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継承される祠守  作者: さんご


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エピローグ後日談 おやみの姿 ―残り香の由来―

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 ある日。


 僕は前から気になっていたことを、

 ついに聞いてみた。


「おやみって、

 なんでその格好なんだ?」


「ん?」


 おやみは、

 ソファに寝転がりながらポテチを食べていた。


 和服。


 でも古臭くはない。


 袖や帯の形は昔のものなのに、

 妙に今風に崩している。


 さらに。


 巻き髪。


 ネイル。


 耳元には、

 小さな飾り。


 妙に洗練された雰囲気。


 祠の怪異にしては、オシャレすぎる。


「なんか、統一感あるようで無いよな」


「失礼やなぁ。うちなりのコーデや」


「和服は分かるんだよ」


「まぁ土地の記憶やしな」


「祠にコーデ概念あるの?」


 おやみは笑った。


「あるで。想いの集合体やし、色々な美的センスの複合系や、鈍い奴にわからんな」


「便利ワードすぎる。ダサいいうんか」


「でも巻き髪とかネイルは絶対最近だろ」


「あー」


 おやみは、ポテチの手を止め、少しだけ遠くを見る。


「それな。

 おっちゃん経由や」


「祖父?」


 祖父の石が、

 静かに白く光る。


『……懐かしいな』


 どうやら本当らしい。


 話を聞くと。


 十数年前。


 祖父は地域の老人会に顔を出していた。


 昔から、

 人の相談を受ける性質だったらしい。


 近所の揉め事。


 家庭問題。


 進路相談。


 なぜか人が集まる。


 正人そっくりである。


「血筋やな」


「嫌な遺伝だなぁ……」


 その日。


 老人会へ、

 一人の女子高生がボランティアとして来ていた。


 施設育ちの子だった。


 親を早くに亡くし、

 ずっと一人で生きてきた。


 だからなのか。


 年寄りに妙に優しかった。


 車椅子を押して。


 お茶を配って。


 笑顔で話を聞いて。


 でも。


 その笑顔が時々、

 不自然なくらい頑張っていた。


 祖父は気づいたらしい。


『無理をしている顔だった』


 ある帰り道。


 祖父はたまたま彼女を見かけた。


 公園のベンチ。


 一人。


 俯いていた。


 そして。


 泣いていた。


 祖父は、

 黙って隣に座ったらしい。


『何かあったか』


 彼女は最初、

 何も言わなかった。


 でも。


 ぽつりぽつり


「私、家族って分からないんです」


「今日な、学校で褒められた」


「施設の先生、ちょっと怖かった」


「ほんとは、お母さん欲しかったな」


 と話し始めた。


『人一倍、家族”を欲しがっとった』


 施設の先生は優しい。


 友達もいる。


 それでも。


 どこかずっと、

 空っぽだった。


「いい子にしてたら、

 誰か必要としてくれるかなって」


 その言葉を。


 祖父は、

 黙って聞いていた。


 否定せず。


 説教せず。


 ただ最後まで。


 正人と同じだった。


「ほんと似てるな……」


『血だな』


「嫌だなぁその遺伝」


 それから時々、

 彼女は祖父へ相談するようになった。


 進学。


 人間関係。


 将来。


 恋愛。


 祖父は静かに聞いた。


 その中で。


 彼女は少しずつ、

 自分の好きなものを話すようになった。


『巻き髪って可愛くないですか?』


『ネイル、いつかちゃんとしてみたくて』


『大人になったら、綺麗な人になりたいんです』


 その想いを。


 祖父は持ち帰った。


 意識せず。


 祠へ。


 おやみは、

 その感情を受け取った。


「うち、あの子めっちゃ好きやったんよ」


 おやみは、

 自分の髪を指に巻きつける。


「家族欲しいって気持ち、

 すごい濃かったから」


 怪異は、

 強い想いに引っ張られる。


 特におやみは、“受け皿”だ。


 願い。


 未練。


 憧れ。


 それらを取り込み、

 形を変える。


「気づいたら、この髪型になっとった」


「感染みたいに言うな」


「ネイルもや」


「影響受けすぎだろ」


 おやみは笑った。


「でも、あの子の“綺麗になりたい”って気持ち、なんか好きやってん」


 その言葉だけは、妙に優しかった。


「その人、今は?」


『嫁いだ』


 祖父が静かに答えた。


「え?」


『子供もいる』


 おやみが嬉しそうに笑う。


「せやから最近、

 あんま気配こんのよ」


 それはきっと。


 もう“欲しい”ではなく、

 “持っている”側になったからだ。


 家族。


 居場所。


 温かい食卓。


 昔、

 欲しくてたまらなかったものを。


 ちゃんと手に入れた。


 祖父の石が、

 静かに白く光る。


『良かったと思っている』


『想いとは痕跡だ。強いものほど残る』


 部屋が少しだけ暖かかった。


 おやみは、

 ポテチを食べながら呟く。


「まぁでも、

 今のうち、

 あの子だけちゃうけどな」


「?」


「色んな人間の影響ごちゃ混ぜや」


 だから。


 軽かったり。


 優しかったり。


 筋肉になったりする。


「最後だけ絶対おかしいだろ」


「筋肉の想い濃かったんやもん」


「嫌すぎる理由!!」


 祖父の石が、

 静かに笑っていた。


「まぁでも、

 一番長く影響受けとるんは今たぶん」


「?」


「まさとくんやけどな」


「やめろ怖い」


「最近うち、コンビニ飯に妙な安心感あるもん」


「影響そこ!?だから、おにぎりにこだわりだしたのか」

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