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〜神堕騎士道浪漫譚〜『竜血のカミーユ』  作者: 林美鈴
第三章:其は神話の激動。「貪欲」と「慈悲」の母を殺し、「真なる神」すら粉砕する、愛と神堕ちの最終詩
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神堕ちのそのあとで

 カミーユ・ロラン公爵は凛々しく、美しく、正義感に溢れ、女性に好かれる理想の騎士である。


 ここ、ベラルーン王国では、近年は戦もなく、平和な時が続いていた。


 近衛隊長となったクラリスが、執務室のカミーユに報告する。


 これは定時連絡であり、何が起きたということではない。


 クラリスがカミーユの愛人であることは公然の秘密であったが、カミーユの凛々しく美しい姿を見ると、それもやむ無しかと。誰もが思う。


 同時に、宰相サラ・ハイアンも入室する。彼女は新領土の収穫高の回復ぶりを報告に来たのだ。カミーユが総督に任じたヘブナーがよく働いているという。


 この日は執務室に、女王アナスタシアまでやってきた。急な使者により、昼食を共に取る約束を反故にされ、涙目で抗議に来たのだ。


 カミーユはお茶の時間を作るということで、妻の機嫌をとった。


 夕刻になり、カミーユは邸宅へ戻る。

 そこには、妻エトナと妻ロザリア、従者フローラと愛人のユマとカリンも居る。


 家族とは、皆で夕食を取ることを、取り決めている。


「そう言えばカミーユ。知っているかしら」


 ロザリアは最近化粧を覚え、可憐さに加え、妖艶さを魅せるようになっていた。


「〜神堕騎士道浪漫譚〜『竜血のカミーユ』って、吟遊詩人が謡っているんですって。あなたが主役なのよ。カミーユ」


 エトナが不思議そうに問う


「どのようなお話なのですか」


 ロザリアが楽しげに語る。


「それが、可笑しいのよ。カミーユが竜を倒したり、巨人と力比べをしたり、一万の軍隊と戦ったり、最後は神様まで倒しちゃうんだから」


 ユマが呆れて言う。


「吟遊詩人たちは商魂たくましいな。ちょっと名が売れたらすぐこれだ」


 カリンはユマの言葉を拾う。


「有名税は仕方ないって、ハイアン侯爵もおっしゃっていました」


「そうよね。田舎でくすぶっていたカミーユを拾い上げて、公爵まで押し上げたのは、お母様の功績なのだから。そんなおとぎ話なんかじゃないわ」


 ロザリアは言い切る。


 和やかに食事は終わり、フローラは侍女たちに食事を片付けさせる。


 そして、ワインを片手に夕涼みをしていたカミーユに寄り添う。


「カミーユ様。ありがとうございました」


「フローラ。急にどうしたのです。お礼を言いたいのは私の方です。いつもありがとうございます。」


「いえ、急に言葉が出てきたのです。気にしないでいただけると幸いです」


 そうして、従者は騎士に頭を下げた。



 ――――――――――――――――――――


「愚妹よ。神に堕ちた感慨はどうだ。何か思うところはあるか」


「いえ、皆を少し幸せにできればと、そう願っています」


「くだらぬ願いだ。だが、愚かなお前にはふさわしい」


「姉上こそ、竜を放っておいてもよいのですか」


「あれこそ古い種だ。滅びに任せるがよかろう」


 シド・クオンは嗤った。


 カミーユは笑わなかった。ただ微笑み、世界を見守っていた。


 ――――――――――――――――――――


 〜神堕騎士道浪漫譚〜『竜血のカミーユ』 完


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