【069】黒板じじい
次の日の放課後、ぼくと道家くん、哀名と椿ちゃんが、それぞれ調べた七不思議の話を、みんなで〝きょうゆう〟することになった。
「十三階段はね、何度数えてもただの階段だったよ! ねっ? 詩織ちゃん」
「ええ」
「それとね、ベートーベンの肖像画も、ただの紙で、変化なし」
「そうね」
それを聞くと、当然だという顔で道家くんがうなずいていた。
「あの肖像画は何年かに一回、新しくなってるプリントされたただの紙だしね」
そうだったのかと、ぼくもなっとくした。
それにしても哀名は椿ちゃんと楽しそうにしている。ここのところ、前よりさらに笑顔が増えて、二人はとっても仲良しだ。哀名が笑っていると、ぼくもうれしい。
「あとは、ぼくと道家くんが担当の『黒板じじい』だけだね」
だいぶ班の活動が進んだから、ぼくはよかったなと思った。ローレルの役にも立つはずだ。そのとき、ガラガラと教室のとびらが乱暴に開いた。
「聞いてくれ!!」
かけこんできたのは、西くんだった。
「二組の夏荻くんが、黒板に変な文字見つけたんだって!」
それを聞いて、ぼくと道家くんは顔を見合わせた。
「白いチョークで、『助けて』って、黒板いっぱいに書いてあったらしいぞ! 怖かったからあわてて全部消したんだって! 誰もいなかった児童会室に、急に書かれてたんだって! きっと、黒板じじいだ!」
まさに今、ぼくと道家くんが調べようとしていたものだ。
教室中が、ざわざわとしている。椿ちゃんが怖そうな表情になった。
「明日のお昼休みに、夏荻くんに聞きに行ってみようか」
ぼくの言葉に、瞬きをしながら道家くんがうなずいた。
次の日の昼休み。
ぼくと道家くんが、児童会室にいって夏荻くんに声をかけると、夏荻くんが廊下まで出てきてくれた。いつも児童会の子達は、給食が終わるとここにいる。
「どんな文字が書いてあったの?」
「ええとね、『助けて』『死ね』『うらんでる』『殺す』とか、とにかく怖い文字がたくさん、黒板をうめつくすように、書かれてたんだ。大きさもいろいろだったけど、色は全部白」
思い出すように話す夏荻くんは、真っ青な顔色をしている。
「見ると死ぬっていうよね……」
「見てすぐに消したなら死なない」
不安そうな西荻くんにむかって、道家くんが断言した。
「本当?」
「うん。今、ボクと瑛は七不思議を調べていて、突き止めたから本当」
「そうなんだ、ありがとう!」
つきとめたというのはウソだけど、道家くんがいうのだから、死なないというのは本当だと思う。ぼくは何も言わずにうなずいた。
昼休みの終わりが近づいていたので、ぼく達は引き返す。
すると空き教室から、チョークの音が聞こえてきた。なんだろうかと思い、ぼくは思わず立ち止まる。そうしたら、道家くんに、強く腕をつかまれた。
「中に黒板じじいがいるみたいだから、見ない方がいいよ。直接書いているところを見ると、問答無用で死ぬからね」
それを聞いてぼくは息をのみ、あわててうなずき歩きはじめた。
道家くんは、本当にたよりになる。
放課後になってから、ぼくと道家くんは、西荻くんへのインタビューなどを紙にまとめて、解決方法も付け足した。
――不思議な黒板の白い文字を見かけたら、すぐに消さなければならない。
「うん。これでいいと思うよ。黒板じじいは、『本物』だから、すぐに消さないとならないし、放置すると被害が広がって危険だからね」
道家くんも完成した紙を見て、まんぞくそうにうなずいた。




