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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
再会の旅路

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地味な鍛錬

 ヒナとキティが鍛え合っている最中、アリサ、スレイア、リタも鍛え合っていた。基本的にはスレイアとリタが拳で戦うだけ。やっている事はヒナとキティがやっている事に近いけど、そこまで本格的な戦闘にはなっていない。

 スレイアが拳を振るい、リタが手のひらで受ける。リタが拳を振るい、スレイアが手のひらで受ける。これを交互に繰り返しているだけだ。


「本当にっ! これでっ! 大丈夫っ! なのかしらっ!?」


 リタは拳を振るうのも受けるのも気合いを入れるため、語気が多少強くなっていた。


「あまり武術の心得がないなら、これが一番らしいかな。ヒナが買った変な本に書いてあった。時々よく分からない本を買ってくるの。暇つぶしになるからって」

「私達っ! 初心者にはっ! これがっ! 丁度良いってっ! 事ねっ!」

「そういう事。段々早くしていく感じ。私が拍手していくから、それに合わせる感じで。スレイアも頑張って追いつくように」

「うん……」


 アリサが一定のテンポで拍手し、それに合わせるようにして、交互に拳を振るい受け止める。攻撃をする受けるという形で筋力と耐久の経験値を溜める。加えて、殴った瞬間に返ってくる反動でも耐久が上がる。

 アリサが拍手のテンポを少しずつ上げていく。本当に少しずつであるため、スレイアとリタも対応出来ている。ただし、リタは少しだけ顔を顰めている。理由は手のひらの痛みだ。

 スレイアとリタのステータス差は凄まじい。筋力主体ではないため、筋力はまだ低い方だが、リタと比べれば高い。耐久などは比べものにならない。

 殴り合っていれば、リタの方がダメージが大きくなるのは当然だ。スレイアもなるべく手加減している。本気で力を込めれば、筋力ステータス全てがリタに向かうからだ。


「はい。ペース上げて」


 アリサもリタが痛みを覚えている事に気付いているが、ここで止めさせる事はしない。【痛覚耐性】の経験値と【再生】の経験値を溜めるためだ。スキルによる二人の強化を図るにあたって、レベルが高くなっていた方が良いものはなるべく上げるようにしている。


(ヒナの考えだけど、割と酷いというか何というか。合理的って言った方が良いのかな。リタがヒナを嫌いにならないと良いけど)


 アリサは、ヒナとリタの関係性に影響が出ないか心配しているが、リタがヒナを嫌うという事はない。それだけリタのヒナへの信頼は大きい。苦しい状況だったあの坑道での日々に終止符を打ったのは、他ならぬヒナであるからだ。自分とキティを救ってくれたヒナへの信頼が揺らぐ事など、それ相応な事がなければあり得ない。


「まだまだ上げていくから、しっかりと付いてきて」


 どんどんと速度を上げていくと、付いてこられなくなるのはリタとなった。ステータスの差は、ここでも関係してくる。

 スレイアの拳を受ける事が出来ず、肩に命中したリタは蹌踉けて膝から崩れる。


「大丈夫……?」

「大丈夫よ。ただ……少しだけ休ませて頂戴」


 リタは震える自分の手のひらを見る。真っ赤になっている手のひらはジンジンとした確かに感覚が広がっている。


「回復は駄目なのよね?」

「駄目。治癒師の経験値にはなるけど、まずは自分が強くなる事を優先するって。リタの【再生】を【高速再生】にすれば、それだけリタの生存率が上がる。治癒師としては、その生存力が重要になる。ヒナはそう言っていたよ」

「分かったわ……あっ、スレイアは大丈夫なの?」


 自分の手のひらが痛むのだから、スレイアも多少は痛むのではないかとリタは心配する。リタの心配を受けたスレイアは自分の真っ白な手のひらを見せる。腫れている様子もなく、綺麗な手のひらがリタの視界に入る。

 スレイアの身体自体が真っ白であるため、皮下出血などを起こしていても何も分からない。だが、仮に腫れていたとしたら、見た目で分かると考えられたため、何も異常がない手のひらという状態にしか見えないものだった。


「えっと……大丈夫そうね」


 自分とスレイアの耐久の差を実感させられつつ、リタの脳裏にはヒナが言っていた『その話はまた後で』という言葉がリフレインしていた。


(高い耐久があるって事は、それだけ耐久が上がるような事をされていたって事。私達もそうだった。つまり、スレイアは私達がされてきた以上に何かをされた。雪姫のお話にはない何かで)


 そんな事を考えながら、リタはゆっくりと立ち上がる。まだ再生は終わっていない。手のひらには確かな痛みがある。拳を受け止める時にクッションにする肘も少し痛い。だが、それでもリタは立ち上がった。


「続きやるわよ。こんなところで負けていられないもの」


 やる気満々のリタを見て、スレイアはアリサを確認する。


「スレイアが大丈夫なら再開しよう」

「大丈夫……」

「それじゃあ、さっきと同じ方式で」


 アリサの手拍子に合わせて再び鍛錬が始まる。そうして鍛錬を続けている中で、少し離れた場所から雷が落ちる音が響く。その音に、三人は動きを止めて音が響いた方向を見る。

 空は晴天。その中での雷は、まさに青天の霹靂だった。


「ヒナ?」


 アリサの口からヒナの名前が溢れる。それに合わせるようなタイミングで、雷を纏ったヒナが沼地を駆けていた。それを追うようにしてキティも駆けている。

 ヒナとキティは、互いに攻撃を当て合っている。だが、スレイアとリタの鍛錬と違い、鬼気迫るような迫力が存在した。ヒナからは血が飛び、キティもヒナが纏っている雷が当たる事で火傷を負っている。


「あれって……止めなくて大丈夫なの?」


 リタは、キティだけでなくヒナの心配もしながらアリサに確認する。


「大丈夫だとは思う。ヒナはキティに本気でやって貰うって言ってたから。ヒナもミョルニルの身体能力強化しか使ってないし。ほら、再開するよ」

「え、ええ……」


 リタはそう返事をしながら、キティを見る。


(遠いから分かりづらいけど、キティのあの感じ……完全に獲物を狩る時の感じなのよね……ヒナは一体何をしたのかしら)


 長い付き合いになっているリタからはキティの様子がそのように見えていた。ただヒナがこちらに助けを求めない時点で、しっかりと鍛錬の内容になっていると予想出来るため、リタも自分の鍛錬に精を出す事にした。

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