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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 終章:転校生 ――
55/66

【055】図書室ピエロの噂

 ぼくは道家くんと一緒に帰ることにした。なんと、外を歩くことができるというのである。


「ねぇ、どうして外を歩けるようになったの?」

「それは、ボクを瑛が、引っ張り出してくれたからだよ。その場所が、学校じゃなかったから、外も歩けるようになったんだ。考えてみると、ボクが学校を歩けるようになったのも、学校に引っ張り出してくれたやつがいたからなんだ。そのときは、学校限定で遊ぼうって言われたから学校だけだったんだけど、瑛は〝外〟っていってたから、全部大丈夫になったみたいだよ」

「ふぅん。じゃあ前にも、道家くんを引っ張ってくれた子がいたんだ?」

「――泰我だよ」

「へ?」

「あんなに成長してるなんて、人間の世界の時間って不思議だね」

「そういうもの?」


 不思議に思いつつ、ぼく達は歩く。道家くんは、今は住む家も見つけて、普段は人間のように暮らしているらしい。泰我先生が手伝ってくれたそうだ。


「そういうものだよ」

「道家くんは、もう鏡の中に誰かを引きずり込んだりしないよね?」

「うん。反省した。ボクは、引きずり込むんじゃなくて、前に踏み出すべきだったんだって、瑛に教えてもらってやっとわかったよ」


 道家くんは、嬉しそうだ。


「でも――ボクが引きずり込まなくても、このきさらぎ市には、たくさんの都市伝説の怪異がひそんでいるからね」

「う、うん……」

「ボクじゃないほかの誰かが、どこかに引きずり込むことはあるかもね」


 それを聞いて、ぼくは大切な人達が、いなくなってしまうことを考えて、少しの間考えた。果たしてぼくは、それを見過ごしていいのだろうか? いいや、いいはずがない。


「ねぇ、道家くん」

「ん?」

「ぼくたち友達だよね?」

「な、なに、急に。ボ、ボクはそのつもりだけど……? 違うの?」

「一緒に都市伝説を調べて、危ないものは倒すの、手伝ってくれない?」

「えっ」

「道家くんがいたら、〝ひゃくにんりき〟だよ!」


 ぼくはいい考えだと思った。するときょとんとした道家くんが、それから吹き出した。


「都市伝説のボクが、都市伝説を倒すの?」

「うん。一緒に、困ってる人を助けてあげようよ」

「おもしろそうじゃん」


 よかった。道家くん――こと、図書室ピエロはのり気だ。

 ちなみに名前は、 道化師(どうけし)に当て字をして、道家紫としたそうだ。


「やろう!」


 ぼくがそう言って手を差し出すと、パシンと道家くんがぼくの手を叩いた。

 そして顔を見合わせ、ぼく達は笑った。


「そうだ、哀名も誘おう」

「瑛のカノジョ?」

「ま、まだ違うよ!」

「まだ、ねぇ……」

「こ、言葉のあやだよ!」


 ぼくは焦りつつも、足を動かす。

 遠くには、きさらぎ市の駅前のビルが見える。今日もこの街のどこかでは、都市伝説が噂されているのだろうけど、図書室ピエロの噂は、多分もう囁かれない。だってぼくの友達は、今となりを歩いているのだから。




―― 【SeasonⅠ】・完 ――




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