【056】ローレル
今日は、日曜日。
僕は麦茶を飲みながら、リビングでゲームをしている。透くんがまた遊びにきているんだけど、おみやげに買ってきてくれたものだ。最初は〝ふくざつ〟そうな顔をしていた亮にいちゃんだけど、ぼくが今、きゅうけいするといったら、「仕方ないな」と楽しそうにぼくと代わって、透くんと戦ってる。亮にいちゃんのほうがぼくより、〝子ども〟な部分もあるから、ぼくは今日も家族サービスだ。
それにぼくには、このあと約束がある。
「ねぇねぇ、ぼくそろそろ出かけてくる」
「ん? どこに行くんだ?」
ぼくの言葉に、亮にいちゃんがふり返った。
「友達の家」
「そうか、いってらっしゃい。気をつけろよ」
「気をつけてね。よっし、俺の価値」
「なっ……! 人が目を離したすきに!」
亮にいちゃと透くんは、楽しそうだ。兄弟の仲は悪いよりはいい方がいいと思う。亮にいちゃんはぼくのお兄ちゃんだけど、透くんだって亮にいちゃんが好きなのだろう。
ぼくは玄関に向かって、くつをはいた。かばんを持って、外に出る。
かばんの中には、おさいふが入っている。バスで道家くんの家までいくからだ。
マンションの外に出て右に歩くと、バス停がある。
そこで少しの間待っていると、市営バスがきた。乗り込むと中にはそこそこ人がいた。ぼくは後ろの窓際のせきに座る。ぼくの前の横長のせきには、おばあちゃんが一人座っていた。
まどの外を見ると、まだ歩道のそばにはえている木は、 紅葉していなかった。けどぼくのおたんじょうびになるころには、毎年歩道がイチョウの落ち葉で黄色くなる。楽しみだ。ぼくは何度かバスがとまってはまたはしりだす間も、ずっと窓の外を見ていた。それから前を向いた。
「あれ?」
するとおばあちゃんがいなかった。座っていたところの床は、水でぬれてる。雨の日の水たまりみたいだ。おばあちゃんは、いつおりたんだろう?
そう考えたけど、すぐにぼくがおりるバス停が近づいてきたので、あわててぼくは、お金をはらうためにスマホをとりだした。
こうしてバスをおりてから、ぼくは近くにたつ細長いマンションを見た。
道家くんの家は、〝デザイナーズマンション〟の一階にある。なんと、地下室もついている。大きい部屋ではないけど、コンクリートが打ちっぱなしのかべや、黒い木の床もカッコイイ。大人っぽい。なんでも、家を借りるときに必要な、〝ほしょうにん〟には、泰我先生がなってくれたそうだ。
ぼくがインターフォンを押すと、『入って』と声が帰ってきた。
カギがあいていたので、ぼくは中に入ってクツを脱ぐ。「おじゃまします」と言ってから中に進むと、正面の部屋に道家くんがいた。
「道家くん、こんにちは」
「うん。それで? なんだっけ?」
「だから、これから『都市伝説のお化けとかで困ってる人を助ける』でしょう? そのためには、〝本部〟がいると思うんだ」
「ふぅん」
「計画をたてたり、結果をまとめたりするところ!」
ぼくが自分の計画にまんぞくして一人でうなずいていると、座っている道家くんがぼくをみた。
「部屋を借りるの?」
「ううん……〝ぐんしきん〟がないから、ぼくはこのお部屋がいいと思うな」
「……ボクは別にいいけどね」
道家くんがぼくを見て、あきれたような顔をした。
そのとなりに座って、ぼくは身をのりだす。
「あとはぼく達のチーム名をどうするかだよ!」
そのときまた、インターフォンの音がした。多分哀名だ。道家くんが立ち上がって、インターフォンに声をかける。また、『入って』と言った。
すると少しして、哀名が入ってきた。
「哀名、いま、チーム名を話し合ってるんだ」
ぼくの説明に、うなずきながら、哀名も座る。三人で低い黒のテーブルを囲みながら、ぼく達はあれやこれやと案を出し合う。
「――ローレルはどうかな? 魔除けのハーブ、月桂樹の別の名前なの」
哀名の提案にぼくはパンと手をたたいた。とってもいい案だ。
「それにしよう」
こうして、ぼく達、都市伝説のお化けで困っている人を助けるチームの名前は、ローレルに決まった。




