【059】七不思議と都市伝説の変遷
だけどもう夏は終わったはずなのに、毎日暑い。
汗をかきながら家に帰ると、お父さんの靴があった。今日は早く帰ってきたみたいだ。
「ただいま」
ぼくが声をかけると、リビングにいたお父さんと亮にいちゃんが、笑顔でぼくを見た。立ち上がった亮にいちゃんが、ぼくに麦茶を出してくれた。そこでぼくは、七不思議や都市伝説について聞くのだったと思い出す。
「ねぇねぇ」
座っている二人が、ぼくを見た。
「お父さんと亮にいちゃんが小学生のころ、学校の七不思議ってあった?」
「ああ、父さんの頃は、『トイレの花子さん』『むらさき鏡』『二宮金次郎像』『勝手に音がするピアノ』『十三階段』『体育館の幽霊』で、最後の七つ目を知ると死ぬという話だったな」
七つ目はぼく達と同じだ。でも『むらさき鏡』と『勝手に音がするピアノ』と『体育館の幽霊』は、ぼくとは違う。全部ぼくは知らない。
「むらさき鏡ってどんなの?」
「ああ……ちょっと怖い話だから、瑛が二十歳になったら話してあげような」
「? うん。じゃあ、勝手に音がするピアノは?」
「誰もいない音楽室、鍵がかかっている音楽室から、ピアノの音がするそうだ」
お父さんの言葉に、麦茶を飲みながら、ぼくは怖くなった。お化けが弾いているのだろうか? 道家くんなら、何かを知っているかもしれない。
「体育館の幽霊は?」
「これも、鍵がかかってる体育倉庫から、『出して』と声がするらしいんだ。でも、誰かが閉じ込められてるのかと思って、開けてみても、そこには誰もいないらしい」
お化けも閉じ込められるのだろうか? なんだかかわいそうだ。
「お父さんのころは、こんなかんじだったな」
「ありがとう。亮にいちゃんの頃は?」
「んー、俺の時は、『トイレの花子さん』だろ、『テケテケ』に『体育館の幽霊』、あとは『ベートーベンの肖像画』と『二宮金次郎像』、それから『黒板じじい』で、最後はやっぱり知ると死ぬって話だったかなぁ」
ぼくはうなずく。『テケテケ』がぼくとは違う。
「テケテケってどんなの?」
「床を腕で走ってくる女のお化け。そのときに、テケテケって笑いながら追いかけてくるらしい」
なんだか怖そうだ。腕で走るって、なんだろう。普通は足で走ると思う。
そういえばと思い立って、ぼくは二人に聞いてみることにした。
「生首ドリブルって知ってる?」
「父さんの頃には無かったな」
「七不思議ではないんだけど、学校に出るみたい」
「俺の頃も無かったよ。学校にも出るって聞いたことがない」
二人の言葉に、〝マイナー〟なのかと考える。
「じゃあ、二人の頃は、どんな都市伝説があったの?」
「父さんの頃は、『口裂け女』とか『人面犬』だな」
「俺の頃は『メリーさん』とか。メリーさんは、高校になった今でも出るって言われる。スマホに電話が来るんだってさ」
ぼくは三つとも聞いた事が無かった。
こうしてちょっと話すだけでも、七不思議や都市伝説は、ねんねんすがたを変えるみたいだって分かった。
「ありがとう!」
ぼくは部屋に戻って、聞いた話をタブレット端末のメモ帳アプリに打ち込んで、みんなに話すことにした。




