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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第九章:図書室ピエロ ――
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【049】鏡の中の世界

 ――気がつくと、すすり泣く声が聞こえてきた。

 ぴちゃり、またぴちゃりと、水がしたたる音もする。うっすらと目を開けたぼくは、暗い場所にいることに気がついた。そうだ、ぼくは図書室ピエロに引きずり込まれて――……薺は? そう思い出して、あわてて目を大きく開く。すると薺は、ぼくと手を繋いだままで、眠っていた。


「……」


 その姿にほっとして、ぼくは大きく息をはく。そこは四角い部屋で、左側に細い通路が見える。部屋を見渡すと、ぼく達の正面に、泣いている子がいた。ボロボロと涙をこぼし、声を上げて泣いている。


「大丈夫?」


 ぼくが声を上げると、その子がハッとしたようにこちらを見た。

 その顔を見て、ぼくは水間さんにどことなく似ていると思った。


「もしかして……步夢くん……?」

「ぼくのこと、知ってるの?」

「うん。步夢くんのお兄さんのことを知ってるんだ。水間さん」

「廣埜お兄ちゃんのこと、知ってるの?」

「そうだよ。ぼくの――お友達だよ。新しくできた、友達」

「そうだったんだ……お兄ちゃんは、無事? ぼく、それだけが心配で……」


 步夢くんは、薺とおなじくらいの歳に見える。


「――無事だよ。すごく步夢くんのことを、心配してるよ」

「そっか……ぼく、鏡の中だもんね。帰れないんだもんね」


 すると再び步夢くんが泣き始めた。


「変える方法はないの?」

「その通路の突き当たりに鏡があるけど、出ようとするとピエロが急に出てきて追いかけて、引きずり戻すんだ」

「三人でなら、逃げられるかもしれない」


 ぼくが励ますように言うと、步夢くんが目を丸くした。そしてうでで涙を拭く。


「できるかな?」

「やってみなきゃわからないよ」


 ぼくの言葉に、步夢くんが頷いた。ぼくはそれを見てから、薺の体をゆさぶる。


「薺、薺! 起きろ!」

「ん、っ……ここ、どこ?」

「鏡の中だ」


 ぼくは言うと、ハッとしたように薺が目を開けた。そして周囲を見渡すと、ぼくに抱きついて泣き始めた。


「ナナちゃんは、友達ができるって言ってたのに! 鏡の中にお化けに引きずり込まれるなんて知らなかった!」

「薺、ナナちゃんっていうのは?」

「手鏡の中の女の子だよ」

「っ」


 まさかと思っていたが、それは間違いなく、手鏡の中のナナちゃんだろう。薺の手元に手鏡があっただなんて。気づかなかった自分が怖い。


「今から、步夢くんと三人で、ここから逃げるよ」

「う、うん!」


 こうしてぼく達は、立ち上がった。





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