弱さに
「エボット!? どうしてここに?」
サグはゆっくり起き上がりながら、目の前に突然現れたエボットに目を見開く。
剣を握る手には未だ力は入るものの、王の一撃は正直中々に効いてしまっている。
だが痛み以上に、目の前に立つエボットへ意識が裂かれている。
エボットは片方の腕に氷を纏い、もう片方の手に棒なだけの槍を握っていた。サグの見たことのない立ち姿だ。
「俺だけ抜けてきた、イリエルが魔力がおかしいって言ってたんでな」
イリエルは魔力コントロールの技の一つ、魔力探知を上手く使える。そこで猿の魔力を拾ったのだ。
サグは体に力を入れ直し、痛みを気合いで振り払って、ゆっくりと立ち上がる。
今目の前にいるのは、アリオット以上の実力を持った最悪の相手、二人でなくては立ち向かえない。
だがサグは、その事実を認めない。認めるわけにはいかなかった。
剣を握り、再び剣に魔力を流し込んだ。この剣は自分の魔力から生まれた武器、馴染み方も段違い。
鍛えた、この島に来てからずっと。手に入れた、強くなるための武器を。磨き上げた、自分自身という未熟な存在を。
一人でも戦えるように。もう負けないように。
「どいてエボット!」
剣を握って、エボットを無理矢理どかして走り出した。
エボットは突き飛ばされ、少し困惑しながらサグを見つめる。
ブンブン音がするくらい雑に、それも勢いよく振って、必死に王を追い詰めようとするが届かない。
電気がわずかに弾けて、静電気程度のダメージを王に与える。それが今のサグの限界点だ。
誰だどう見ても子供と遊ぶ大人。なんとも惨めな光景に見える。
「馬鹿野郎が!」
エボットも走り出し、サグの横をすり抜けるかのように槍を突き出した。
完全な不意打ちとなった槍の攻撃は、王に突き刺さり、体勢を完全に崩すことに成功した。
そこからさらにサグの剣が追いかけるかのように攻撃。命中し、電流の痛みを与えながら体を切り裂く。
バランスを崩した王は血を流しながら転がった。
「邪魔するな!!」
完璧に上手くいった、それもエボットのおかげで。
だというのにサグはエボットに向かって激昂する。そんなサグを、エボットはシンプルに殴った。
王の攻撃よりはもちろんマシだが、ジンジンとした痛みが顔全体に響き渡る。
「バーカ、お前一人じゃ勝てねえよ」
悔しさからサグはエボット睨む。
そんな二人の横から、飛び出した王が同時攻撃を仕掛ける。
二人は慌ててそれを回避し、カウンターを繰り出した。だが上手く命中させられたのは、リーチの長いエボットだけ。サグは距離を見誤り、上手く剣を当てられなかった。
「お前! リリオウドでの事を引きずりすぎなんだよ!!」
エボットはそのまま、氷を腕まで纏わせた拳で王を殴る。だが完璧に両腕で防御された。
「サグ一人で戦って! 今まで勝ってきた! 俺らもさ!」
そのままの体勢で槍を繰り出す。ジャンプして躱され、槍は地面へ刺さった。
「サグ! 俺らはまだ弱い! だから今は弱さに甘えよう!」
サグはジャンプした王に剣を振り上げる。王は念属性の魔法で空中に掴まり、蹴りをサグに繰り出す。受けきれず、ダメージを受ける。
「弱くたって良い! 弱いなりに! 勝とう!!」
王の蹴りがエボットの胸に炸裂し、肺から息のほとんどを吐き出させられながら転がる。
「弱いのが、勝てるのか?」
王は二人を笑った。
弱者の足掻きなど何の価値もない。王はそれをよく知っているから。
だが、エボットも、サグの表情にも焦りは見えなかった。
「勝てるさ、俺たちならな」
エボットは、ひどく楽しそうで、飢えた獣のような目を向けた。




