【093】進路
道家くんの家から、哀名と二人でぼくは帰った。
家を出て、少ししてから手を繋ぐ。ぼくは何も言わなかったけど、哀名はいやがらなかった。それがうれしい。
「ねぇ、哀名」
「なに?」
「哀名はどこの中学校に行くの?」
「私は、きさらぎ永桜学園中学校」
私立の学校で、ぼくも聞いた事があった。
市内だし、会おうと思ったら会えるけど……ぼくは亮にいちゃんの話を思い出して、少しだけ不安になった。
「離ればなれだね」
「そうね」
「お休みの日はいっぱい遊ぼう! ぼく、メッセージもたくさん送る」
「私も送るよ。それに、遊びたい――また、デートしようね」
「う、うん!」
どうやらプラネタリウムを、哀名もデートだと思ってくれていたみたいだ。
そんなやりとりをしてから、ぼく達はバスに乗って帰宅した。
「なんで透はいつもそうなんだよ!!」
「亮、あのさ、聞きなって」
「だから俺は――」
「さっさと遺産を相続すればいいのに。そうすれば、こっちの家にも迷惑をかけないし」
「でも俺は、あちらとは切れてる」
「だからって大学進学を止めて働くの? 亮は、将来お医者さんになりたいんじゃなかったの? 小さい頃言ってたよね」
「それは……そうだけど……」
遊びに来ていたらしい透くんと、亮にいちゃんがケンカをしていた。
二人の聞こえてきた話を聞いていると、透くんはなんだかんだで亮にいちゃんにやさしいと思った。ときどき透くんはイジワルだけど、それも言い方の問題のような気がする。
「ただいまー!」
ぼくが声を出すと、二人のやりとりが、ピタリと止まった。
中に入ってリビングに行くと、亮にいちゃんが苦笑するような顔をしていた。
「おかえり、瑛」
亮にいちゃんの言葉にうなずきながら、ランドセルをソファにおく。
「今、叔母さんと薺と父さんは出かけてる」
「そうなんだ」
ぼくが答えると、透くんが笑った。
「瑛はデートだったの?」
「ち、ちがうよ、今日は! 今度また行くんだよ!」
「『今日は』に、『また』か。瑛も大人になったんだね。透お兄さんとしては、成長を喜びたいけど、ちょっと……笑いそう」
透くんはやっぱりイジワルなだけなのかもしれない。笑うなんてひどい。




