【072】誕生日
こうしてぼくの誕生日が訪れた。日曜日の本日、ぼくは目覚ましのアラームをかけなかったから、自然と起きた。今日はお父さんもおやすみだと話していたし、プレゼントをもらえるかもしれない。そう考えるとワクワクした。
ぼくは着替えて、リビングに向かう。
そしてびっくりした。
「おたんじょうびおめでとう!」
透くんがそう言って、パンっとクラッカーをならしたからだ。
その場にいた人が、みんなクラッカーのひもをひっぱった。
水間さんと步夢くんもいる。当然、お父さんと亮にいちゃんもいる。
だけど一番びっくりしたのは、哀名がいたことだ。
「ど、どうして?」
「俺と亮で企画して、みんなに声をかけたんだよ。瑛にはヒミツにしたかったから、内緒でね。サプライズだよ」
ぼくはポカンとした。そういえば二人は、前にひそひそと何か話をしていた。
すごくおどろいているぼくに、亮にいちゃんが机の上のケーキを手でしめした。
そこには亮にいちゃんの手作りのデコレーションケーキがあった。チョコレートがのっていて、ぼくの名前とハッピーバースデーという言葉が書いてある。イチゴがたくさんのっていて、生クリームも美味しそうだ。たまに亮にいちゃんが作ってくれるお菓子も、ぼくは大好物だ。
「よし、ろうそくをたてようか」
お父さんがそう言って、ケーキに十二本の細長く小さいロウソクをさしていく。カラフルだ。そこに水間さんが火をつけていく。ぼくは步夢くんと哀名の間に立って、ドキドキしながらそれを見守る。
「さ、瑛。火を消して」
お父さんに言われて、僕は吹き消した。
「ありがとう!」
思わず笑顔でそう言うと、パシャリと音がして、透くんに写真を撮られた。
「あとで寮に送っときますね」
「ああ、よろしくね」
透くんの言葉に、優しくお父さんがうなずいた。
それからみんなでも写真を撮った。ぼくはここに道家くんもいたらいいのにと思ったけど、水間さんと步夢くんを見て、少し考えた。会わせないほうがいいのかもしれない。いいや、でも今の道家くんは、悪いことなんてしない。だからいつか、今はもう大丈夫だって、二人にも伝えたいと思った。いつか……学習発表会より前に伝えたい。
その後ぼくは、みんなにプレゼントをもらった。
ほしいとは思っていたけど、ぼくにとっては、みんながお祝いしてくれたことが、一番のプレゼントで、大切な思い出になった。




