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継承される祠守  作者: さんご


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15/30

筋肉たちのその後 ―恋のプロテインバー―

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 結論から言うと。


 筋肉霊たち(ウエイト部員)は、

 予想通り玲奈のストーカーになった。


 ただし、

 世間一般でいう“危険なやつ”ではない。


 むしろ逆だった。


 異常なほど健全。


 異常なほど前向き。


 異常なほど自分を追い込む方向へ狂っていた。


「玲奈さんの安全確認完了!!」


「周囲半径二十メートル、

 不審者なし!!」


「よし!!

 腹筋追加百回!!」


「なんで!?」


 意味が分からない。


 玲奈が大学へ向かえば、

 遠くのベンチで筋トレ。


 玲奈が図書館へ入れば、

 外でランニング。


 玲奈がコンビニへ行けば、

 駐車場でスクワット。


 絶対いる。


 でも話しかけない。


 近づきすぎない。


 ただ、見守りながら鍛えている。


 怖い。


 怖いが、害意がゼロすぎる。


 鬼塚先輩は、

 以前よりさらに鍛え始めた。


「俺はまだ未熟だ……」


「何がですか、先輩」


「玲奈さんを見て理解した。

 真の筋肉とは、

 誰かを守るためにある」


「急に主人公みたいなこと言うな」

 筋肉霊たちはつっこみを入れる。


 しかも厄介なのが。


 こいつら、

 玲奈にまったく見向きされなくても折れない。

 むしろ燃える。


『今日も挨拶してもらえなかった……』

 筋肉霊たちはぼやくが


「だがそれでいい!!

 見返りを求める筋肉は二流だ!!」

 と鬼塚は、戒める。


『ウオオオオ!!』


 筋肉霊たちが歓喜する。


 思想が宗教すぎる。


 おやみは、

 その様子を見ながら真顔で言った。


「うわぁ……

 めんどくさいファンクラブや」


「しかも数が増えてる気がする」


 筋肉霊たちは


『恋ハ筋肉』

『筋肉ハ愛』

『愛ハ継続』


「急に哲学始めるな」

 正人は、心の中で突っ込む

 

 そして。


 もっと問題だったのは。


 筋肉霊たちが、

 正人を真似し始めたことである。


 最初は小さな変化だった。


「玲奈さん、

 今日は疲れてるみたいだったな」


 鬼塚先輩が真剣に言う。


「だから、

 カフェオレを置いておいた」


「……え?」


「正人がやってたから」


 怖い。

 普通に怖い。


 しかも。


 筋肉霊たちは、

 なぜか正人の“優しさ”を研究し始めた。


『話ハ最後マデ聞ク』


『否定シナイ』


『相手ノ歩幅ニ合わせル』


『急ニ距離ヲ詰メナイ』


 いつのまにか、正人の行動が恋愛教科書化していた。


 祖父の石が、低く笑う。


『学習しているな』


「感心するなよ!」


 ある日など。


 玲奈が重そうに資料を持っていると、

 遠くから筋肉霊がざわついた。


『荷物……』


『持ツベキ……』


『デモ距離感……大事……』


 結果。


 五メートル離れた位置から、

 無言で台車を押して近づける、

 という謎の進化を遂げた。


「怖っ!!」


 玲奈が悲鳴を上げた。


 すると鬼塚先輩が真顔で言う。


「威圧感を減らしたつもりだったんだが……」


「根本が怖いんですよ」

 鬼塚先輩は、子犬のように小さくなる。


 こんなことが続くと、不思議なことに。


 玲奈は、筋肉霊たちをそこまで怖がらなくなっていた。


「……なんか大型犬みたい」


「大型犬に謝れ」


 実際。


 彼らは玲奈が危ない目に遭いそうになると、

 異常な速度で現れる。


 ナンパ男。


 即座に鬼塚先輩登場。


「彼女、

 嫌がっているぞ」


 後ろに並ぶ筋肉霊。


『嫌ガッテイル』


『嫌ガッテイル』


 威圧感が反社会勢力。


 男たちは秒で逃げた。


 玲奈は呆然。


「……守護霊?」


「たぶん近い」


 その夜。


 おやみがぽつりと呟いた。


「でも、

 ちょっとええ話やな」


「どこが」


「誰かを好きになって、

 強くなろうとしてるんやろ?」


 畳の上で、

 おやみはころんと転がる。


「怪異って、

 だいたい欲望で壊れるけど。

 あいつら、

 珍しく“努力”の方向行っとる」


 祖父も静かに言う。


『恋は時に、

 人を怪物にする』


「怖いなぁ」


『だが、

 時に怪物を人らしくもする』


 窓の外。


 遠くの公園で。


『ラスト十回!!』


『追イ込メェェ!!』


 深夜なのに、

 筋肉霊たちの声が響いていた。


 玲奈は苦笑していた。


「……なんで増えてるんだろ」


 正人は、

 空を見上げた。


「知らないうちに、

 大学最強の護衛戦力になってる気がする……」


 ちなみに。


 筋肉霊たちは今でも、

 正人のことを少しだけ見下している。


『地味』


「まだ言う!?」


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