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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅢ】―― 序章:きさらぎ駅から ――
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90/101

【090】ケセランパサラン

 哀名の家から帰る途中、ぼくの目の前に白いふわふわな小さい丸いものが見えた。


「なんだろう?」


 ぼくが手を伸ばすと、それは柔らかくて、よく見たら目がついていた。不思議に思ってぼくは持って帰った。


 お父さんが出迎えてくれたので、ぼくは両手にのせたそれを見せる。


「お父さん、これなぁに?」


 するとお父さんも驚いた顔をした。


「ケセランパサランじゃないか!」


 そう言うと、あわてたようにお父さんが、リビングに行った。

 そしてクッキーの空き缶を持ってもどってきた。フタを開けて、ぼくを見る。


「ここに入れてごらん」

「うん」

「これはな、ケセランパサランといって、幸運の使者なんだよ」

「幸運の使者?」

「ああ。年に一度だけ、運がいいと捕まえられるんだ」

「そうなの?」


 クツを脱いで、お父さんと二人で歩く。お父さんはリビングに入ると、柚子叔母さんに言った。


「おしろいを持ってないか?」

「そんなじだいさくごのものを持っているわけないでしょ」

「ケセランパサランの食料なんだよ」

「ケセランパサラン? お兄ちゃんが昔見たって言う?」

「そうだ。瑛が見つけてきたんだ」

「血筋かしら? ファンデの上にのせるパウダーならあるけど」

「それでいい。少しわけてくれ」


 お父さんがそういうと、叔母さんが立ち上がり、チェストの上にあったカバンから、けしょうポーチを取り出して、丸いけしょうひんを取り出した。


「はい、これよ」

「ありがとう」


 お父さんが笑顔になって、コナをクッキーの缶に入れた。ぼくがのぞきこむと、ケセランパサランがおいしそうに食べていた。


「ケセランパサランはな、お願いごとも叶えてくれるんだ」

「そうなんだ? じゃあ薺が元気でいますようにってお願いしなきゃ」

「――ああ、そうだな。瑛はいい子だな」


 お父さんが、片手でぼくの頭をなでた。

 子どもあつかいされても、いやじゃない。ただちょっと、照れくさかった。





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