【065】消えた手鏡
日曜日は、お父さんと亮にいちゃんと薺のお見舞いに行った。
病院の先生もそこにいて、お父さんに笑顔でお話をしていた。
「薺くんはだいぶよくなっています」
「ありがとうございます、先生」
お父さんがお辞儀をしたので、ぼくと亮にいちゃんも頭を下げた。
笑顔でお医者さんは病室から出て行った。
それからぼくは、薺の枕元を見る。ナナちゃんの手鏡は、今もない。事件のあと何度かここにお見舞いに来たけど、薺がいうには、『いつの間にかなくなっちゃった』らしい。
ぼくはとってもほっとしている。
だけどなずなが回復しているというお話は、本当によかった。
「ねぇ薺。薺も、もし外出ができるときは、ぼくの学習発表会に来てね?」
「うん。よくなったら行きたい! ぼく、頑張る!」
薺の分のチケットも、忘れないで用意しようと思いながら、ぼくは薺を見ていた。
それから薺と話をした後、ぼく達三人は病院を出た。
「今日はなにを食べて帰る?」
お父さんの言葉に、亮にいちゃんがうなる。
「たまには寿司は?」
「ああ、回転寿司もいいな。そうしようか。瑛は玉子といくらが好きだろう?」
「うん。あとは甘エビも大好き!」
ぼく達はお寿司屋さんに向かって歩く。
「薺が退院したら、四人でもごはんを食べに行こうね!」
すると二人がぼくを見て、それぞれ笑顔になってうなずいた。
「いいな、焼き肉に行こう」
「亮、即決だな……まぁたまにはそれもいいか」
ぼく達は、そんな話をしながら、歩道を進んだ。




