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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第五章:人体模型の怪 ――
34/66

【034】人体模型の怪

 顔の半分側が、まちがいなく人潟くんだ。


 ……人潟くんが人体模型だったのか。

 考えてみると、いつも正面を向いているか、ちょっとしかぼくの方を向かなくて、それはいつも左側だった。それに、夏休みも学校にいるだろうから、荷物を持って帰らないのもわかる。トンカラトンのときだって、学校には出ないから安全だと話していた。そんなことを考えていると、人潟くんの顔が、泣きそうにも怒っているようにも見えた。もう半分は、顔の筋肉の模型だから、表情はわからない。


「見ーたーなー!!」


 人潟くんがそう言って手を伸ばしてきた。

 哀名がぼくの手を握り返し、引っ張って走り始めた。あわててぼくも走り出す。

 ぼくと哀名は階段を駆け下りる。

 だがどんどん人潟くんが迫ってくる。足が速い。二階の廊下で曲がったぼく達は、突き当たりを目指してとにかく走る。しかしどんどん距離をつめられる。このままでは、捕まってしまう。そう思った時だった。


 突き当たりの階段から、誰かがのぼってきて姿を現した。


「泰我先生!」


 ぼくは先生を見て、思わず声を上げた。するとニコリと笑った先生が、それからすぐに真剣な表情に戻り、ぼく達の横をすり抜けて、走ってくる人潟くんの前に立った。片手を突き出す。


()!!」


 先生がそう言うと、ぶわりと風が吹き、先生の手の辺りがあわく光った。

 まるで空気の壁にぶつかったみたいに、人潟くんの動きが止まる。


「こら、人潟。生徒を襲わないって約束しただろう? 約束を破るなら、もう教室に入れないぞ」

「せ、先生……でも……みんなにバラされたら……」


 人潟くんが泣きそうな声を出した。


「泰我先生は、人潟くんが人体模型だって知ってたの?」

「――まぁな。これでも寺生まれだからな」


 振り返って笑った先生は、それからぼく達を軽くにらんだ。


「お前達、もうとっくに下校時刻は過ぎてるぞ? どうしてここにいるんだ?」


 そうだ、ぼく達は、先生にここにいるとバレてしまったんだった。

 ぼくが項垂れると、哀名が言った。


「『図書室ピエロ』の居場所を知らないか、人潟くんに聞きに来たんです」

「図書室ピエロ……? それはまた懐かしいようで忘れられない名前だな……」


 泰我先生はそう言って腕を組むと、チラリと人潟くんを見た。


「俺も興味がある。人潟、何か知っているか?」


 すると人潟くんが、顔を上げた。




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