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継承される祠守  作者: さんご


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28/30

サイドストーリー ―玲奈のちょっと危ない乙女心―

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

篠崎玲奈は、

基本的に真面目である。


努力家。


誠実。


責任感が強い。


大学でも評判は良い。


しかし。


人間なので。


時々、

変な妄想もする。


例えば今。


大学の中庭で。


玲奈は本を開きながら、

静かに考えていた。


(もし……)


風が吹く。


桜の葉が揺れる。


(正人くんが、

私を巡って争ったらどうしよう……)


重症だった。


しかも相手が。


筋肉。


鬼塚先輩率いる、

あの筋肉集団である。


(「玲奈さんは渡さない!」って正人くんが……)


脳内正人が叫ぶ。


(「俺たちも譲れない!!」って筋肉のみなさんが……)


筋肉霊、

ポージング。


(ああ……っ)


玲奈は頬を押さえた。


(私って罪……!)


その時だった。


「玲奈さん!!」


鬼塚先輩が現れた。


無駄に爽やか。


後ろで筋肉霊が整列。


『オハヨウゴザイマス』


『今日モ筋肉日和』


玲奈は反射的に背筋を伸ばす。


「お、おはようございます」


「これ、

どうぞ!」


差し出されたのは。


高タンパク質プロテインバー。


「なんで!?」


「勉強で疲れた時にはタンパク質です!!」


善意100%。


怖い。


すると後ろの筋肉霊も頷く。


『糖質モ大事』


『バランス栄養』


「急に健康番組みたいになるなぁ……」


玲奈は苦笑する。


その瞬間。


筋肉たちがざわついた。


『笑顔……』


『尊イ……』


『今日モ鍛エラレル……』


完全に生きる活力になっている。


そこへ。


「玲奈?」


正人が来た。


コンビニ袋片手。


寝癖つき。


いつもの感じ。


玲奈の心拍数が、

一瞬で跳ね上がる。


「あ、正人くん」


「おはよ。

……何この圧」


筋肉たちが、

一斉に正人を見る。


『地味』


「まだ言う!?」



正人は一瞬だけ周囲を見回して、

ため息をついた。


「……あのさ」


妙に真面目な声。


玲奈と筋肉たちの視線が、

同時に集まる。


「玲奈さんは、渡さないから」


一瞬。


時が止まった。


『!?』


『渡サ……!?』


『宣戦布告……!!』


筋肉霊たちがざわめき、

空気が一気に張り詰める。


玲奈は、


「――――っ!?」


耳まで真っ赤になった。


「ち、ち、ちがっ……!」


正人は眉をひそめた。


「いや、ちがうちがう」


コンビニ袋を持ち上げる。


「これ、玲奈の分だから。。

横取りする人いたら嫌だなって」


一拍。


筋肉霊たち、沈黙。



鬼塚先輩が真剣な顔になる。


「……そういうとこだぞ、九条」


「なにが」


「玲奈さんを頼む」


「急に重い」


「俺たちは、

遠くから支えることしかできない」


「なんなのその失恋した騎士団みたいな空気」


玲奈は、

そのやり取りを見ながら思う。


(あぁ……)


少しだけ口元が緩む。


(なんか、

いいなぁ……)


もちろん。


玲奈は正人が好きだ。


それは絶対。


一筋。


揺るがない。


でも。


自分を好きな人たちがいて、

その中で正人が隣にいる。


その構図に。


ちょっとだけ。


乙女心が刺激される。


脳内で。


正人が玲奈を抱き寄せる。


筋肉たちがざわめく。


『ナンダト……!?』


『恋愛最終決戦……!!』


玲奈は顔を押さえた。


「……っ」


「玲奈?」


「だ、大丈夫……!」


正人は困惑している。


おやみが遠くで呟く。


「うわ、妄想モード入っとる」


「分かるの!?」


「恋慕系怪異舐めんな」


祖父の石が静かに光る。


『乙女は時々、自分で勝手に物語を作る』


「やめろぉ!!」


玲奈は真っ赤になった。


しかし。


そんな妄想をしながらも。


最後に辿り着く結論は、

いつも同じだった。


(……でも、

やっぱり正人くんがいい)


筋肉たちは格好いい。


頼もしい。


真っ直ぐ。


でも。


正人の、少し困った顔。

優しい声。


自然に寄り添う仕草。


それを見るたび。


玲奈の心は、

ちゃんと正人へ戻っていく。


その時。


正人がコンビニ袋から、

小さなプリンを取り出した。


「玲奈、

これ好きだったよね」


「……え?」


「前、

見てたから」


一瞬。


玲奈の思考が止まる。


筋肉霊たちも硬直。


『記憶シテイル……』


『自然ナ気遣イ……』


『強イ……』


鬼塚先輩が、

静かに天を仰いだ。


「勝てないな……」


玲奈は。


嬉しくて。


苦しくて。


幸せすぎて。


顔を隠した。


(あぁもう……)


心の中で叫ぶ。


(正人くん、そういうとこなんだよぉ……!!)


筋肉たちは、

静かにスクワットを始めた。


敗北を噛み締めるように。


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