再会しても変わりなく
エスキモードッグへと歩き始める。すると、リタが早速道から外れる。
「リタ?」
「こっちの方が近いわ。この辺りにいるのは、Dランクモンスターのホーンバイソンが基本だから、遠距離でダメージを負わせられれば簡単に倒せるの。注意点は、マッチョボアなんかと一緒よ」
「まぁ、二人を送るなら、早い方がいっか」
私達だけの旅なら普通に道通りに進んで行くけど、この辺りの土地勘を持っているリタやキティが一緒なら近道を使っても道に迷う事はない。まぁ、最悪アリサが空から確認すれば良いだけだしね。
「キティは耳が良いから気配を感じるよりも先に音で分かったりするの」
「まぁ、可愛い猫耳があるもんね」
「ふみゅ!?」
隣を歩いているキティの耳に触れると、キティは驚いて肩を跳ね上げていた。
「ヒ、ヒナちゃん!」
「あはは、ごめんごめん。久しぶりキティの耳を見たら触りたくなっちゃった」
「もう……ちゃんと言って欲しいよ。びっくりしちゃう」
「ごめんごめん。それにしてもキティはそこまで背が高くはならなかったね」
「ま、まだ成長期だよ……」
キティは少しだけむくれる。身長が高くなりたかったみたい。最後に別れてからは成長しているけど、私の方が成長しているみたいなので、身長差は広がっても狭まってもいない。
「まぁ、別のところは成長期真っ只中みたいだけど」
服の下から主張し始めているキティの胸は、私とは大違いだ。同い年のはずなのだけど、身長は勝っても、こっちは勝てない。改めて見てもそう思う。
そこを指摘されて、キティは何か嫌な表情をしながら自分の胸を触る。
「リタちゃんはお気に入りだけど、動きにくくなるよ。ヒナちゃんは……」
聞き流した方が良さそうな情報が混じっていたので、しっかりとスルーしてキティの視線が注がれている自分の胸を見る。崖とは言わないけど、服の下から一切主張しない。私の胸は大人しい方という事だ。
「こっち方面は貧相なままだね。まぁ、ちょっとだけ成長はしてるけど。この中だとやっぱりスレイアが一番成長してるかな」
「私……?」
私達よりも一、二歩前に出ていたスレイアが歩調を私達に合わせる。すると、キティの目がどんどんと大きく開いていく。キティとスレイアは、正面同士で相対しているので、真横からスレイアを見る機会が少なかった。
そのため、ここで改めて見た時の衝撃が強かったらしい。
「リタちゃん……取られちゃう……?」
「それはないかな。リタはキティに夢中だろうし、スレイアは私に夢中だから」
「ヒナに夢中……ヒナも夢中……」
スレイアは誇らしげに胸を張っていた。夢中なのは事実なので頷くしかない。エベレスト級のミナお姉さんがいるけど、ミナお姉さんと接しているのはヒナじゃなくて姫奈だし。
「ヒナちゃん……浮気……?」
「許可は得てるも~ん。特に珍しい事でもないでしょ?」
「うん……じゃあ、アリサさんは?」
「アリサもだよ。多分、私はキティ達よりは経験豊富じゃないかな。十人以上にはなってるし」
「ヒナちゃん……リタちゃん取らないでね……?」
キティは上目遣いでそんな事を言ってくる。ここまで経験人数が多くなったら、誰彼構わずに関係作りをしていくと思われたのかもしれない。まぁ、実際ほとんどそういう状態ではあるのだけど、私だって人は選ぶ。
「リタから誘ってこない限りは取らないよ。ただ、私のスキルにちょっとヤバいのがあるから、もしかしたらって事はあるけど……その時はキティも誘うね」
「ヒナちゃん、節操なし」
「節操があれば、こうなってはいないから的確だね……」
キティの的確な指摘が、深々と胸に突き刺さって貫通した。それが痛いかどうかと聞かれると、すぐに再生するから痛くはない。私はこうやって生きていくと決めたのだから、ある意味では節操なしではないと主張も出来る。
「ヒナちゃんは、私が一緒でもいいの……?」
「え? うん。勿論。キティの事好きだしね。この耳と尻尾を堪能したいよ」
そう言って横から抱きしめると、キティは耳をピコピコと動かして顔を赤くしていた。そんな時、私の額に割と強めのデコピンが打たれる。デコピンの主はリタだ。
「あう」
「人の彼女を誘惑するな」
「ちょっとしたお茶目なのに……」
「お茶目の範疇は超えてるわよ」
確かにお茶目の範疇と言うにはだる絡みが過ぎたかもしれない。久しぶりのキティだったから、ちょっとテンションが上がっていたのかも。額を擦りながらリタを見上げる。そう。ちょっと見上げないと顔が見えにくいくらいにはリタは成長していた。
「リタは、やっぱり背が高くなったね」
「そうね。これでもヒナ達より一つ上だもの。もう少し高いと平均を超せるのだけど」
「私もリタくらいになるかな?」
「ヒナは……そのままの方が可愛らしいわよ」
「子供と言いたいわけね。リタよりも経験豊富な私に!」
「調子乗らないの。全く、今のヒナに会ったらレパが驚くわね」
「いや、レパの前だったら、もっと甘々だよ」
「私に姉味を感じられないって事かしら?」
「いひゃい、いひゃい」
リタをからかっていたら、頬を引っ張られてしまう。痛いと言っているけど、耐性のせいでこのくらいの痛みは全く痛みとして感じない。そもそもそんな強く引っ張られていないし。
「全く……これでも私よりも強いのよね」
「私の場合、力を得た理由は死と引き換えだし……」
「死と引き換え?」
リタとキティが怪訝な表情をするので、私は二人に私のスキルに関して全部話していく事にした。私が転生者である事は知っているけど、スキルの能力とかはあまり知らないはずだから。これから冒険を共にすると、私がそういう目に遭うのを目撃するという事があり得るので、ちゃんと話しておくのが良い。
二人は悲痛な面持ちになってしまう。こればかりは痛い内容とかもあるので仕方ない。
「そういう訳で、私が強くなっているのは、強い相手に死と引き換えに勝っているからなんだよね」
「そう……その【生命維持】とかで私達の事も生かしてくれていたのね」
「そういう事。私が強い理由は転生者ってだけでも付くけど、それ以上に危ない経験ばかりしているからって考えて。でも、ステータスの伸びは普通にレベル上げた方が良いと思うから、私達は参考にしないで。ここ全員【不死】持ちだから」
「そうね。命を大事に成長する……あまり冒険のし過ぎはよくないって事ね」
「そういう事。キティもだよ?」
「うん……」
ちょっと気分の沈む道中になっちゃったけど、これは共有しておいた方が良い事なので仕方ない。街で気分が沈むか、ここで沈むかくらいの違いだ。
それなら先にやった方が良い。
因みに道中のモンスターはアリサが次々に薙ぎ倒していた。その死体は全部回収してお金に換える事にする。




