かれ、直後、その底無しの悲哀は盲目的な激怒へと変貌した。

「この忌まわしき白濁め! 貴様の愚劣なキャンバスなど、燃え盛る炎で灰に還してくれようぞ!」


彼らの舞台演劇のような対話は終わる。

肉体と肉体が激突する直前、二つの相反する思想が、オペラ座のシンフォニーのように激しく交錯した。


「エコー:燃焼の流転!」


ゴォォォォォッ!!


ヘラクレイトスの肉体が爆発した。

奴の内部から、漆黒と真紅の炎の波が津波のように押し寄せ、軌道上のすべてを呑み込んでいく。

無限に広がる純白の空間を無慈悲に照らし出し、無頓着に焼き尽くしていく。


世界がドロドロに溶け始めた。


カミーユは軽やかに後退し、炎の舌先をすり抜けるように踊る。

だが、哲学者の炎は彼女のステップよりも速く、そして凶暴だった。


黒い炎が彼女のドレスの裾を舐め、瞬く間に燃え広がった。

布地が焼け焦げ、炎は彼女の透き通るような白い肌へと牙を剥く。


「あぁ……っ」

カミーユは微かな吐息のような声を漏らし、腕と肩を火傷で爛れさせながら後退した。


ヘラクレイトスは彼女に呼吸の隙を与えない。

漆黒の流星と化して突進し、燃え盛る拳をカミーユの腹部へと叩き込んだ。


ドゴォォォンッ!


カミーユの身体が吹き飛ばされ、真っ白だった床を転がり回る。

その床もまた、灰にまみれて死んだような灰色へと変色し始めていた。


「己の姿を見るがいい!」

煮えたぎる涙を宙で蒸発させながら、ヘラクレイトスが歩み寄る。

「燃え尽き、消滅していく己の肉体を! 炎はすべてを喰らい尽くす。時が進めば、貴様の痕跡など何一つ残らぬのだ!」


ヘラクレイトスは両手を高く掲げた。

その頭上に、カミーユの命を終わらせるための、巨大な漆黒の火球が圧縮されていく。

「虚無へと還るがいい!」


カミーユは灰の床に倒れ伏し、その身体はゆっくりと炎に焼かれていた。

しかし……。


「フフッ……」

彼女は笑ったのだ。


繊細で、音楽のように美しく、そして——完全に狂いきった笑い声を。


「あなた、間違っているわ……」

カミーユは囁き、ゆっくりと立ち上がった。


突進してくるヘラクレイトスに向かって、焼け爛れた腕を静かに持ち上げる。

彼女の夢見るような瞳が、凄惨なサディズムの光を帯びて妖しく輝いた。


「パラドックス:ウィトルウィウス的人体図!」


ピタリ、と。

ヘラクレイトスの身体が、空中で完全に静止した。


奴の両手の間にあった巨大な火球が、まるで最初から存在しなかったかのように掻き消える。

何もない虚空から、光り輝く幾何学の線が現れた。


眩い青い正方形。

そして、それと交差する黄金の円。

二つの図形が、ヘラクレイトスの肉体を縁取るように展開された。


「な、何だ……これは!?」

ヘラクレイトスが後退しようと叫ぶ。


だが、遅すぎた。

絶対的な法則が、奴の肉体を強制的に支配する。


ギギギギギッ!


両腕が限界まで強制的に真横へと引き伸ばされ、両脚が円と正方形の縁に触れるまで容赦なくこじ開けられた。

純白の部屋に、金属が引き裂かれ、歯車が砕け散るおぞましい音が響き渡る。


「グアアアアアアッ!?」


ヘラクレイトスは絶叫した。

奴の肉体は、理想的な『キャンバス』の比率とミリ単位で一致するよう、強制的に引き伸ばされ、歪められたのだ。


空中に磔にされ、すべての運動の自由を奪い去られた。

第五の哲学者は、完璧な幾何学のポーズのまま虚空に縫い付けられ、完全に意志を剥奪されたのである。


カミーユが、ゆっくりとした足取りで彼に近づいていく。

その夢見るような微笑みは、芸術に対する異常な執着とサディズムを露わにして、大きく広がっていた。

自身の火傷の痛みなど、彼女は完全に無視している。


彼女はヘラクレイトスの真正面に立った。

眼窩の中で激しく蠢く、哲学者の恐怖の瞳をうっとりと見つめる。


「とても疲れるでしょう?」

硬直した奴の顔のすぐ傍で、カミーユは耳元に甘く囁いた。

「今……あなたは完璧よ。決して変わることのない芸術作品。ずっと私と一緒に、このまま……永遠にね」


彼女は細く白い手を伸ばし、ヘラクレイトスの胸部装甲の隙間へと、ゆっくりと指を突き立てた。


熱く煮えたぎる黒いオイルに塗れた指を引き抜き、奴の顔にデタラメな線を滑らせていく。


触れられるたび、ヘラクレイトスは筆舌に尽くしがたい激痛に襲われたが、身震い一つすることすら許されない。

己の肉体という名の牢獄に囚われていた。


カミーユはヘラクレイトスを「生きたキャンバス」に変えた。

絶対的な静寂の中で己のサディズムを静かに堪能し、無邪気な子供のような笑顔を浮かべながら、臓腑を掻き回される哲学者の絶叫を極上の音楽として聴き入るのだった。


ここに、第五の哲学者は討ち取られた。


——同時刻。


カミーユの狂気とサディズムの舞台から遠く離れた別の場所。

第四の哲学者ピタゴラスが構築した異次元空間において。


イヴは微動だにせず、静かに立っていた。

彼女の眼鏡のレンズに青いホログラムの光が反射しているが、その表情には一切の感情が読み取れない。


眼前の宙には、ピタゴラスが浮遊している。

青く輝く幾何学的なシールドに囲まれた、第四の哲学者。


「貴様の生存確率はゼロに等しい。私に勝つ見込みなど存在しない」

ピタゴラスの機械的な声が響く。


イヴはスッと手を伸ばし、指一本で眼鏡のブリッジを押し上げた。


「あなた方の兵士たちの記憶データから導き出した結論です。私たちに対抗できるのは、上位三名の哲学者のみ」


彼女の冷徹な瞳が、氷のように鋭く光る。


「そして、あなたはそれに該当しません」




【読者への問いかけ:今回は不気味で演劇的な会話と、狂気を帯びた章にしたかったのですが、この描写の雰囲気はいかがでしたでしょうか?】

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