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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第五章:人体模型の怪 ――
33/101

【033】夜の学校

 ドキドキしながら、ぼくは生徒玄関ではなく職員玄関へと向かった。

 そして音を立てないように注意しながら中に入る。

 職員室のほうを見ると、灯りがもれていた。先生達に気づかれる前にと、急いで二階にあがる。理科室は二階にある。人体模型は、ぼくは見たことがないけど、水間さんが理科室と口にしていたのをおぼえている。そちらに向かって歩いて行くと、階段をおりてくる足音が聞こえた。


 人体模型だろうか?


 かたずを飲んで見守ると、ひょいと哀名が顔を出した。おどろいてぼくは目を丸くする。


「やっぱり」

「哀名、どうしてここに?」

「カードが教えてくれたの。今日、楠谷くんが学校にしのび込むって」

「すごい……」


 哀名の占いは本当に当たる。

 だが、今日は当たってほしくなかった。だって哀名は邪魔になると話していた。


「私も行く。できることをしたいから」

「!」


 続いて聞こえた言葉に、ぼくはゆっくりと二回まばたきをしてから笑顔になった。

 哀名はやっぱり優しい。


「行こう」

「ええ。三階のほうで、走る足音が聞こえたの」

「ぼく達の教室のほう?」

「そうなの」

「わかった」


 こうしてぼく達は、暗い階段を、二人でしんちょうにのぼった。

 そして三階につくと、ちょうどぼく達の教室のとびらがガラガラと開いたところで、そこから勢いよく人かげが飛び出してきた。


 きょりがあるから顔は暗いし見えないけど、こちらへ向かって全力疾走してくる。

 きっと、人体模型だ。ぼくは思わず、となりにいた哀名の手を、ギュッと握った。

 ぼくが怖かったからじゃない。哀名を守ろうと思ったからだ。


「ふぅ。夜の学校は最高だなぁ! やっぱり廊下を走るのは気持ちいいね!」


 明るい声がした。聞きおぼえのある声だった。

 もしかしてクラスのだれかが残っていたのだろうかと考えたとき、ぼく達の正面で、走ってきた人が急ていしした。そのすがたを見て、ぼくはビックリした。


 顔の右半分が、模型になっている。右手と左手を走るかたちに折り曲げたままで、ぼく達を見て、人体模型が目玉がこぼれ落ちそうなくらいまぶたをあけた。


「く、楠谷くん……哀名さん……」


 名前を呼ばれ、ぼくは服をきていない人体模型を改めて見て、思わず言った。


「人潟くん……?」




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