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継承される祠守  作者: さんご


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14/30

筋肉は、恋に忠誠を誓う

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

それから数日後、大学は静かに異常事態へ移行していた。


「……また助けられた」


玲奈は、少し困ったように笑っていた。


目の前には、

さっきまでナンパしていたらしい男子学生がいたはずだ。


しかし今はもういない。


代わりに。


「お前ら、行くぞォ!!」


「「「ウス!!!」」」


筋肉が、いた。


どこからともなく現れたウエイトサークルの部員たちが、

ナンパ男を“誘導”して去っていく。


物理的に丁寧に。


優しく。


しかし絶対に逆らえない圧で。


玲奈は瞬きをした。


「……助かったけど」


「助かったな」


僕も同意するしかなかった。


問題はそこじゃない。


“発生源”が全部同じだということだ。


◆筋肉社会の成立


いつの間にか、大学内で奇妙な現象が起きていた。


・玲奈が階段で荷物を落とす

→筋肉が現れて全回収


・玲奈が道に迷う

→筋肉が案内図になる


・玲奈が寒そうにする

→筋肉が防風壁を形成する


「……もう警備会社じゃん」


僕の感想はそれだった。


おやみはスイカバーを食べながら言う。


「もはや信仰やな」


「信仰?」


「“守りたい”が集団化するとこうなる」


祖父の石が、淡く光る。


『対象が明確すぎるな』


「玲奈だけ?」


『そうだ』


やめてほしい。非常に怖い。


◆鬼塚先輩の変化


そして最も異常なのは彼だった。


「俺は気づいた」


鬼塚先輩は体育館で静かに言った。


「“ただ鍛える”だけでは足りない」


その背後には、

相変わらず筋肉霊の残響が揺れている。


だが以前と違う。


狂気ではない。


“研ぎ澄まされた意志”だった。


「隠れ筋肉……」


「え?」


「存在するんだ」


鬼塚先輩は拳を握る。


「見せない筋肉。

 支えるためだけの筋肉。

 守るためだけの筋肉」


部員たちが息を呑む。


「玲奈さんの周囲には、それがある」


「俺もそこに行く」


「どこに?」

部員たちは困惑した。


だが鬼塚先輩だけは真剣だった。


「ようこそ“隠れ筋肉の領域”へ」


鬼塚先輩を誰も止めなかった。

止める理由も分からなかった。


数日後。


鬼塚先輩は変わっていた。


筋肉はそのまま。むしろ増えていた。

だが、雰囲気が違う。


「鬼塚先輩…以前と違う?」

 玲奈は、不思議そうに正人に話す。


「え?」


 玲奈は首を傾げる。


「なんだろ……前より優しい感じ?」


「そんなバカな!」


「正人くんだ。きっと意識されてる」


「俺!?」


 夜に昼間の出来事を話すとおやみが吹き出す。


「ははははは!!」


 祖父の石が冷静に告げる。


『評価軸が崩壊しているな』


「なんで俺なんだろう。」


 正人には心当たりがなかった。


 ただ、玲奈が困っていると放っておけないだけだ。


◆そして部長は隠れ筋肉の領域へ


 鬼塚先輩は、部員たちに熱弁する。


「隠れ筋肉……それは精神の形だ」


「もう筋肉関係ないだろそれ」


「俺はそこに入る」


「つまり、見えない気遣いも筋肉……?」


「そうだ」


「では母の弁当も……」


「愛の筋肉だ」


 部員たちは震えた。


 こうして。


“隠れ筋肉”という謎の概念が誕生した。


・見えない努力

・支える力

・守る意志


それら全部が筋肉扱いになった結果。


大学は静かに、

“筋肉哲学サークル”へと進化し、謎の看板

ようこそ“隠れ筋肉の領域”へ」

が、ウエイトサークル前に掲げられている。


◆玲奈の周囲


そして玲奈はというと。


「また助けられちゃった」


「すごいね」


「……なんでだろうね?」


本人だけが状況を理解していない。


ただ一つだけ確かなのは。


彼女が「ありがとう」と笑うと、筋肉は、声量が増した。


世界が少しだけ、過剰に優しくなる。



おやみはぽつりと言った。


「恋ってさ」


「うん」


「世界改造装置やな」


祖父の石が静かに締める。


『正人』


「なに」


『お前は巻き込まれる側だ』


「知ってる」


遠くで筋肉たちが叫ぶ。


『守ル!!!』


静かに大学の日常は、

筋肉の名のもとに平和へと“改造”されていった。

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