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21.依頼完了


 町を歩き続けることおよそ1時間。


 通行に注目されながら目的地である建設予定地に到着だ。休憩を入れる必要も無いため、ノンストップでここまで移動してきた。


「ふう、漸く着いた」

『よく頑張った。身体強化はどう? 呑まれそうに成ってない?』

「まだまだ余裕かな、全然平気だよ」


 まだ着工前なのか建材が積み上げられていた空き地に荷車を置いておく。


 それにしても、この荷車は馬で牽引するべき物ではないのだろうか。いくら頑強そうな冒険者でも押して行けるのか不安が残る。


 そもそも、経験の浅い冒険者向けの依頼でもないし、普段から体を鍛えていても厳しいことが窺える。


 依頼料も推奨ランクが低いため最低限、どう考えても割に合わないのだ。遅い時間でも売れ残っていた理由が理解できた。疲れ果てるだけで賃金も少なければそりゃ誰も受けないのは当然の摂理。


「これはランク上げと割り切らないととしんどいよ」


 体力は減らない代わりに精神的な何かが削れていくのだ。さっさと残りの4台も片づけよう。


 元来た道を引き返して再び石材屋へと向かう。牛歩であった行きとは違い、20分ほどで辿り着いた。


 店主にひと声かけて再び荷車を空き地へと歩みを進める。5台全てを運び終える頃には昼過ぎになっていた。


「はい、割符だよ。それにしても、こんなに早く終わるとはね」

「ありがとうございます」

「お疲れ様、次も機会があればよろしく頼むよ」


 依頼の完了証明である割符を渡してもらった。これをギルドのカウンターに提出すれば依頼は終了だ。逆に言えば、受け取らなければ成し遂げたことにならないので注意が必要である。


 町は人の往来が増えて一際賑やかだ。見込み通りに事を運べなかったが、日が暮れる前に達成できたので申し分ない。


 次の仕事場へと移動していると、お昼を買いに向かっているのか年若い女の子の集団がいた。


「ねえ、アレどうだった?」

「凄かったよ! もう感動で涙が溢れちゃったよ」

「だよね~。しかも、実は…」


 楽しそうに通り過ぎていく姿を見ていると懐かしい気持ちになる。


 学生時代は私も彼女達のように友達とはしゃぎながら日々を過ごしていた。青春は一瞬だ、難しいことも考えずに毎日を楽しんでいた。


「異世界にも学校はあるのかな」


 制服のようには見えなかったが学生だったりするのだろうか。魔物の存在する世界だから戦闘訓練や魔法の授業も有るのかな。今更学生として溶け込むことは出来ないだろうが、少し気になる。


