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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第八章:血を吸う桜 ――
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【042】ナナちゃん

 帰宅した翌日から、お父さんは夏休みをとったかねあいで、連日お仕事になり、夜勤と準夜勤が増えた。家にいない日が多い。でも、亮にいちゃんと二人だから、寂しくない。


 今日は、薺のお見舞いに来た。おみやげを渡すためだ。


「――そうなんだ。ナナちゃんは、なんでも知ってるんだね」


 すると鏡を見て、薺がなにか呟いていた。なんだろうと視線を向けてから、ぼくはコンコンと病室のドアをノックする。ここは四人部屋だけど、今は薺しかいない。


「あ! 亮にいちゃん、瑛にいちゃん!」


 手鏡をおいた薺が、嬉しそうに顔を上げた。頬があかい。


「おみやげ買ってきたよ」


 ぼくが遊園地で買ったおかしと、動物園で買ったぬいぐるみを見る。持っているのは亮にいちゃんだ。すると薺が嬉しそうな顔をしてうなずいた。


「早く元気になって、ぼくも行きたいなぁ」

「ああ、きっとよくなる」


 小さく笑って亮にいちゃんが言った。ぼくも薺が元気になるといいなと思う。

 なんだか図書室で本を読んだ後から、ぼくは自分自身を振り返って、もう薺がいないのがいいなんて思いたくないと感じている。ぼくは、亮にいちゃんがぼくにとって自慢のお兄ちゃんであるように、薺にとって自慢となるようなお兄ちゃんでいたい。


「あ、見てこれ」


 ぼくがうで時計を見せると、薺が目を丸くして、こうふんした様子になった。


「すごい! カッコイイ!」

「だろ?」


 嬉しくなって、ぼくは何度も頷いた。


「薺は、病院はどうだ?」


 亮にいちゃんが聞いた。これはいつも聞くことだ。


「うん。最近新しいお友達ができたんだよ。ナナちゃんっていうんだ」


 同じ名前を聞いたことがあるけど、珍しい名前ではないし、この小児科の患者の子かなとぼくは思った。まさか薺のそばに、手鏡の中のナナちゃんがいるとは思えない。


 その日はそれから雑談し、ぼくと亮にいちゃんは病院から帰った。




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