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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
303/304

弱さに

「エボット!? どうしてここに?」


 サグはゆっくり起き上がりながら、目の前に突然現れたエボットに目を見開く。

 剣を握る手には未だ力は入るものの、王の一撃は正直中々に効いてしまっている。

 だが痛み以上に、目の前に立つエボットへ意識が裂かれている。

 エボットは片方の腕に氷を纏い、もう片方の手に棒なだけの槍を握っていた。サグの見たことのない立ち姿だ。

 

「俺だけ抜けてきた、イリエルが魔力がおかしいって言ってたんでな」


 イリエルは魔力コントロールの技の一つ、魔力探知を上手く使える。そこで猿の魔力を拾ったのだ。

 サグは体に力を入れ直し、痛みを気合いで振り払って、ゆっくりと立ち上がる。

 今目の前にいるのは、アリオット以上の実力を持った最悪の相手、二人でなくては立ち向かえない。

 だがサグは、その事実を認めない。認めるわけにはいかなかった。

 剣を握り、再び剣に魔力を流し込んだ。この剣は自分の魔力から生まれた武器、馴染み方も段違い。

 鍛えた、この島に来てからずっと。手に入れた、強くなるための武器を。磨き上げた、自分自身という未熟な存在を。

 一人でも戦えるように。もう負けないように。

 

「どいてエボット!」


 剣を握って、エボットを無理矢理どかして走り出した。

 エボットは突き飛ばされ、少し困惑しながらサグを見つめる。

 ブンブン音がするくらい雑に、それも勢いよく振って、必死に王を追い詰めようとするが届かない。

 電気がわずかに弾けて、静電気程度のダメージを王に与える。それが今のサグの限界点だ。

 誰だどう見ても子供と遊ぶ大人。なんとも惨めな光景に見える。


「馬鹿野郎が!」


 エボットも走り出し、サグの横をすり抜けるかのように槍を突き出した。

 完全な不意打ちとなった槍の攻撃は、王に突き刺さり、体勢を完全に崩すことに成功した。

 そこからさらにサグの剣が追いかけるかのように攻撃。命中し、電流の痛みを与えながら体を切り裂く。

 バランスを崩した王は血を流しながら転がった。

 

「邪魔するな!!」


 完璧に上手くいった、それもエボットのおかげで。

 だというのにサグはエボットに向かって激昂する。そんなサグを、エボットはシンプルに殴った。

 王の攻撃よりはもちろんマシだが、ジンジンとした痛みが顔全体に響き渡る。


「バーカ、お前一人じゃ勝てねえよ」


 悔しさからサグはエボット睨む。

 そんな二人の横から、飛び出した王が同時攻撃を仕掛ける。

 二人は慌ててそれを回避し、カウンターを繰り出した。だが上手く命中させられたのは、リーチの長いエボットだけ。サグは距離を見誤り、上手く剣を当てられなかった。


「お前! リリオウドでの事を引きずりすぎなんだよ!!」


 エボットはそのまま、氷を腕まで纏わせた拳で王を殴る。だが完璧に両腕で防御された。

 

「サグ一人で戦って! 今まで勝ってきた! 俺らもさ!」


 そのままの体勢で槍を繰り出す。ジャンプして躱され、槍は地面へ刺さった。

 

「サグ! 俺らはまだ弱い! だから今は弱さに甘えよう!」


 サグはジャンプした王に剣を振り上げる。王は念属性の魔法で空中に掴まり、蹴りをサグに繰り出す。受けきれず、ダメージを受ける。


「弱くたって良い! 弱いなりに! 勝とう!!」


 王の蹴りがエボットの胸に炸裂し、肺から息のほとんどを吐き出させられながら転がる。


「弱いのが、勝てるのか?」


 王は二人を笑った。

 弱者の足掻きなど何の価値もない。王はそれをよく知っているから。

 だが、エボットも、サグの表情にも焦りは見えなかった。


「勝てるさ、俺たちならな」


 エボットは、ひどく楽しそうで、飢えた獣のような目を向けた。

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