惨たらしい神堕としの詩
【さあさあ皆様、しばし足を止めてお聞きくだされ、今宵お話しするのは。神堕としの物語にございます】
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シド・クオンの動きは疾かった。
母である慈愛の竜に対して、無数の刃を突き立てたのだ。
これは自らの竜の鱗を具現化させたものであり、シド・クオンの自負そのものが破壊力となる。
巨大な慈愛の竜は、体中を切り刻まれ血まみれになる。
しかし、慈愛の力。カミーユの身体にも流れる血の力で、その傷は立ちどころに癒やされる。
「俺が時間をくれてやる。愚妹よ。その間にあちらを任せる」
神を堕とし、自らも大地に倒れたカミーユは、美しい草花を踏みしめながら立ち上がる。
目の前に居るのは神。カミーユが生涯をかけて祈ってきた存在だった。
わかっていた。
理解していないふりをしていた。
神がいるのであれば、このようなことが起こるはずはないのだと。このような苦しみがあるはずはないのだと。
つまり、神は人のためにあるのではなく、神が人のためにあるのだと。
見返りを求めてはいけない。積み重ねなければいけない。捧げなければいけない。全てを。
駄目だ。カミーユは思った。
愛するものがいる。守るものがいる。癒やしてくれるものがいる。
これらを捧げることなど出来ない。
神に祈ることは出来ない。
つまり、
神を堕とすしかない。
カミーユは聖骸布を握りしめ、自らの心の底にある紅い魔力を解き放つ。
その瞬間、天国のようだった光景は全て腐り落ち、カミーユに食われていく。
神の服の裾も汚れ、侵食され、神の皮膚も、ボロボロと崩れていった。
カミーユは深く膝を曲げる。
すでにカミーユの筋力は、空間を跳ぶ魔法の速度すら凌駕していた。
カミーユは空に向かって跳躍した。そして、神の頬を拳で殴りつける。
その一撃は神を昏倒させ、地獄の大地に伏せさせた。
カミーユは即座に神の胸の上に立ち、胸に向かって拳を連続して叩きつける。
それは神の胸を穿ち、骨を断ち、肉を断ち、心臓を砕き、背骨を折り、身体を貫いた。
カミーユは左手で神の巨体を持ち上げ、空に投げた。
中空にある神に向かって、カミーユは魔剣星影を抜く。そして、竜語で命じる。
この剣で切られるものに等しく死を。
それは死の呪い。神すら抗えぬ。神堕ち(かみおち)の呪い。
そして、剣が閃いた。
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【今宵の調べはここまで。騎士の剣は何を起こすのか。また明晩、リュートの弦が弾ける時まで取っておくことにいたしましょう】




