【060】選択肢と距離
夕ご飯を食べた後、ぼくは早めにお風呂に入った。あごまでお湯につかって、ぼんやりと考える。ぼくはお風呂に入っているときは、考えごとをすることが多い。
一人で入れるようになって、もうだいぶ経つ。
最初はお父さんや亮にいちゃんと入っていたけど、ぼくはもう一人で大丈夫だ。
もっち小さい頃は、お母さんとも一緒に入っていた。薺と入ることもあった。
でも、ぼくはもう、来年には中学生だ。
……中学。
そう考えたら、ぼくは哀名のことが思い浮かんできた。
「哀名は、中学校……どこに行くんだろう?」
ぼくは市立の中学校に進学する。ただ亮にいちゃんは別の市立中学校で、高校とのいっかんせいの学校に行った。頭のいい学校だ。ほかにも私立の学校もいくつかあるし、このきさらぎ市には、進学先にいくつかの〝せんたくし〟がある。
「小学校を卒業して、みんなとわかれるのも、ちょっと寂しいなぁ……」
ぽつりとぼくはつぶやいた。それから道家くんのことを頭に思い浮かべる。
道家くん――図書室ピエロは、小学校に残るのだろうか。学校にきなよとぼくは言ったし、今では外も出歩けるようになったけど、中学校にも行くのかな?
「聞いてみようかな」
そうしようとぼくは思った。
それからお風呂をあがり、ぼくは体をふいてかみの毛を乾かしてから、自分の部屋に戻った。すると哀名からメッセージがきていた。ぼくたちは、毎日やりとりをしているから、さっきぼくが送ったものへのお返事だと思う。
《七不思議もいろいろ変わってるのね》
《そうみたい》
《わたしのお父さんとお母さんにもあとで聞いてみる。今日はお仕事がいそがしいみたいだから》
そんなやりとりをしてから、ぼくは《おやすみ》と送って、ベッドに入った。
ぼくと哀名の距離は、少しは近づいているのだろうか。近づいていたらいいなと思いながら、ぼくは眠った。




