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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
302/304

誇り

 絶望的な状況には間違いなかった。

 追い詰めた、勝った間違いなく、詰んでいるのだこれは、私は理想を押し通す事ができる。

 何度も頭の中に、それも自然に思い浮かんできた自信に溢れる言葉。

 だがその自信は今、微かながら翳りを見せ始めている。それは目の前の若き力による影響。

 目の前にいる二つの若き力は、お互いに影響を与え合い、今まさに成長の真っ只中にあるように見えた。

 成長、それこそ若い力にだけ許された特権。限界を超え、今約束された王座が侵されようとしている。

 あってはならない事である。


「私の誇りを汚す事だけは、絶対に許さない」


 誰にも、猿にさえ聞こえない声。

 王は地面を蹴り、超低空を最高速で進む。それはまさに、水上を進むアメンボが如く。理不尽なまでの速さを持つ。

 超低空が故、猿に紛れ王の姿は見えず、二人はひたすら猿へと向かって剣を振り続けている。

 そして気づいた時にはもう遅い。王は二人の足元に忍び寄っていた。


「し」

「まっ!?」


 王は地面に手をつき、まるで踊るかのように足を大きく動かし回転した。

 サグはギリギリで回避したものの、地面側で回った王に弾き飛ばされ、シンプルに転ばされてしまうグリア。

 感覚的には地面へと突然落ち体を打ったような幻覚。だがグリアはそれでもすぐに立ち上がる。

 サグは剣の柄に手を当て、全力で地面へ向かって剣を突き出した。

 王はそれに反射し、地面を鋭く蹴ってサグから離れる。

 動きを見たサグは、それが完成された反射の応用であると即座に察し、自身も身体強化用の魔力を整えた。

 それが一瞬の隙になってしまった。

 王は魔力探知によってサグの魔力が変化した事を感じ取り、動きを変えた。

 地面を反射の応用と身体強化の力で全力で殴り、床を砕きながらその場に停止した。

 砕けた地面のかけらを握り、全力でサグへ投げつける。

 サグは反射して剣でそれを受ける。弾いたのではなく、剣でただ受けたのだ。


「君の反射は不完全だな」


 いつの間にか立ち上がった王は、剣を手のひらで握った。

 サグは当然驚き、そのまま手を切ってやろうと腕に力を入れるが全く動かない。

 

(なんでだ!? なぜ止まる!?)

「私の適性は念属性、簡単に止められる」


 身体強化プラス念属性。それならば確かに剣を簡単に受け止められてもおかしくはない。

 しかしサグにはまだ理解できない事がある。

 それは剣の近くにいるのに全く電気の影響を受けていない事だ。

 握るように見える距離、サグが剣に纏わせている電気を、王が受けないわけがないのだ。

 そういう思考になってようやくサグは気づいた。

 サグが剣に纏わせていたはずの魔力が、いつの間にか消えてしまっていた事に。


(!! これは!)

「君は反射に意識を割かれすぎる、だから魔力と併用できないのさ」


 心の全てを見透かすかのような王のセリフ。

 王の言っている事は一切間違っていない。冷静になって自分を俯瞰すれば、一瞬で理解できる話。

 だがサグは、その言葉に激昂してしまった。


「うるさい!!」


 サグは強くなった自信があった。リリオウドでの苦々しい記憶を払拭できる程度の強さは得たはずだ。

 なのに、今自分はおもちゃのように遊ばれている。その事実が、若い力を暴走させた。子供の癇癪のように。

 子供の癇癪とは単純だ。だからこそ扱いやすい。

 王はシンプルに中指を僅かに飛び出させた拳を繰り出し、サグの胸に命中させた。


「くあっ!」


 あまりの痛みにただ音が漏れるだけ。

 次いで繰り出された掌底に、サグは勢いよく壁に吹っ飛ばされた。

 剣を離してはいないが、与えられたダメージはなかなかに大きい。


「ここで死ね」


 見上げると、手に念属性の力を纏わせた王の姿。

 サグは、一度、完全に命を諦めた。

 目を閉じる事もできない。完全な絶望。

 その瞬間、王を壁を壊し現れた何者かが蹴り飛ばした。

 

「おっらあ!! ぶっ倒してやるヨォ!!」


 倒れるサグの前で叫んだのは、親友エボット・ケントンだった。

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