【097】寺生まれのTさん
本日は、ぼくと哀名と道家くんで、図書室に向かった。
宿題の作文を書く場所を探していたからだ。教室はみんながいたから、静かなところにいくことにした。
今日の宿題に、教科書の絵をみて、『この絵をもとにした物語を書きましょう』というものがあった。作文だ。ぼく達は三人で、それを完成させることにした。
ぼくは教科書を開く。ぼくには大陸の地図に見えた。そこでぼくは旅をするお話を書いた。モデルはぼくと哀名、そして道家くんだ。冒険をしたり、ドラゴンと会ったり、創造するとわくわくする。一区切りついたとき、ぼくは原稿用紙からちょうど顔を上げた道家くんを見た。
「道家くんは何に見えたの?」
「ボクはコウモリに見えたよ」
すると哀名も顔を上げた。それに気づいてぼくは聞いた。
「哀名は何に見えた?」
「私はリボンに見えたの」
ぼく達は全く別のものに見えていたみたいだ。もしかしたら、世界の見え方も、様々なのかもしれない。異世界も現実世界も、見方の違いだったりするのだろうか。
――家に帰るとお父さんが、ぼくにココアをいれてくれた。今日は亮にいちゃんはバイトみたいだ。
「しかし寺生まれのTさんはすごいな。今は次男の――泰我先生の方が、そうなんだな」
お父さんがぼくに言ったので、ぼくは首をひねる。
「どういうこと?」
「寺生まれのTさんはな、病いすら吹き飛ばすんだ。呪いも幽霊もなにもかも『破』と言って吹き飛ばす、すごい人なんだよ」
たしかにぼくも、何度も『破』と聞いている。
「寺で会ったというし、薺が奇跡的に全回復したのは泰我先生のおかげかもしれないな」
お父さんはそういうと、うれし泣きするような目をした。
「薺がな、原因不明だったんだけどな、完全に回復したんだ。みんな奇跡だと言ってる」
「本当!?」
「ああ、今回の定期検診で、どこにも異常がみつからなかったんだ」
「やったぁ!」
ぼくは思わずとびはねてよろこんだ。
翌日学校で、ぼくは泰我先生を呼び止めた。昼休み前に先生が教室を出ていくときをみはからって、声をかけた。
「どうしたんだ? 楠谷」
「あ、あの! もしかして薺の病気を治してくれたんですか?」
すると泰我先生が顔をそむけて、せきばらいをした。
「内緒だぞ?」
「うん」
「あれは 霊障だったからな」
「なに? それ」
「霊障というのは、たまたま幽霊や呪いなどに触れてしまい、病気になることだ。病気の種類も様々なんだ。ただな、世界には薺くんと同じで原因不明だけど霊障でないものも多いし、めったに霊障はない。病気になったらまずはお医者さんにかかるべきだ。いいな?」
「はい!」
「それに俺は少しだけ、気合いを入れただけだ。ケセランパサランの 加護があると気づいたから、それに力を込めたんだ。だから治ったのは、ケセランパサランがもたらしてくれる幸運と、薺くんの体が頑張ったからだよ」
それを聞いて、ぼくは頷いたけど、先生を見て笑った。
「それでも、本当にありがとう、先生」
すると泰我先生は、ぼくのカタをポンと叩いてから、職員室に向かって歩いていった。




