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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第五章:人体模型の怪 ――
32/66

【032】一人の夜

 夏休みまで、あと一週間になった。だんだんぼくは、荷物を持ち帰るようになった。泰我先生に言われたからだ。


 ……。

 昨日は日曜日だったから、もしかしてと思って公園に行ってみたけれど、水間さんは来なかった。泰我先生は、何か聞いただろうか? 見ているといつもの通り明るくて、ぼくには判断できない。


「はぁ……」


 思わずため息をつくと、人潟くんがぼくを見た。


「どうかしたの?」


 あいかわらず、少しだけ首をかたむけてぼくを見ている。


「ううん。今日もたくさん持って帰らなきゃと思って。人潟くんは、もう色々持って帰った?」

「ぼくは持って帰らないんだ」

「ああ、最後の日にお母さんかお父さんが車で来てくれるんだね」


 ぼくは一人なっとくした。人潟くんは、ニコニコ笑っている。


「楠谷くんは、夏休みはどこに行くの?」

「テーマパークだよ! 亮にいちゃんが、のり気でさ。家族サービスだよ」

「そうなんだ」


 そんな話をしていると、泰我先生が入ってきたので、帰りの会が始まった。

 ぼくは話を聞きながら、たまにチラリと哀名の背中を見た。哀名とも、図書室以来、話していない。それも少しさびしい。


 なんだか最近、すっきりしない。

 そう考えながら家に帰ると、スマホではなく家の電話に耳をあて、亮にいちゃんが苦しそうな顔をしていた。なにか、とってもなやんでいる顔だ。


「――分かりました。うかがいます」


 亮にいちゃんが電話を切ったとき、ぼくはリビングに入った。

 すると亮にいちゃんが振り返った。


「瑛。今日父さんは準夜勤なんだけど、俺は少し出かけてくる。なべに肉じゃがが入っているから、一人でレンジで温めて食べられるか?」

「うん」

「一人でお留守番できるか?」

「ぼく、もう小学六年生だよ? 大丈夫だよ」

「そうだな。じゃあ、少し出かけてくる」


 そう言うと亮にいちゃんが、制服のままで出かけていた。

 なんだろうかと考えながら、ぼくはお鍋のふたを開ける。そうしながら、ふと考えた。今日は、亮にいちゃんもお父さんもいない。だとすると、夜に学校にぼくがいってもバレない。


 人体模型のウワサを思い出す。

 夜の七時から、人体模型は校舎を走るらしい。今日なら、人体模型に話が聞けるかもしれない。ぼくは一人決意した。やっぱり、水間さんを手伝いたい!


 こうしてぼくは急いで肉じゃがを食べ、七時にそなえた。





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