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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第九章:図書室ピエロ ――
50/66

【050】あと一歩

 ぼく達は三人で、通路を進む。ぬめる石の床で、四方にも天井にも床にも、こけが生えている。かびくさい。だんだんと、鏡が見えてきて、その中央はぐるぐると歪んでいた。あそこからなら出られると直感した。


「もうちょっとだ、二人とも!」


 ぼくは、自分より年下の二人を、ひっしで〝こぶ〟した。

 汗をかきながら、二人が頷く。

 もうちょっとで手が届く。もう少しで、外に出られる。步夢くんも、一緒に。


 そう思った時だった。


「待て!! 待て、待て、待てぇ!!」


 ぼくの背後から、笑うような怒るような、そんな声が聞こえてきた。

 首だけで振り返ると、ぼく達が最初にいた部屋の壁から、にゅっとピエロが上半身を出したところだった。こっちへむかって飛んでくる。


「薺、步夢くん、先に行って!」

「お兄ちゃんは!?」

「ぼくには――大切な子がくれたお守りがある」


 ポケットに入れてあった護符を折ったものを取り出し、ぼくは握った。


「はやく走れ!」


 ぼくの言葉に、二人が走り出す。ピエロが迫ってくる。二人の手が鏡にかかった。

 その瞬間、ぼくの正面に迫ったピエロに、ぼくは護符を押しつけた。


「!」


 するとピエロが動きを止めて、その場にガクンと落下した。

 後ろを振り返ると、先に薺が外に出て、步夢くんを引き上げているところだった。


「絶対に、逃がさない、お前だけでも逃がさない!」


 ピエロが震えながら、起き上がった。白い顔が、こけと土で茶色く汚れている。

 ゆっくりと立ち上がったピエロは、帽子が取れていて、ぼくとほとんど同じ身長だった。


「なんで鏡に引きずり込んだりするの?」

「……っ、一人は寂しいんだ! ボクだって、お友達が欲しいんだ!!」


 その言葉に、ぼくは目を見開いた。



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