 魔法はユリアーナさんから教わればよいが、槍の扱い方や読み書きに関しては教鞭を取ってくれる人が居れば上達も早くなると予想できる。


 現状独学で学んでいる訳だから疑問が生じても直ぐに解消できない。質問できる人が居るだけで随分と変わるだろう。屋敷戻ったらユリアーナさんに聞いてみようか。


 頭の中にメモを残しながら引っ越しの手伝いをする現場へと歩みを進める。


 2か所目の仕事場は入り組んだ住宅地であったため、通行人に道を尋ねながらお目当ての場所へとやって来た。


 依頼内容は本棚やベットなどの重量のある家具を玄関先まで運び出すだけでいいらしい。石材運搬と比べたら破格の容易さだ。


 玄関まで近寄りドアノッカーを叩いて呼び出す。


 カンカン


「はい、どちら様ですか?」

「依頼できました、冒険者のレイです」

「ああ! ちょっと待ってくださいね」


 扉の向こう側から声が響いて来たので、名乗りを上げるとしばらくして歳を召したおばさまが出てきた。


「引っ越しの手伝いに来てくれたのね」

「ええ、早速始めようかと思うんですが大丈夫ですか?」

「もちろんよ。さあ、上がってくださいな」


 家に入ると室内は既に荷物をまとめてあるのか、木箱が積み上げてあった。


「運んでもらう物を説明するわね」


 部屋数は4つ、平屋のため数は多くない。玄関に直通のリビングに寝室と浴室、最後は倉庫となっていた。


 私が運ぶのは土台だけになったベッドに空になった本棚、魔力式冷蔵庫などである。特別重たい物はベットぐらいなので簡単にできるだろう。


 まずは、一番重たいベッドから済ませてしまおう。寝室に置かれたベッドの傍へしゃがみ込んだ。


「あの、お仲間さんは?」

「え? いえ、私一人ですよ」

「そうなの? 貴方みたいな子だけで大丈夫?」


 他にも仲間が居ると思われていたようだ。やはり、ここでも不安がられているが問題ないと告げてベッドを持ち上げた。


 確かに以前の私では不可能だったが、とだまちゃんのお陰で今では余裕なのだ。浮遊+身体強化でボディビルダー顔負けの力を発揮できる。


 次々と家具を玄関先の空間へ運んで行き、およそ1時間弱で全てを移動させる。


「疑ったりしてごめんなさいね。ありがとう」

「お気になさらず。それより、玄関先でよかったんですか?」

「荷物のことかしら? 大丈夫よ、馬車で一緒に運んでもらうの。でも、玄関先じゃないとダメらしくてね」


 少し変な依頼だと感じていたが、合点が行った。引っ越し先に荷物を運んでもらうには外に出さないと対応してくれないのだ。


 随分とサービスの悪い引っ越し業者がいたものである。日本では荷造りまで引き受けてくれるのに、これが異世界クオリティなのだろうか。


 何にせよ、2つ目の依頼もこれにて完了だ。


「順調だね」

『これならEランクも近い』

「とだまちゃんも早く魔物倒したい?」

『そう、力を増すために獣魂を回収したいから』


 1日目でEランクは早すぎるが、そこまで時間を掛けず昇格に必要な依頼数を達成できるだろう。


 さて、この調子で最後の空き家掃除もサクッと終わらせようか。先ほどの家と同じく平屋で小型の住居だ。家具なども置かれていないらしいので積もった埃を掃くだけで良さそうだ。


 実は2件目の依頼に向かう途中、この依頼主に会っている。


 道に迷って訪ねた場所が依頼主の切り盛りする店舗だったのだ。不動産屋を営んでいており、物件を借入たいと打診があったため、今回の依頼を発注したらしい。


 空き家はほど近い位置に建っていて、掃除用具は置いてあるとのこと。物件の鍵も借りているので後は向かうだけだ。


 そんな訳で目的の家に到着。赤茶のレンガ屋根で石材と木材で作られたている。周辺一帯は似たような家が並んでおり、ユリアーナさんにの屋敷がある区画と比べると雰囲気が全然違う。


 あちらが高級住宅街としたら、ここは一般的な家庭が築かれた地区のように感じた。私も家族と暮らしていた頃はこのような雰囲気の街に住んでいた。


「掃除用具はどこかな?」


 鍵を開けて室内へと入り、仕事を開始する。ここは浮遊の活躍の場、置いてあった掃除用具を全て浮かせて部屋の掃除に取り掛った。


 なんだか昔見たアニメを思い出す。箒や雑巾が自ら部屋を掃除する場面だ。鼻歌を歌いながら片っ端から綺麗にしていく。


「ふっふ、ふーん」


 気分は大魔法使いだ。魔法の杖のように指を動かし、掃除用具を動かす。複数人で分担して作業をするような物なので、一時間も掛からずに家はピカピカになった。


 埃でまみれていた室内は寝転がっても問題ないくらい清潔になった。窓の端を指でなぞっても汚れ1つ着かない。完璧な仕上がりだ、自画自賛しても恥ずかしくないくらいの出来栄えであった。


 こうして、全ての依頼を終わらせた私は3つの割符を手に冒険者ギルドへと報告へ向かう。


 初っ端から躓きかけたが、とだまちゃんの見事な援護によって無事成し遂げられた。新たな学びも得られたし、次の依頼は慎重に選ぼうと思っている。何度もリカバリーが利くとは考えてないからね。


 冒険者で賑わうギルドへ立ち入り、カウンターの列へと並んだ。


 今日も色々あって疲れが溜まっているのを感じる。


 ああ、こんな日は焼き鳥片手に、キンキンに冷えたビールを流し込みたいものだ。仄かに感じる苦みと炭酸の弾ける感覚、喉を鳴らして飲み干したい!


「はあ…」


 どうして、この体は飲食ができないのだ。非常に残念でならないよ、最悪飲料だけでもいいから口にしたい。


 そんな、欲望まみれの想像をしていた私に声が聞こえてきたのはそんな時だった。


「おい! そこの小さい奴。お前なんかに冒険者が勤まると思ってんのか?」


 背後から大声が浴びせかかられる。


 え? もしかして、私に言っているの? 冗談きついよ、お約束なんて要らないよ!


「聞いてんのかよ、おい!」


 でも、このまま無視して殴られたら堪らないし、振り返って反応したほうがいいかな。


 一体どこのどいつが私にいちゃもんを付けてきているのだろうか。正直嫌だが致し方ないので、ゆっくりと後ろへと視線を向けた。


 

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