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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第七章:夏休みとお化け屋敷 ――
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【041】うで時計

「あ、時計だ」


 そこにあったデジタル時計を見て、ぼくは目がくぎづけになった。時間はスマホで分かるけど、お父さんもしている時計が、ぼくの憧れだ。


「買おうか」

「いいの?」

「ああ。記念だからな」


 お父さんがぼくにうで時計を買ってくれた。お店の人に箱から出してもらい、ぼくはその場で左腕に身につけた。カッコイイ。


「亮にいちゃんに見せてくる!」

「ああ、迷子になるなよ」


 ぼくはうなずき、おみやげもの屋さんから外に出た。トイレはすぐそばだ。そう思って顔を向けると、亮にいちゃんが立っていた。左の方向を見ている。歩きながら、ぼくもそちらを見た。そしてびっくりした。そこには透くんが立っていたからだ。


「なぜここにいるんですか?」


 亮にいちゃんが、いつもとは違う……哀名みたいな、なんの感情も見えない声で透くんに言った。透くんはいつもの通りで、楽しそうに笑っている。ただ、目が笑っていないようにも見えた。


「楽しい旅行に行くらしいと聞いたからさ。楽しい? 家族ごっこ」

「……」


 亮にいちゃんの顔色がどんどん悪くなっていく。今までにないくらい、ぼくが見たことがないほど、冷たい顔をしている。


 ぼくが困惑して思わず立ち止まっていると、ふいに透くんがぼくを見た。

 そしてニヤっと笑った。


「じゃあね、亮。楽しんで」


 そう言って、透くんは歩いて行った。ずっと亮にいちゃんはそちらを見ている。

 知り合いなのだろうか? そういえば、前にも崎保という名前の話が出ていたっけ。

 透くんがいなくなったら、ぼくの緊張がほどけたようになったので、歩みを再開した。

 亮にいちゃんの向こうには、風船を配っているピエロが見える。

 図書室ピエロも、ああいう感じなのだろうか? 赤い鼻で、頬にペイントがあって。


「亮にいちゃん!」


 ぼくが声をかけると、ハッとしたように、亮にいちゃんがぼくを見た。


「みてみて! 時計を買ってもらったんだよ!」

「お! かっこいいな」

「でしょ?」


 亮にいちゃんはいつも通りの顔に戻っていた。それにほっとしながら、僕達は二人で、お父さんのところへと戻った。


 次の日の動物園も楽しくて、ぼくはその写真も哀名に送った。

 じゅうじつした、夏休みのすべりだしに、ぼくは大満足した。



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