正念場
サグは一瞬、何が起こったのか全く認識できなかった。
隣に立っているグリアも全く同じ。やっと認識できたのは結果だけ。
対照的に、全てが見えていたにも関わらず腹を殴られたリーダーは、惨めにも地面をゴロゴロ転がり壁に激突した。
「やれ」
その結果に対し王が漏らす言葉はそれだけ。
猿たちは王の言葉に従い、ワラワラとリーダーに襲いかかっていく。
二人はその光景に危険性を確信し、決意を固め直すかのように武器を再び握りしめた。
「「うおおおおお!!!」」
まるで群がる虫をはたき落とすかのように、襲い来る猿たちを一心不乱に切り伏せる。
だが足で潰せば終わる小虫とは違い、猿たちはひどく頑丈だ。
剣を当てようがかすり傷で終わり、タイミングと位置によっては弾かれるだけで終わってしまうのも珍しく無い。
しかしそれでも、二人はめちゃくちゃに武器を振り続ける。
飢えているのか、血に混じりよだれが顔に当たり、爪が掠って血が流れ出ても、ここを譲るわけにはいかないと戦う。
「ホオォッ!!」
一匹の猿が、自分へと振り下ろされたグリアの刃をがっしり掴んだ。
即座にグリアは腕に力を入れたが、驚くほどに動かない。
武器へと視線を向け、全力で事に当たっていたグリアは気づかない。数匹の猿が、自分を食い尽くさんと襲いかかってきていた事に。
「グリアっ! 武器を離せ!」
サグの鋭い声を聞き、グリアはようやく握られた剣から視線を外した。
目の前に差し迫った危機に気づき、グリアは全力で身体強化を行う。
強化した両腕をクロスし、同時に着弾した猿の拳から自分の体を守り切る。
イメージの暴走で魔法を使えないグリアだが、その分魔力コントロールを鍛え上げ、身体強化だけはひたすらに鍛え上げていた。
だからこそガードしたとはいえ、猿たちの攻撃を受け切ることができたのだ。
サグはそのフィジカルにある意味魅せられる。パワーはサグに不足している要素であり、グリアはサグと同タイプの戦い方をしながらも、サグのパワーを凌駕する力強さを見せつけていた。
だからといってサグがトロトロ動くことはない。
羨ましいという意識を奥へとしまいこみ、電気を纏わせた刃で猿たちを一太刀に斬り伏せてみせた。
「まだいける?」
サグはほんの少しだけ、この状況に絶望し始めていた。
無数に思えるほど湧いて出る猿たち、そしてさらにその上位であろう実力を持った王。まだ見ていないが、イリエルが言っていた猿たちのリーダーもいるはずだ。
今動けるのはたった二人、壁際ギリギリ追い詰められた状況、サグは実はかなり絶望していた。
「もちろん」
剣を回収したグリアが小さく笑いながら言った。
グリアは小さな高揚に包まれていた。
グリアは王兵隊、というよりもこの島全体の若手、そして王兵隊はエリート集団が故に同期に近い歳はいなかった。
互いを信頼し、共に足掻く歳の近い仲間。
この場面を乗り越えたら。想像するだけで、グリアは未来の自分への期待が止まらない。
「上等」




