↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜神堕騎士道浪漫譚〜『竜血のカミーユ』  作者: 林美鈴
第三章:其は神話の激動。「貪欲」と「慈悲」の母を殺し、「真なる神」すら粉砕する、愛と神堕ちの最終詩
PR
86/91

愛しき呪い、神堕ちの予兆の詩

【さあさあ皆様、しばし足を止めてお聞きくだされ、今宵お話しするのは。騎士の目覚めと安息の物語にございます】


 ――――――――――――――――――――


 カミーユは夢の中、暗闇をたどる。


 いつまでも続くと思われた暗闇の中、金色と赤色の長い布が見えた。

 カミーユはそれにすがる。


 布の先、反対側には、愛しい人々、フローラやアナスタシア達がいるように感じられた。



 カミーユは目を覚ました。

 寝台の周りには、自らが愛する乙女たちが寄り添っている。


 身体には表が金色で裏が赤地の布がかけられていた。

 布にはミスリルのピンが止められており、カミーユの身体に沿うようになっていた。


 布の左右をフローラとアナスタシアが握る。


「カミーユ様。ああ、カミーユ様」


「カミーユ。カミーユ」


 フローラとアナスタシアがカミーユに抱きつく。

 カミーユは二人を抱きとめる。


 自分は何時間ほど眠っていたのだろうか、記憶がはっきりとしない。


「カミーユ、あなた。目が」


 ロザリアがカミーユの瞳を見て呟く。


「瞳が赤くなっているわね。具合はどう。カミーユ」


 サラがカミーユの体調を尋ねる。


「問題ありません。手鏡をいただけますか」


 フローラから手鏡を受け取り、自らの目を確認するカミーユ。


「確かに赤くなっていますね。しかし、視界に影響はありません」


 カレンに抱かれた生首、ペストリエンスが答える。


「王女の力が戻られたのでしょう。貪欲なる女王の力が。赤き略奪の力が。世の滅びが。ああ、なんということだろうか」


 ペストリエンスは悲しみの演技をする。


「恐ろしいことばかり。カミーユはそんなことしない」


 アナスタシアはカミーユに頬ずりする。


 カミーユは普段は冷たい様子の妻が行う愛らしい姿に微笑む。

 そして、自らの家に秘められた魔力を感じる。


 確かに、体の奥に莫大な魔力を感じる。


 しかし、その魔力自体には、何か鍵がかけられているようであり、すぐに外に漏れることはないようだった。


 カリンが言う。


「お話してもよいでしょうか。カミーユ様の中に竜を感じます。これほど強力な竜を感じたことはありません」


 カミーユは尋ねる。


「カリン。教えてくださってありがとうございます。それは地獄から来た竜たちと同じようなものですか」


 カリンは答える。


「似ています。似ていますが、もっと深く、暗く、紅いイメージがあります」


 カミーユはカリンに語りかける。


「ありがとうございますカリン。カリンは私が恐ろしいですか」


 カリンは即座に首をふる。


「いいえ、決してそんな事はありません。私が知る竜はもっと恐ろしく、暴力的でした。カミーユ様からはそのようなことは一切感じません。怖く、ありません」


 カミーユはカリンの言葉を信頼した。そして、自らに侍る乙女たちに告げる。


「皆、心配をかけました。私はもう大丈夫です。寝台から起きたいので、少し場所をいただけますか」


 皆、カミーユのそばから離れる様子はない。


「今日くらいはそのまま休めって。いつも無理してるんだからさ」


 ユマの言により、師ゴダールと剣士ローレンは退出し、カミーユと乙女たちは、カミーユの部屋で休むこととなった。


 カミーユは、隣の部屋、エトナに合わせた巨大な寝台のある部屋で、乙女たちと共に眠りにつくことになる。


 それが、カミーユと乙女たちの最後の安息となった。


 ――――――――――――――――――――


【今宵の調べはここまで。今はただ眠る。英雄は。また明晩、リュートの弦が弾ける時まで取っておくことにいたしましょう】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。