容赦のない殲滅
アリサにエスキモードッグの入口に待機して貰って、私はガビアルという街がある方面に向かって駆け出す。
(さてと、さすがに街の近くにいるわけもないから、あの山付近に行くかな。盗賊って基本的に山か森の中にいるし)
【暗視】のおかげで、普通の月明かりよりも視界を保てている。本当なら雷鎚ミョルニルの力で身体能力を上昇させて一気に駆け抜けたいのだけど、雷を纏うという状態であるため、私が目立つ事になってしまう。
なので、素の身体能力で走り続ける必要がある。この一年で大分スタミナがついた。さっきのキティとの鍛錬もだけど、こうして長時間走る事になると、その事がよく分かる。
走り続けて森の中に入り、そのまま突き進んでいく。周囲を見回して、盗賊が動いた痕跡などを探していく。こういうときキティがいてくれたら、もっと見つけやすいのかな。スキルというよりも猫人族の身体的特徴的に。
でも、こういう事にキティを付き合わせる訳にもいかない。【不死】がないキティは、不意打ちの一回で死ぬ可能性がある。
もう少し堂々と戦える時だったら良いのだけど、ほとんど威力偵察のようなものだから付き合わせられないって感じだ。
(ここ……)
モンスターから隠れつつ突き進んだ先で、森に何かがいた跡を見つけた。草木がその部分だけ折れている。モンスターが伏せっていたというようにも見られるけど、その跡がいくつもあるとなれば、人がいたと見る方が自然になる。
(足跡は……)
人がいたという事を証明する簡単な方法は足跡を見つける事。足跡の形で、そこにいた存在を判別出来る。
(靴の跡……人だ)
蹄などではなく、しっかりとした靴の足跡。ここに人がいた事は確実。これが盗賊のものとは限らないけど、こんな道が遠くに見える場所で立ち止まっている事に加えて、足跡の形から道の方を向いている事が分かる以上、盗賊という可能性が高くなる。
(この近く……いや、やっぱり山の方に行こう。向こうの山なら、上から道が見えるし、上からの襲撃もある程度やりやすい。まぁ、大分命知らずの行動になるけど)
山に向かって走っていると、眠っている大きな牛みたいなモンスターを見つけるので、頭を雷鎚ミョルニルで殴って倒しておく。一応、一撃で頭蓋を割って倒す事が出来たので、そのままインベントリに回収する。
下手にモンスターを誘導されて、乱闘にされたくないから、ある程度数を減らしておく。元の世界のゲームでも存在したモンスターPKというやつだ。モンスターを誘導して、そのモンスターと他プレイヤーをぶつける。この世界でも、そういう事は普通に出来ると思う。システムで制御されず本能で行動しているモンスターなら、更に容易かもしれない。
牛型モンスターであるホーンバイソンを倒しながら進んで行くと、耳に微かに人の高笑いのようなものが聞こえてきた。
私は、最大限慎重に進んでいき、山の麓が見える場所に着く。そこには大きな穴が空いており、その奥に明かりが見える。
(森で明かりが遮断されて気付かれにくくなってる感じか……)
洞窟の外には、二人の見張りがいる。中で酒盛りをしているからなのか、見張りの二人は少し不満げな表情をしていた。
(……やるか。いや、駄目駄目。まだ盗賊と確定したわけじゃない)
私がそう考えて逸る気持ちを抑えつけた時、見張りの話し声が微かに聞こえてきた。
「ああ……中……酒……俺達……襲撃……」
「本当……女を……先にやった……気持ち……かったな」
本当に断片的に聞こえたのは、そんな感じの会話だった。
(黒で良いかな)
雷鎚ミョルニルと打ち出の小槌を持った私は、打ち出の小槌で出した鉄杭を二本打ち飛ばして、見張りの頭部に突き刺す。どうやらそこまでの耐久も耐性もないみたいで根元まで杭が埋まった。脳が貫かれた盗賊達は、地面に倒れて動かなくなる。
私が杭を打った音が響いたはずだけど、中の酒盛りの音の方がうるさかったのか、中から人が出て来る気配はなかった。
(中に何人いるのか……さっきの話から考えると、もうジルさんみたいに捕まった人がいるっぽいし、この洞窟の中に全力の雷撃を送り込む訳にもいかない。普通にやるか)
ここまでは相手に気付かれて逃げられたら困るから隠密で動いた。でも、アジトを見つけたここからは隠密でやる必要もない。ここで全滅させるのだから。
雷鎚ミョルニルによる身体能力強化を使い、一気に洞窟に突っ込む。中は、大分広いけど坑道のようになっているのではなく、大きな部屋がいくつかあるという形だった。
その一番手前の部屋で盗賊達は酒盛りをしていた。ベロンベロンに酔っぱらっている。これでは外で見張りが倒れても気付けないはずだ。見張りを置く頭はあるのに、戦闘になる可能性を考慮していないのは馬鹿すぎる。
周囲に木の箱があり、そこに酒瓶がある事から、これが襲撃で手に入れたものだと分かる。
「おっ!? 新しいおん……」
その盗賊は最後まで言葉を発する事は出来なかった。私が雷を纏わせた雷鎚ミョルニルで叩き潰して雷を叩き込んだからだ。
酒盛りをしていた盗賊達が静まるのを感じ取りながら、打ち出の小槌で次々に鉄杭を作り出し、離れた場所で女性に迫っていた盗賊達の頭を貫く。
そこから私は一切止まらずに、走り回りながら盗賊の頭を潰し、抵抗しようとすれば鉄杭を出してお腹や膝などに突き刺して行動を阻害してから、頭を吹っ飛ばす。
酔っぱらっている盗賊達は大した抵抗も出来ずにどんどんと数を減らしていく。その中で奥の方にいた酔っぱらっていない盗賊が二人迫ってきた。どうやら奥で寝ていたようだ。
「てめぇ! 何者だ!?」
盗賊と問答をするつもりはないので、何も答えず、盗賊が振るってくる短剣を避けていく。もう一人の盗賊が背後から長剣で斬り掛かってこようとするので、雷鎚ミョルニルの雷撃を背後に放ち、盗賊のお腹を貫く。
「あばばばばばばばば!!!」
感電した盗賊は震えるような悲鳴を上げながら黒焦げになる。【雷耐性】は全くなかったらしい。そっちへの対処をした隙を突かれて、短剣が頬を掠める。
それを見て私が恐怖するとでも思ったのか、盗賊がニヤリと笑う。でも、私が全く恐怖していない事に気付いたのか、次の瞬間には怯えへと変わる。
その瞬間に私は雷鎚ミョルニルで顔面を突いて盗賊を吹っ飛ばし、空中にいる間に打ち出の小槌で作り出した鉄杭を飛ばし心臓に突き刺した。
ここの盗賊も大した事はなく、私一人でも全滅させられるくらいの集団だった。やっぱり盗賊になるくらいだから、まともに成長出来なかった人達なのだなと思わされた。ひとまず、これでここの販路は安全になるかな。




