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継承される祠守  作者: さんご


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29/30

サイドストーリー ―おやみの人格問題―

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 おやみについて、最近分かってきたことがある。


 まず。


 こいつ、

 めちゃくちゃ俗っぽい。


 お菓子好き。


 アイス好き。


 ドラマ好き。


 イケメン好き。


 しかも、

 妙に現代適応力が高い。


「新作チョコミント、

 賛否分かれる味やなぁ」


「レビューサイトみたいな感想やめろ」


 さらに。


 食う。


 普通に食う。


 ポテチ。


 アイス。


 駄菓子。


 ピザ。


 この前なんて、

 唐揚げを幸せそうに食べていた。


 でも。


 冷静に考えると、

 おかしい。


「……どこ行ってるんだ?」


「ん?」


「食べたやつ」


「消えとるで?」


「それは見れば分かる」


 問題は。


 肉体が無いはずなのだ。


 胃もない。


 腸もない。


 消化器官ゼロ。


 なのに。


 食べ物だけは、

 ちゃんと消える。


 意味が分からない。


「エネルギー変換?」


「気分やな」


「その回答、

 物理学科殺せるぞ」


 しかも。


 記憶がある。


 膨大に。


 昔の祭り。


 古い風習。


 百年以上前の話。


 かと思えば。


「今期アニメ、

 作画やばいな」


 現代知識もある。


 脳も無いのに。


 どこに保存してるんだ。


 クラウドか?


 神様Wi-Fiでもあるのか?


 さらに。


 人格が安定しない。


 これが一番困る。


 普段のおやみ。


 軽い。


 うるさい。


 俗っぽい。


「まさとくーん、

 ポテチ取ってー」


「自分で取れ」


 でも。


 時々、

 別の顔を見せる。


 甘い人格。


 優しい。


 静か。


 妙に距離が近い。


「疲れとるやろ」


 そう言って、

 そっと隣に座る。


 正直。


 嫌いじゃない。


 むしろ落ち着く。


 だが。


 さらに別方向もある。


 筋肉。


 あれである。


『鍛エロォォ!!』


「なんであの人格だけ圧が強いんだよ」


 空気までムキムキになる。


 しかも。


 全部“おやみ”らしい。


 意味が分からない。


「……結局、

 どれが本物なんだ?」


 ある夜。


 正人は本気で悩んでいた。


 軽いやつ。


 優しいやつ。


 筋肉。


 どれも性格が違いすぎる。


 同じ存在とは思えない。


 だが。


 おやみ自身は、

 特に気にしていない。


「全部うちやで?」


「雑!!」


 そして。


 その夜だった。


 部屋の空気が、

 ふっと変わった。


 祖父の石が、

 静かに光る。


『来たか』


「え?」


 障子の向こう。


 誰かいる。


 でも。


 気配が違う。


 静か。


 重い。


 おやみとも、

 筋肉とも違う。


 障子が開く。


 そこにいたのは。


 老人だった。


 和服。


 細い目。


 白髪。


 背筋だけ異様に真っ直ぐ。


「……は?」


 老人は、

 静かに座った。


 そして。


「茶はないんか」


「誰!?」


 おやみだった。


 声で分かった。


 でも。


 完全に祖父。


 空気が昭和。


 いや大正。


 なんなら江戸感まである。


「最近の若いもんは、

 麦茶を冷やしすぎる」


「知らんがな!」


 祖父の石が低く笑う。


『その人格は古いぞ』


「人格って言うなよ!!」


 老人おやみは、

 湯呑みを持つ仕草をした。


 持ってないのに。


「わしなぁ、

 昔は村の縁側担当やったんじゃ」


「何その役職」


「年寄りの話聞く係や」


 たぶん。


 本当にそうだったのだろう。


 おやみは、

 長い年月で色んな“人”を受け止めてきた。


 泣く人。


 怒る人。


 恋する人。


 筋肉に人生を捧げる人。


 その残滓が、

 人格として残っている。


 つまり。


 おやみの中には、

 たくさんの“人間らしさ”が混ざっているのだ。


「……じゃあ、

 今のその爺ちゃん人格も?」


「近所の縁側常連やな」


「混ざるなよ」


 老人おやみは、

 ふっと笑った。


「人はなぁ、

 誰かとおると少しずつ混ざるんじゃ」


「……」


「長ぉ生きとると、なおさらな」


 その瞬間だけ。

 少しだけ、本物の土地神様みたいだった。


 だが次の瞬間。


「ところで最近のイケメン俳優、

 誰が人気なんじゃ?」


「急に俗へ戻るな!!」


 おやみは、結局おやみだった。

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