愛しき呪い、神堕ちの予兆の詩
【さあさあ皆様、しばし足を止めてお聞きくだされ、今宵お話しするのは。騎士の目覚めと安息の物語にございます】
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カミーユは夢の中、暗闇をたどる。
いつまでも続くと思われた暗闇の中、金色と赤色の長い布が見えた。
カミーユはそれにすがる。
布の先、反対側には、愛しい人々、フローラやアナスタシア達がいるように感じられた。
カミーユは目を覚ました。
寝台の周りには、自らが愛する乙女たちが寄り添っている。
身体には表が金色で裏が赤地の布がかけられていた。
布にはミスリルのピンが止められており、カミーユの身体に沿うようになっていた。
布の左右をフローラとアナスタシアが握る。
「カミーユ様。ああ、カミーユ様」
「カミーユ。カミーユ」
フローラとアナスタシアがカミーユに抱きつく。
カミーユは二人を抱きとめる。
自分は何時間ほど眠っていたのだろうか、記憶がはっきりとしない。
「カミーユ、あなた。目が」
ロザリアがカミーユの瞳を見て呟く。
「瞳が赤くなっているわね。具合はどう。カミーユ」
サラがカミーユの体調を尋ねる。
「問題ありません。手鏡をいただけますか」
フローラから手鏡を受け取り、自らの目を確認するカミーユ。
「確かに赤くなっていますね。しかし、視界に影響はありません」
カレンに抱かれた生首、ペストリエンスが答える。
「王女の力が戻られたのでしょう。貪欲なる女王の力が。赤き略奪の力が。世の滅びが。ああ、なんということだろうか」
ペストリエンスは悲しみの演技をする。
「恐ろしいことばかり。カミーユはそんなことしない」
アナスタシアはカミーユに頬ずりする。
カミーユは普段は冷たい様子の妻が行う愛らしい姿に微笑む。
そして、自らの家に秘められた魔力を感じる。
確かに、体の奥に莫大な魔力を感じる。
しかし、その魔力自体には、何か鍵がかけられているようであり、すぐに外に漏れることはないようだった。
カリンが言う。
「お話してもよいでしょうか。カミーユ様の中に竜を感じます。これほど強力な竜を感じたことはありません」
カミーユは尋ねる。
「カリン。教えてくださってありがとうございます。それは地獄から来た竜たちと同じようなものですか」
カリンは答える。
「似ています。似ていますが、もっと深く、暗く、紅いイメージがあります」
カミーユはカリンに語りかける。
「ありがとうございますカリン。カリンは私が恐ろしいですか」
カリンは即座に首をふる。
「いいえ、決してそんな事はありません。私が知る竜はもっと恐ろしく、暴力的でした。カミーユ様からはそのようなことは一切感じません。怖く、ありません」
カミーユはカリンの言葉を信頼した。そして、自らに侍る乙女たちに告げる。
「皆、心配をかけました。私はもう大丈夫です。寝台から起きたいので、少し場所をいただけますか」
皆、カミーユのそばから離れる様子はない。
「今日くらいはそのまま休めって。いつも無理してるんだからさ」
ユマの言により、師ゴダールと剣士ローレンは退出し、カミーユと乙女たちは、カミーユの部屋で休むこととなった。
カミーユは、隣の部屋、エトナに合わせた巨大な寝台のある部屋で、乙女たちと共に眠りにつくことになる。
それが、カミーユと乙女たちの最後の安息となった。
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【今宵の調べはここまで。今はただ眠る。英雄は。また明晩、リュートの弦が弾ける時まで取っておくことにいたしましょう】




