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あらすじ:ザイロスと太陽軌道帝国の熾烈な戦いが、四つの戦線で続く。前回はザイロスが優勢だったが、果たして今回は……?
暴走する屑鉄の巨人の、破滅のカウントダウンがゼロに近づいていた。
——破滅は免れない。
ドクンッ、ドクンッ……。
その金属の心臓の鼓動は、天王星……いや、オリオン星の地殻を完全に引き裂くほどの、破滅的な大爆発の予兆だった。
——だが。
「爆発の教義」
眩い笑顔と圧倒的なオーラと共に、イザベラは膨大なドグマのエネルギーを解き放った。
屑鉄の巨人がニクシアに気を取られ、ドグマ捕食の能力が弱まった一瞬の隙を突いたのだ。
それは単なる攻撃ではない。
彼女が愛してやまない「完璧な美」を体現する、芸術的なショーだった。
ドゴォォォォォォンッ!!
巨人の体躯が、内側から吹き飛んだ。
黒いオイルと錆びた金属片が、土砂降りの雨のように四方八方へと降り注ぐ。
鋼鉄の骨組みが千切れ飛ぶ中、巨人の双眸から光が失われた。
「助かったでござる、イザベラ殿……。この命、貴女に救われた」
カオリが、苦しげに深く息を吐き出す。
刀を大地に突き立てて辛うじて身を支える彼女の足元では、ニクシアが何事もなかったかのように静かに鳴いていた。
「あーもう、本当に骨の折れるステージだったわね!」
オイルで衣装が汚れたことなど気にも留めず、イザベラは恍惚とした声で叫んだ。
だが巨人が崩れ落ちた直後。
新たなザイロスの歩兵部隊が湧き出し、狂ったように彼女たちへと這い寄ってきた。
ズズズズズ……ッ!
それでも、イザベラは意に介さない。
満面の笑みと、燃え盛るようなショーへの情熱と共に、彼女は片手を高く掲げた。
「爆発の教義」
彼女の掌の上に、先ほどよりもさらに高密度で、光り輝くエネルギーの球体が形成される。
ズガァァァァァァンッ!!
放たれた光球が敵の群れを跡形もなく粉砕し、オリオンの白海の空全体を照らし出すほどの超大爆発を引き起こした。
ふぅ、と。
誇らしげな勝利の笑みを浮かべ、イザベラが息をついたその時……。
カオリの影の中心から、レイラがゆっくりと姿を現した。
いつもの毒を孕んだ優雅な微笑みはない。
その顔は、背筋が凍るような暗く恐ろしい険悪さに沈んでいた。
「ちょっとレイラ? 開演してからずっと、どこに隠れてたわけ?」
勝利の余韻に浸ったまま、イザベラが声を張り上げる。
——だが、空気が変わった。
ゾクッ……。
息苦しいほどの冷気と陰鬱な闇が、オリオンの白海を呑み込み始める。
レイラの表情は、異常なまでに深刻だった。
イザベラの顔から笑みがスッと消え去り、警戒に満ちた戸惑いが浮かぶ。
「……レイラ? ねえ、何か言いなさいよ」
——
首都の境界近くに位置する、底なしの深い谷。
マディ・ロール将軍は無言で立っていた。
その冷酷な双眸は、空中に展開された無数のホログラム・スクリーン越しに戦況を注視している。
ザイロス軍の最大かつ最も致命的な戦力が、皇帝の妻たちの殲滅に全神経を集中させているのを確認すると——将軍の粗削りな笑い声が響き渡った。
「フハハハ……作戦は成功だ。太陽軌道帝国、万歳」
彼は両手を開き、己の掌を、そして眼下に広がる虚無の谷底を冷ややかに見つめる。
「至上の悦びだ。すべては……皇帝陛下のために」
妻たちを囮にするという暴挙。
それすらも、マディ・ロールが綿密に計算し尽くした戦術に過ぎなかった。
ザイロスの重装戦争兵器が妻たちとの死闘に引き寄せられる一方で、中央指揮を失った圧倒的多数の歩兵や屑鉄の傭兵たちは、この緑豊かな谷を抜け、首都マリンへと這い進んでいたのだ。
これこそが、マディ・ロールの真骨頂——『双翼包囲陣(三日月の罠)』。
彼は自軍の歩兵の大部分にゆっくりとした後退を命じ、彼らを生きた餌として、ザイロスの大群を塹壕の奥深くまで引きずり込んだのだ。
そして、谷が最後の一人のザイロス兵を呑み込んだ瞬間……。
「……喰いついたな」
将軍は、悪魔のような声で囁いた。
「空を照らせ」
シュゴォォォォォォォッ!!
