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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第五章:人体模型の怪 ――
35/66

【035】結界

「図書室ピエロ……ああ、校内だけは、ピエロも歩き回れるようになったから、何度か競争したんだよ。でも、その後ね、鏡を伝えば、きさらぎ市の他の場所にも行けるってナナちゃんに教わってからは、帰ってこなくなっちゃった。校内以外では、多分外には出られないけどね」


 人潟くんの言葉を、ぼくは不思議に思った。


「どうして校内では外に出られるの?」

「さぁ? 校内以外でも、出られる方法もあるかもしれないけど、ぼくと話したときの図書室ピエロは知らないみたいだった」

「そうなんだ」


 ぼくがうなずくと、泰我先生がうなった。


「まぁ……きさらぎ市から他の土地にはいけないはずだ」

「どうしてですか?」

「うちの寺が、この学園都市の――きさらぎ市の周囲に結界を張ってるんだよ。兄貴がさ」


 結界とはなんだろう?

 ぼくが考えていると、哀名が頷いた。哀名には分かったみたいだ。


「それより、二人とも。今回は俺が見つけたからいいものの、学校に勝手に入ってはダメだ。危ないんだぞ?」


 泰我先生の顔が怖くなった。

 ぼくは背筋をのばす。

 そこから……お説教が始まった。ぼくは必死で真面目な顔をする。先生はいつも明るいけど、怒ると長い。哀名をチラリと見れば、無表情で聞いている。


「――いいな? 二度とこんなことはするなよ?」

「は、はい!」

「わかりました」


 ぼくと哀名がそれぞれうなずくと、泰我先生もまた大きくうなずいた。


「人潟はきちんと理科室にもどれ」

「はい……」

「二人は俺が車で送るから、ついてくるように」


 その言葉に、ぼくは人潟くんを見た。


「ぼく、誰にも言わないよ、人潟くんが人体模型だって。だからまた明日、教室で」

「楠谷くん……ありがとう」

「私も言わないわ」


 こうしてぼくと哀名は、泰我先生に連れられて外へと出た。

 そして車で送ってもらった。

 亮にいちゃんもお父さんも帰っていなかったから、ぼくの夜の外出は、家族にはバレなかった。




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