自爆ドローンの群れが、黒い雨となって侵略者たちの頭上に降り注ぐ。
それと同時に、『深紅の軌道照準器(紅の照準レーザー)』の極太の光条が惑星の大気圏を引き裂き、一瞬にしてザイロスの軍勢を灰燼に帰した。
——生存者、ゼロ。
大自然は焼け焦げ、煮えたぎるオイルと溶けた金属の悪臭が、かつて谷だった場所の面影を完全に塗り潰す。
たった一度の戦略的打撃。
それだけで、マディ・ロールはザイロス軍の先鋒を完全に粉砕したのだ。
軍事的に見れば——太陽軌道帝国の完全なる勝利だった。
——
囁きの森、その最深部。
ザイロスがセリーヌの体を呑み込んだ直後、ロキシーの怒りが爆発した。
すでに肉体はボロボロだった。次に放つ一撃が、自身の筋繊維をズタズタに引き裂くことは痛いほど分かっていた。
だが、彼女に一切の躊躇はなかった。
「獣の理」
純粋なアクシオムのエネルギーが、直接筋肉へとポンプのように注ぎ込まれる。
彼女は恐るべき野獣の怪力で大地を殴りつけた。
ドグシャァァァァァァッ!!
地殻が真っ二つに割れ、岩盤が崩壊し、彼女は地底深くへと真っ逆さまに落下していく。
獣のアクシオムの代償として、損傷した腕から鮮血が派手に飛び散るが、ロキシーは漆黒の闇の中をただひたすらに落ち続けた。
ズドンッ!!
どん底へと激突した瞬間。
目の前に広がる光景に、ロキシーの全身の血が凍りついた。
セリーヌが、空中に吊るされていた……。
彼女の腹部を、ザイロスの『機械の根(鋼鉄のウイルス)』から伸びた歪な金属の杭が、無残にも貫いている。
——叫んではいない。
——泣いてもいない。
——恐怖すら、微塵も感じていなかった。
セリーヌの瞳は、生命の気配が完全に欠落した、病的なまでに有毒な緑色の光を放っていたのだ。
「生命の流転:収奪(逆流ライフ・フロウ)」
ザイロスがセリーヌを捕食したのではない。
彼女が、ザイロスを捕食していたのだ。
ギュギュギュギュギュッ……!
彼女は、鋼鉄のウイルスそのもののエネルギーを凄まじい勢いで吸い上げていた。
彼女を喰らおうとした数千体のザイロスの幼子たちと生きた鋼鉄の根が、干からびた虫けらのようにポロポロと地面に崩れ落ちていく。
ガシャン……カラン……。
一片の慈悲も躊躇いもなく生命エネルギーを搾取され、彼らの金属の胸はひしゃげ、ただの命なきクズ鉄へと変わっていく。
ギギギ……。
セリーヌが、ゆっくりと首を回してロキシーを見た。
その虚ろな表情には、かつての心優しき植物少女の面影など微塵も残っていない。
「……心配いりませんよ、ロキシー」
パラパラと金属の灰が雪のように舞い散る中で。
セリーヌは、人間の感情を完全に削ぎ落としたような空虚な微笑みを浮かべ、静かに囁いた。
「わたしはただ……わたしたちのお庭から、邪魔な雑草を抜いているだけです」
章末の問い:第十六章へようこそ。今回は作者からのメッセージはありません。




